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サキさんのチェンマイ日記


2008.06.10

サキさんのチェンマイ日記


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■524■ 6月10日 2008

「タイのグランドキャニオン+温泉」


オップルアン国立公園を十分に楽しんで帰路につきました。
出口に向かって進んで行くと、案内看板があります。左チェンマイ、右温泉とあります。
それもここから19キロの近さです。

時間は午後2時、チェンマイに夕方到着するには未だ時間は十分にあります。古代遺跡や
、渓谷、360度の景観を楽しんで、一行は汗みどろです。この状態で温泉に浸からない
で帰路にゆくのは愚の骨頂です。

衆議もなく車ハンドルを右に切りました。今の時期のチェンマイは、早朝肌寒い気温で
すし、それに今回は山深い地に足を踏み入れるということで、全員ちょっと厚着をして
きました。しかし、これは大いなる勘違いで、日中の太陽は強烈で‘容赦なく照りつけ
ます。渓谷の上の森林に分け入っても、木陰が切れる場所ではすぐに汗をかいてしまい
ます。

探索路も急坂を上ったり、降りたりの連続で平坦な場所はありません。それに同行4人
は普段の運動不足がたたって僕を除いて体力も脚力も使い果たして、疲労困憊の様子で
す。(僕は普段の鍛錬、階段での上下運動、週3回のゴルフ疲れ知らず)こんな場面で
温泉地への道路標識を見たわけですので、一行の顔に歓喜の色が見て取れました。とい
っても、ハンドルを握っている僕には助手席に乗っている家人の顔しか見えないわけで
すが、何となくその場の気配がそう感じられました。

でも、誰もが軽いピクニック気分で出かけてきたので、着替えなど持っていません。タ
オルも石鹸もなにもない状態で、温泉とは多に準備不足ですかかまわず道を急ぎました。
心がうきうきとしている時は得てしてそういうものですが、19キロを勘違いして目的地
への入り口を通り越してしまいました。それほどドライブは快適で、すれ違う車もほと
んどありません。周りは雨期の走りので雨水をたっぷりと含んだ新緑の林です。

しばらく行くと温泉地への看板を見たような気がしましたが、僕の予測ではまだまだ先
のような気がして、そのままスピードを緩めずに走り続けました。時間がかなり経って、
みな寡黙になり、それに今まであんなに頻繁に見た道路標識が全く現れなくなって、走
りすぎたと感じる時分になって家人が、これはすでに通り越してしまったのではないか
と言い始めます。

同行の長女も、これはちょっとおかしいといいパパの注意不足だと言いますし、M嬢も
もう19キロは過ぎてしまったのではないかと不安を漏らします。戻るにしても次に道
路標識があってからと、しばらくそのまま走り続けました。周りは手入れが行き届いた
疎林が続きます。道を尋ねるにしても人家も行き交う車もありません。

それに、タイ人に道を尋ねる愚行をいやというほど過去に経験している僕としては、自
己解決したい気持ちがあります。そのまましばらく走っていると、こんな山奥に手入れ
の行き届いた公園の様な場所に出ました。雑草が切り払われて、芝生の緑が一段と生え
る林がしばらく続いたら森林局の建物が見えてきました。

タイは過去の森林伐採の結果、特産のチイークウッドが絶滅し、それが原因で深刻な洪
水被害が多発する様になった結果、森林の伐採は一切禁止になっています。その監視の
ためでしょう、かなりの山奥でも森林局の職員がいて、不法伐採を監視しているという
話を以前聞いたことがあります。そんな人が詰めている小屋に車を乗り入れて、温泉の
ありかを尋ねました。ここの職員だったら正確な場所を知っていると判断したのです。

親切に、笑顔で対応してくれて言うのは、通り越してかなりの距離を走ってしまったこ
とが判明しました。約30キロも過ぎてしまったということです。やはりちらりと見たあ
の看板が温泉地への入り口だったのです。同行者からの罵詈雑言を背に、車を返しまし
た。

やはり、見落とした看板は温泉地へ5キロの看板でした。タイの田舎をドライブしてい
て出会う不都合に、道路標識や看板が、本来の目的にそった建て方がされていないとい
うことがあります。自動車の運転者によく見える配慮があれば、標識は道路に対して90
度の角度で取り付けられていなければなりません。かなりのスピードで運転している場
合、看板を確認するのは一瞬です。

でもタイで目撃する看板は、そんな配慮がないものが結構あって、今回のケースも道路
に対して平行に取り付けられていました。よく観察するとその看板は結構新しく、最近
立てられた様です。家人の見識では、道路標識は後10キロ、5キロ、3キロというよう
に、こまめに立てられているものだといいます。

しかし、今回のケースでは、僕が見落とした看板は、すでに温泉を通り越して、反対側
から来る人用の後5キロの看板でした。だから道路の反対側、それも平行によりつけら
れており、見づらい標識になっていました。

そんな、こんな、を話しながら目的地は、今度は簡単に見つかりました。テープパノム
温泉に到着です。入り口を入って行くと、結構新しい建物が見えてきます。案内には
Visitor Centerとあります。しかし、周りは閑散としており、女性が一人のんびりと洗
濯をしています。M嬢が案内を請うと、裏に温泉場があるという話です。目的の温泉に
到着しました。

裏にも小さな建屋がありました。ここも無人です。大声で人を呼んだところ、けだるそ
うな中年の女性が登場して来ました。温泉はあいており入浴可能だといいます。タオル
はレンタル、石鹸シャンプーなどは表で売っているが、今日は客がないので売店は閉ま
っているといことです。

きっと温泉の売店にはTシャツなどが売っているはずだから、それに着替えてさっぱり
とした気持ちで、チェンマイまでの帰路を運転しようという僕の思惑は見事に外れまし
た。タイの山奥の温泉は、日本のそれとは違います。石鹸も、シャンプーもなにも洗面
道具がないのも一興と、タオルと入浴料お一人様40バーツを払って温泉に浸かることに
しました。

この建物の奥に、下に降りていく階段があってそこにとんがり帽子のようか屋根の個室
が7棟立っています。それが個室温泉というわけです。タイ人は宗教の関係で、人前で
は肌を見せません。だから、
このように小さな個室にまっており、一人で温泉を楽しむのだと理解します。

鍵をがちゃがちゃとあけてくれて入った室内は、驚くほどの本格的な温泉施設になって
います。シャワーの隣にかなりの大きさの円形タイル張りの湯船が設えてあります。シ
ャワーを浴びて、下に降りていくような位置に湯船はあります。3段に段差がつけられ、
足湯を楽しむことも、肩まで浸かることも、温泉のお湯を一杯にはってたっぷりと全身
を沈めることも可能になるような作り方をしています。結構、研究の後が理解できます。
と、いうのは、タイ人は全身をお湯につけるという習慣がなく、足湯を使ったり、下半
身をお湯につけたりする入り方が主だと聞きます。

その関係で、日本の湯治という雰囲気は全くなく、気温が高いせいで、熱いお湯を好み
ません。しかし、ここのお湯はかなりの高温で、硫黄臭もむせかえる程の本格的な温泉

です。熱めのお湯をたっぷりと湯船にはり、思いっきり手足をのばしました。

時は6月の午後の晴れた一時、屋根は蒸気を逃すためでしょう、半分だけ板張りになっ
ており、後半分は梁がむき出しになっており、そこから青空が見えます。大きな緑の木
が屋根に覆い被さり、落ち葉がひらひらと湯船に一葉落ちてきます。あーこの世の天国、
ここに具現されたと思う至福の時が流れます。

ここは設備が新しいだけあって、温泉のなんたるかということをよく理解している感じ
です。硫黄臭にむせかえり、身体が暖まり、手足の先から疲労感が抜け出る感覚を味わ
っていると、もうそれ以上は湯船に浸かっておれません。遠く日本を離れていると渇望
する温泉行を十二分に味わう方法、それは何回も湯船に浸かることです。

タオルを腰に、外にでてみることにしました。ここは、タイ北部の人里離れた温泉地、
他人の目を気にすることもありません。といっても隣には、家人と長女が一緒に入り、
「こんなところで、温泉気分を味わえるなど想像もしなかったと」盛んに感激の会話を
交わしています。その隣はM嬢が入っているはずですが、こちらは全く水音がしません。
そういえば彼女は若く独身です。

湯から上がった、火照った体に涼風が心地よいというわけには行きませんが、それでも
深山の新緑は充分目に優しく、心が解放されます。しばらく屋外にたたずみ、再度湯船
に「ざぶん」と乱暴に浸かります。お湯は勢いよくあふれ出ると表現したいところです
が、何しろ湯船は半地下のような感じで設えられているので、ちょっとお湯の高さが変
わっただけが現実です。しかし、この乱暴さが温泉の醍醐味です。

先年訪れた、チェンマイから一番近いサンカペーン温泉は、バスタブの部屋が何室も続
いている素っ気なさでしたし、3時間かけて到達したパイの温泉はいささか湯船が小さ
すぎました。それと比べるとここは、それなりに本格的な温泉気分が味わえます。サン
カペーンでは温泉が勢いよく空中高く吹き上げており、その周りで温泉卵を作って食べ
る楽しみがありましたが、ここは7棟の個室があるだけの素っ気なさですが、これも結
構、結構という感じになって来ます。

小鳥の声が聞こえるでもなく、涼風が若葉を揺すっていくわけでもなく、全くの無音の
世界で温泉に浸かっている風情は、虚飾を廃してものの真髄に迫っている感じがして、
これも温泉の楽しみ方の一つだと、自分に言い聞かせます。ここに比べると、日本の温
泉地は造られ過ぎている感じがして、素朴さがないのが欠点、などとないものを否定し
たりして、再度屋外に出て周りの景色を眺め回し、熱いお湯に浸かることを3回繰り返
し、温泉からでることにしました。

この段階になると、もう石鹸、シャンプーがないこともそれほど不満ではない心境にな
ります。しかし、汗にぬれた下着やシャツを着る段階で、次回チェンマイ郊外をドライ
ブする時は着替え必携で望もうと心に強く命じました。

しばらくして、一行4人、温泉を堪能し、湯上がりの顔をそろえました。みな満足そう
で、僕の下着をどうしたかという露悪な質問にも、そんな些細なことは問題ではないと
いう笑顔です。

帰路につきました。しばらく温泉談義に花が咲いていましたが、昼ご飯を食べていない
ことに気がつき、そうすると温泉での満腹感は霧散して、今度は極度の空腹がおそって
きました。田舎道はしばらく人家さえ見えません。行きに通ったドイインタノンとの分
岐点の町、ジョムトンで食堂を見つけて食べようと衆議一決、しばらく寡黙なドライブ
が続きます。

この時点では、往路に感じた和やかな雰囲気は少し後退して、僕の運転を叱責する声が
増えます。空腹がなせる技だと無視を続けて帰路を急ぎました。しかし、車から見るジ
ョムトンの町には、気の利いたレストランも、食堂も、それに時間的に屋台も見あたり
ません。たまにそれらしい雰囲気の場所はありますが、そこで食事をするのは多少の勇
気が必要なところばかりで、車を止めるまでには至りません。

国立公園には、レストランが併設されているだろうという推測は見事に外れ、レストラ
ンはオフシーズンで閉店していたのが誤算でした。温泉地も売店も、食堂も閉まってい
て見事になにもない素っ気なさです。この期にいったって、さらなる教訓を得ました。
タイの田舎町に出かけるときは、石鹸、シャンプー、タオル、着替え、下着、それに充
分な飲料水、スナック、食料を忘れず持参すること。空腹を覚えたら迷わずガソリンス
タンドに入って、そこに併設されている売店でそれらを調達すべし。

結局、昼食は抜きになって、チェンマイに到着してから早夕を食べることになりました。
ここで飲んだビールのおいしさは、一生忘れないという表現が、あながちオーバーでは
ないのど越しでした。



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