2008.06.05
サキさんのチェンマイ日記
■523■ 6月6日
「タイのグランドキャニオン」
行ってきました。チェンマイから130キロ離れた、オップルアン国立公園。チェンマイ
から南下すること2時間の距離です。ここは、タイのグランドキャニオンと呼ばれてい
るところで、こんな近場にグランドキャニオンとはと、最初は疑って出かけましたが景
観を満喫できる大満足のドライブでした。
今は雨期の始まりの季節で、時々激しいスコールが襲ってきます。だから旅行シーズン
ではないのですが、ちょうど長女がチェンマイに長期滞在中ですので、思い切って出か
けました。同行は家人とM嬢の4人です。
チェンマイを朝9時に出発しました。遠出ということでガソリンを満タンにしました。
ガソリン代の高騰がニュースを賑わせていますが、1リッター40バーツになっていまし
た。ガソリン価格は物価のバロメーターです。僕がチェンマイに住みだした当初
(2001年)は13バーツだったのですから3倍以上になった勘定になります。
このままガソリンが高止まりしたり、さらに高騰を続ける様になったら、チェンマイか
ら車が少なくなって、交通事故や、大気汚染が少しは緩和されるのではないかという自
己中心的な考えになってしまうほど、最近のチェンマイは車のラッシュです。ガソリン
が高騰してもタイの人は一端手に入れた文明の利器をそう簡単には手放さないだろうと
思われ、車の数が減るということは絵に描いた餅の感があります。
高騰するガソリンや、地球温暖化が叫ばれているいま、我が家でも何か対策をしなけれ
ばならないと考えを巡らせています。電球を蛍光灯に換えたり、ゴミを捨てる場合は一
応分別したりしています。と、いってもチェンマイでは分別ゴミの収集が始まっていま
せんし、ゴミ箱をあさるくず拾いが再三現れて、折角分別して出したゴミをあさってば
らばらにしてしまうので、今のところゴミ問題は解決策なしです。東京都の様に、厳格
なルールを作って、それをみなが守る、もし守らない場合はご近所のつまはじきになる
という厳しい現実ではありませんが、サンディーマーケットなどでは一部、分別ゴミの
収集が行われていますので、そのうちゴミ問題は改善しそうな兆候があります。
車もガソリン車からハイブリットに換えたいのですが、トヨタプリウスが250万バーツ
もすると聞いてあきらめざるを得ません。そのうち、安いハイブリットや電気自動車が
でるような機運がありますので、購入可能な価格まで下がったときの検討材料ではあり
ます。
さて、今回のオップルアン国立公園までのルートは、チェンマイから108号線を南下し
てハンドン、サンパトーン、ジョムトンと進んでいきますが、このあたりでは山々は遠
望できますが、広大な盆地の中の平地という感じで、これから渓谷を見に行くという雰
囲気は全くありません。チェンマイ郊外をドライブしていていつも感じることは、広々
とした盆地と、平坦な大地、道路がよく整備されているということです。
どんな田舎の村に行っても、メイン道路は片側2車線になっており、村々を外れた郊外
は1車線になりますが、センターラインがきちんと引かれていますので、運転は比較的
楽です。今回は交通量もそれほど多い場所ではなかったため100キロメートルを1時間
30分くらいで運転できました。助手席の家人は運転をしませんので、僕が追い越しを
かけると、「怖い、怖い」や「ほら危ないでしょう」を連発します。後部座席の長女も
「そんなにスピードを出さなくてもいいでしょう」とうるさく注意されます。
僕はドライブにはいささか自信があります。だからチェンマイ郊外のドライブは、ある
程度のスピードが楽しめるので快適です。同行のM嬢は、チェンマイでバイクを運転し
ているので、タイ人の運転感覚をよくご存じで、僕の運転には口を挟みません。安心し
ているのか、遠慮しているのか、恐怖で凍り付いているのかは不明ですが、寡黙です。
そうして、タイで最も高い山ドイインタノン(標高2565メール)への分岐点、サンパ
トーンまでは「あ」という間に到着しました。ここでも山はそれほど迫っているという
感じはしなくて、空はあくまで広く、青空が広がっています。町を過ぎてしばらく行く
と、道路の右側に川が現れます。チェンマイ市内を流れるピン川の上流です。雨期とい
うのに川幅が広いせいで、水かさはそれほど感じられません。
タイ北部の、中国とつながる山々は岩でできています。だからこのあたりの山は岩山に
なります。粘土質の山はなだらかな姿ですが、岩でできている山の姿はごつごつとした
峻険な姿になります。この付近の山々は、チェンマイの西に連なるドイステープと違っ
て厳しい姿をしています。タイ北部を走っているのだという実感がわいてきます。川の
中にも大きな岩がごろごろしており、このあたりの景色は、日本の山岳地帯とそれとほ
とんど変わることはありません。山が迫ってきました。
流れる水の色は赤茶けて、土壌が粘土質であることをうかがわせます。2時間足らずで
ポートの村に到着、ここまではチェンマイから一本道ですが、ここで108号線を左折し
ます。「山道が険しくなってくる」と書きたいところですが‘、道はなだらかな登りに
さしかかりますが、ギアーをD1に入れるほどではなく、道路状態もよく緑の木々の中
を快適なドライブが続きます。
しばらくして公園の入り口に到着しました。ここで国立公園の入場料を払わなくてはな
りませんが、この場面ではM嬢の独壇場です。彼女はチェンマイ大学でタイ語を学んだ
本格派ですので、タイ語がネイティブに近く話せます。タイ人に成りすまして入場料を
現地並みにしようという魂胆です。だってタイ人40バーツ、外国人200バーの値段で
はその気にもなります。
今はオフシーズン、すんなりとタイ人価格で入場券を手に入れました。この日の入場者
は我々4人と、その後に現れた郵便配送車に乗った4人の合計8人という閑散さです。し
ばらく車ですすみ、下車の看板で車を降りると、突然独特の景観が目の前に現れました。
蕩々と流れる赤茶けた濁流は、ちょっと日本人が想像する渓流とイメージは違いますが、
雨期の水を集めて流れる様は、それなりに迫力があり、しばし呆然とします。下流で見
た水の色とは違って褐色がもっと強くなった感じで鉄さび色です。
この渓谷を流れる水は、水というよりは、何か褐色の粘着質の液体が岩に張り付かない
で流れ下っているといった方がよい感じ絵、それが狭い渓流を流れている様は、想像を
絶するという形容がぴったりの、僕は今まで目にしたことのない光景です。天候は変わ
りやすいですがその時は南国の太陽が照りつけ、巨大な岩は表面が乾ききって、白く輝
いています。それを包み込むように褐色の水が勢いよく、水音を響かせて流れ下ってい
きます。今にも白い巨岩が真っ赤に染まってしまうのではないかと思われる景観です。
お目当ての絶景は、しばらく切り立った岩肌に取り付けられた階段を上っていったとこ
ろに出現しました。ここは岩山が谷底底深く削り取られて切り立っており、幅2メート
ルくらいの幅になっています。その間を濁流が下って行きます。その景色はまさにグラ
ンドキャニオンというか、グランドキャニオンタイ版といったネーミングがぴったりす
る光景です。その渓谷のはるか上方に鉄の橋が架けられ、下を見下ろせる様になってい
ます。橋は一度に5人まで、と注意書きがあるのが恐怖を盛り上げます。
ちょっとタイを信じていない僕は、おそるおそる一人で鉄橋の上に上って見ました。渓
谷の深さは20メートルくらい、長い時間が岩を削り、現在の形を作ったことが理解でき
ます。悠久の時間の経過が、自然の力強さが、水が岩石を削りおる力強さが恐ろしいま
での迫力で迫ってきます。
しばらくはこの光景に見とれ、写真などを夢中になって撮っていましたが、この景色は
写真には決して映らない迫力を持っており、しばし橋の上にたたずみ、周りの景色と、
見下ろす渓谷を心のカメラに納めました。流れる水の勢いは筆舌に尽くしがたく、思い
ついてヴィデオに収めました。
橋を渡りきったところに付近の案内板が立っています。巨岩の数々や、森林浴が楽しめ
る探索コースになっています。ミネラルを含んだ大岩などがあって、鹿が塩をなめに現
れるという案内版を読むと(M嬢の手柄)、この場所が最古の昔は海の底だったという
ことが理解でき、地球の成り立ちが、かいま見えます。古代人が書き残したという、中
国の古代の「金文文字」に似た字や、像のおしりと思われる絵などが残されており、やは
りタイは古代から中国との関係が深いのだと納得させられる証拠を発見したりして、む
せかえる新緑の森林浴をしながらの探査は、ちょっとしたアドベンチャー気分が味わえ
ます。
ここは隣国ミヤンマーとの国境に近い山岳地帯です。それに付近には今我々4人しかい
ないという現実が、なんだか多少心細さも感じさせます。巨大な岩の上に這い上れば、
遠くミヤンマーに続く山並みが一望でき、幾重にも重なった山の稜線が緑の濃さを異に
して連なっています。高い巨大な岩石の上って見た景色は、この渓谷はかなり山深く、
この場所に岩石が集中して土中から露出しており、そこを流れる川が渓谷を深く掘り進
んでいるという光景です。その岸壁の遙か高所に、岩肌をわずかに削って道が付けられ
ています。
自分でハンドルを握っていてはわからない周りの景色です。その渓谷に張り付いたよう
な道路を、かなりの数の車が走っています。こんな山奥に、こんなに車の往来があると
いうのは、ちょっと信じられない光景です。人っ子一人いない深山で、渓谷のむこう側
に取り付けられた危なっかしい道路を走っている車を遠くに見ると、あ、今、我々は4
人だけではないという連帯感の様なものを、走り去る車に感じ、孤独感から解放されま
す。
渓谷を流れる急流の音、時々鳴き始める蝉の声のほかは、なにも聞こえない静寂の一時
を過ごしていると、普段の憂さを忘れて心がリフレッシュされていくのがじんわりと実
感できます。
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■「サキさんのチェンマイ日記」
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