2008.05.25
サキさんのチェンマイ日記
■ 522■ 5月23日 2008
「プチホテル・yesterday」
僕はいわゆる「プチホテル」が大好きです。現役の時代は結構 海外出張が多く、個人的にも
旅行を好んだ結果、世界中のホテルに泊まりました。そんな場合は出来るだけプチホテルを
選びます。
大規模なホテルにありがちな、マニアル通りのサービスに人間味を感じられな かったことが
その原因です。その点、プチホテルであれば2、3回もリピータになれば名前と顔をおぼえ
てくれて、ドアマンもフロントも「お帰りなさい」と笑 顔で出迎えてくれる様は、出張中で
ありながら自宅に帰ったような感覚、久しく帰っていない実家に帰った安堵感に近いものが
あり、心を和ませてくれます。
そんなホテルが最近チェンマイにも出現しています。やたら豪華さを誇る6星ホテル、例え
ばマンダリン・チェンマイなどは、ロビーに足を踏み入れたとたん に、なんだか赤面するく
らい僕には不釣り合いで、違和感を感じさせます。設備が薄っぺらな感じで、ディスニーラ
ンドに足を踏み入れたような感じ、豪華を 装っている壁の裏側はぺこぺこのベニヤ板が張っ
てある感じ、映画のセットを裏側にまわって覗いてしまった不幸を、同時に感じない訳には
行きません。個人的 に超豪華が趣味に合わないようです。
その点ニマンヘミン・ソイ6にひっそりと出現した(と、言っても僕が知らなかっただけで、
もう開業3年目になるらしい)「Yesterday」(客室30)はこんな僕の感性を刺激するす
てきなプチホテル です。家人はその存在を早くから知っており、朝食をあんなホテルのお庭
で食べればどんなにすてきでしょう、と盛んに誘っていましたが、どうせたいしたこと はな
いだろうと思い機会を逸していました。
現在長女が次の航海までのブレークをチェンマイで過ごしていますので、彼女のリクエスト
もあってある日出かけてみました。最近ごみごみと込み入って、以前 の寂れた感じが全くな
くなってしまったニマンヘミン通りですが、このプチホテルの入り口付近は特にその傾向が
強く、ホテルへの入り口はうっかりすると見落 とすぐらいです。車の駐車スペースがないだ
ろと道路に車を止めましたが、奥は結構広く、駐車スペースも数台分確保してありました。
最近、チェンマイの青山通りともてはやされているニマンヘミン通りは、元 々ニマンヘミン
という名前の貴族のお屋敷があった土地です。だから今でも道路をちょっと奥にはいると大
きなお屋敷や、それを取り壊した広大な敷地や、草ぼ うぼうの広大な土地が残っており、そ
の跡地にコンドミニアムや新築のホテルが建っています。幸いチェンマイは建築物の高さ制
限があるので、超高層ビルは建 築不可能になっているのが幸いして、今のところ景観を損な
う高層ビルはありません。それが古都チェンマイの風情を保っています。
さて、ホテルの玄関口に到着して、ここは古いお屋敷をプチホテルに改造して営業している
ことに気がつきます。3階建ての落ち着いた雰囲気は、僕の好みにぴったりです。それほど
大きくないのがよく、それもコ ンクリート製でなく古い木造というのも気に入りました。宿
泊客ではないという断りを入れてコーヒーショップらしきところに腰を落ち着けました。先
客は2人 の警察官、若いタイ人カップル、中年のご婦人、それに我々3人が座ると、後は3
席しか残っていないそんな大きさのコーヒーショップです。
多分このコーヒーショップの場所は、本館から裏の離れに行く途中のスペースを改造したよ
うです。できるだけオリジナルを損なわない工夫もされており、屋根 には透明のビニールが
さりげなくかけてあります。そうです、チェンマイは今雨期に入り、時々激しいスコールに
見舞われる季節です。突然の雨にあわてない心 配りがなされています。雨の季節に入り、庭
の木々や、芝生の青さが一段と目に優しく映ります。青竹が新芽をだし、それが恰好の目隠
しになって、隣との無粋 な境界線のコンクリートを隠してくれています。こう書くとなんだ
か広大なお庭を想像しますが、実際には隣との境界までは車が一台やっと裏の駐車場に行け
る くらいの幅しかないのですが、その狭さを感じさせない工夫がされています。元はニマン
ヘミンの大通りまで広がるお庭があったはずです。(少なくとも僕はそう想像したい)
空を見上げると、ニマンヘミン通りがおかれている現状にちょっと興ざめします。右となり
に高層(といっても7階建て)のコンドミニアムが建築中で、そのコ ンクリート壁が迫って
います。このプチホテルのように古いお屋敷を取り壊して、コンドミニアムやホテルを建築
するのがチェンマイの今の姿です。建築ブーム 到来の原因として考えられるのは、去年開か
れた花博があります。その際、タイ全土から観光客が訪れました。その集客力に魅力を感じ
たバンコクの投資家が、 チェンマイに目をつけ、コンドミニアムやホテル建築に乗り出した
結果だろうと想像がつきます。最近町で見かけるバンコクナンバーをつけた車は、この種の
人 たちのものだといいます。
我が家の周りに次々と出現したスパなどがその走りで、半径500メートルの範囲内に7軒
のスパが出現して驚いたのはつい4年前です。お客はどこにいるのだろうと心配していまし
たら、案の定次々と閉店し て、今では半分以下になってしまいました。とりあえず始めてみ
るのがチェンマイ流で、考えるのはその後という安直な開業ですので、しばらく経つと自然
淘汰 され、大変は消えてなくなります。だから僕はその後、我が家の周りに出現したレスト
ランなど、どんなに増えて家の前が車だらけになって、その車が違法駐車 を繰り返しても、
静かだった住宅街が突如、夜うるさい地区に変身しても、それほど心配はしていません。こ
のブームいつかは嘘のように消え去ってしまって、 新しく脚光を浴びるほかの地区に移って
行くだろうという事を強く信じています。それほどタイ人は移り気な事や、思いつきで事を
始める性格を熟知しているつ もりです。
朝食はアメリカンブレックファーストだけだといいます。そのあたりにも素人 のホテル経営
がうかがわれて微笑ましい感じです。大きな鉄板の上でベーコンや、ソーセイジ、目玉焼き
など何でも焼いてくれます。多分、夜にはこの鉄板の上 に分厚いステーキが乗るのだろうと
想像をたくましくします。コーヒーは最近はやりのコーヒーメーカーが自動的に入れてくれ
ます。しかし、ここの機械はコー ヒーがカップに半分しか入りません。ホテルの人に話すと
、水タンクを調べたり、温度調節をしたりして、大わらわです。未だ使い慣れていない感じ
で、このあ たりも微笑ましい。実際、最近は大半のホテルのブッフェーは何でも機械がやっ
てのけて、人間味が感じられません。手作りの暖かさを期待するプチホテルです から、最新
の機械をあれこれいじっている不慣れな姿はまさに僕の望む理想の姿です。味は全くの家庭
料理で僕が造る朝食と何らかわりません。そのあたりも、 なんだか心を和ませてくれます。
朝食が終わりホテルの中を見せてもらいました。玄関を入ったところにアン ティークな蓄音
機が飾ってあります。ラッパ型の蓄音機は当館の先代の持ち物らしく、そのほかにもあちこ
ちに沢山のアンティークが展示してあります。部屋は どれも天蓋付きのベッドに、これも時
代を感じさせるバスタブが付いています。古いものではなさそうですが、この種の復刻版と
思える備品を備えているところ などは好感が持てます。2階にあがる階段の踊り場から眺め
る景色は、このホテルの置かれている未来環境というべきか、ニマンヘミン通りにおとずれ
る将来と いうかが、一望できます。現在、ホテルの裏側は一面の野原ですが、右隣にはコン
ドミニアムの建築現場がすぐに迫っており、近い将来この空き地にもコンク リートの建物が
建つことが想像できます。こうして静かで、閑静な住宅街が変身していくのです。ここから
遠望できるドイスーテープが姿を隠すのも今しばらく だと思われます。
僕は、町が発展するのは一概に歓迎されることではないと思います。7年前のチェンマイは、
大学と、病院と、銀行と、小規模のホテルしかない田舎町でした。そこが気に入って移住を
決心したのですが、こう急 速に町が変身していくと、その独自性が失われて、そのうちにバ
ンコクと変わらない大都会に変わってしまうのではないかと、密かに心配してしまいます。
で も、これは僕が外国人で、外から来た人の独りよがり、住人にしてみれば町が発展するの
は住環境が向上するので大歓迎という人も多と考えられ、都市に求めら れる二律背反に突き
当たります。どちらにしても、あまり急速な発展は町の持つ雰囲気を損なって味気なくなっ
てしまいます。
僕は1979年にバンコクから香港に転勤、香港の急速な街の変貌を目のあたりにしてきま
した。昔ながらののんびりした部分が瞬く間に消失してしまって、巨 大ホテルが林立する近
代都市と化しました。現在の香港は、なんだか僕には息苦しい街に変身してしまっています。
チェンマイもそうならないことを願っています。今回紹介したプチホテル 「Yesterday」。
どちらにカメラを向けても絵になる光景は、まさに僕が望んでいるいつまでも変わらない良
さを豊富に持っています。
Yesterday
24 Nimmanhemin Road, Sutep,Muang, Chiang Mai
Thailand 50200
053 231 890
www.yesterday.co.th
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■「サキさんのチェンマイ日記」
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