2008.05.16
【出たっきり邦人 欧州編】754 オランダ
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◇◆甲編◇◆
〓オランダ・アイントホーフェン郊外発〓
ミナミも、ええよ。その15
御礼の言葉
前回のエッセイ『「だって女の子だもん?」のその後』には実にたくさんの方
からメールを戴きました。いつもでしたら個人的にお返事をするところですが、
今回はちょっと追いつきませんでしたので、この場を借りて御礼申し上げます。
間接的にではありますが、読者さまが他の読者さまの考えを知る機会が提供で
きたことは、結果としてとても良かったと思っております。また、こうしてた
くさんの方が真剣に読んでくださっていることを改めてはっきりと実感するこ
とができ、身の引き締まる思いでもあります。メールを下さった皆さまに、重
ねて感謝申し上げます。
「たばこと私」
欧州でも、公共の場での禁煙が導入されて久しいのですが、オランダではいよ
いよ今年の7月から、飲食店内の喫煙も禁止になります。「では、オランダ名
物コーヒーショップはどうなるんだろう?」私の頭に真っ先に浮かんだのがそ
のことでした。答えはちょっと肩透かし。コーヒーショップは法的には飲食店
に区分されていないため、今回の禁煙法も適用されず、とりあえずは従来通り
の営業なのだそうです。
さて、今回のタイトルは、某たばこ会社が70年代から新聞に掲載しているシ
リーズ広告からパクったものですが、今回お話の内容はそれとは似ても似つか
ぬものです。というのも、私はタバコの煙が全くだめなんです。
大学を卒業するまでは、煙を吐く人とはご縁がなく、必然的にタバコの誘惑に
さらされることもないままに社会人になりました(後から考えればこれは非常
に幸運でした。自分の意志薄弱ぶりを考えれば、一旦はまったタバコから足抜
けすることなど到底できないだろうから)。
ところが、会社勤めをしだした辺りから、気づけば友人知人に喫煙者が目立ち
はじめます。自分にとって「会って楽しい、話がはずむ人たち」は、ほとんど
が喫煙者。みんなこちらが吸わないのを配慮して、灰皿の位置やら煙を吐き出
す時やら、気を遣ってはくれますが、何時間も一緒に座っていればもう何をし
ても同じです。頭が痛くならなければラッキー、そうでなくても、こちらの衣
類や髪、持ち物すべてにどうしようもない臭いがつくのだから、「祭り」の後
はいつも苦い後味が残りました。
残念ながら、オランダに来ても、友人知人には喫煙者の姿が目立ちます。連れ
のアーヤンが元喫煙者というのが大いに関係していると思います。
去る2月、アーヤンの親友であるエリーゼが誕生会を開きました。招かれて、
喜び勇んで行ってみると、タバコを吸わない参加者は、私と喫煙をやめ(させ
られ)たアーヤンだけ。後は全員喫煙者、しかもヘビー、チェーン、といった
枕言葉がつくような面々でした。
主賓の彼女自身がタバコと縁の切れない生活を続けていて、日ごろから家の中
で吸っているもんだから、この日招待された彼女のコアな友人たちは、まさに
遠慮なく、部屋の空気が霞むまで吸いまくります。気づけば、喫煙集団は肩を
寄せ合い食卓を囲んでモクモク。アーヤンと私はまだまだ寒い季節だというの
に、換気用に開けてある窓に一番近いところで寒さに身をこわばらせて座って
おりました。
出席したことを後悔していましたが、連れの親友の誕生日だけに、一時間足ら
ずで腰を上げるわけにもいきません。お茶とケーキのあとは、時折出てくるス
ナックやおつまみで気持ちを繋いでいましたが、結局は寒さと酸欠状態に負け
て、二時間半で脱出しました。
タバコの臭いはいつものごとく、洗濯機とシャワーで解決しましたが、このと
きは、それだけでは勘弁してもらえませんでした。翌日の朝、目を覚ますと、
頭がずーっしりと重たい。午後になるまで、頭がちょっと膨れたような、まさ
に朦朧とした不快感を引きずりました。タバコの煙でここまでヘビーな症状が
出たのはこれが初めてで、さすがに恐くなりました(ちなみに酒は一滴も飲ん
でいません)。もうこんな目には二度と遭いたくないので、来年はどうやって
逃れようかと今から思案中です。
ちなみに、オランダ小市民のお誕生会というのは、ご馳走が出てくるわけでも、
特別な企画が用意されているわけでもなく、どこのパーティーも似たり寄った
りです。到着早々主賓にプレゼントを渡してお祝いしてしまったら、あとは他
の出席者とだらだらとおしゃべりをして過ごすだけ。一方の主賓は、ドリンク
やスナックの世話、次々とやってくる人の応対に忙しくて、来てくれた人たち
と話すヒマなどほとんどありません。
そんなお誕生日会は、私にとっては「こんなモノいらない・オランダ編」の上
位にランキングされていますが、オランダ社会にとっては、社交儀礼としてか
なり重要な位置を占めています。よって、既に予定が入っているわけでもない
限りは、たとえ限られた時間であっても顔を出すのがお約束。付き合いが多い
人だと毎月のごとく、どこかの家で誕生会に出席することになります。
オランダではまだ三人に一人がタバコを吸っているという話ですから、そうや
ってお呼ばれしては、煙と葛藤している人も少なからずいることでしょう。
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さて、冒頭でもご紹介しましたように、今年7月にはオランダ全国のレストラ
ンやカフェが禁煙になります!外食大好き、カフェ大好き、でもタバコの煙は
ダメ。そんな私には、7月が待ち遠しくて待ち遠しくて待ち遠しくてたまりま
せん。
アイルランドや英国では飲食店での禁煙令が施行されて何年か経ちますが、前
例があるというのは非常に有難いことで、オランダの飲食店業界は、これら
“先進”国の事例を参考に将来に備えています。
オランダが、アイルランドや英国のような展開を辿るとすれば、今年後半に飲
食店の売上げが大きく落ちこむことは避けられないでしょう。つぶれるところ
も出てくるかもしれません。でも一旦カフェから遠ざかった客も、遅かれ早か
れ慣れ親しんだ和気藹々の雰囲気が恋しくなります。やっぱり家でビールを飲
むのと、カフェで飲むのじゃ全然違う!
客はまたカフェに足を運びたいと切望するようになりますが、タバコを吸うと
き店外に出なければならないのがどうも具合悪い。アイルランドや英国、オラ
ンダの冬を少しでもご存知の方なら、ここでピンとくるでしょう。今後、これ
らの国のカフェが生き残っていくのに何が必要であるのか。―そう、それはず
ばり、屋外暖房器具。
アイルランドや英国では、暖房設備をテラスや庭に導入したことで、なんと禁
煙令発効前よりも集客できるようになった店すらあるといいます。喫煙者も他
人の煙はイヤ、という話はよく聞きますが、それならば、空気のよどんだ室内
よりは屋外で吸った方が気持ちがいい。特にその屋外が、雨風をちゃんとしの
げて座れるところもあり、寒くないのだとしたら、別に中に篭っている必要な
んてないわけです。
喫煙者同士、外に出てタバコを吸いながら、禁煙令について文句のひとつも言
えば、連帯感も湧いてくるし、男女なら出会いのきっかけにもなるでしょう。
現に英国ではそんなカフェ文化からSmirtingなる造語も生まれています。<喫
煙(Smoking)+いちゃつく(Flirting)>。
店内はひっそりしているけれども、屋外はずいぶん賑わっている―そんな夏の
昼下がりのごとき光景が、真冬のオランダのカフェで見られるようになるかも
しれません。
● ● ●
さて、オランダの飲食店禁煙騒動の舞台裏では、大喜びしている人と眉を吊り
上げている人がいます。前者は、暖房器具(輸入)販売業者。「風が吹けば、
桶屋が儲かる」ならぬ、「飲食店禁煙令が出れば、ストーブ屋が儲かる」現象
により、既に売上げを25%(!)伸ばした企業もあります。その売上げは、
今後もさらに伸びることが見込まれています。というのも、これまでの売上げ
は、事前対策をしたカフェから得たものであり、それは全国レベルで見れば一
部に過ぎないからです。
カフェの大半は、今年の秋頃、実際に寒くなってからようやく、暖房器具の購
入などの対策を講じるだろうといわれています。業者の売上げがピークを迎え
るのもこの時期。でも、器具販売や設置だけが彼らの収入源ではありません。
小さなカフェなど、電気容量の小さい店では、各種電気器具をフル回転させて
も店のブレーカーが落ちてしまわないように、配線や配電盤など、関連設備を
改修する業務も併せて受注します。
その現状に眉を吊り上げているのが、オランダのダイハード左派、GroenLinks
(緑の党)の政治家です。人差し指を立てて「テラス暖房はエネルギーの浪費
です」。ここでも一歩先行く隣国のデータが活用されます。英国では、禁煙令
の施行後、パブやカフェの半分近くが暖房器具を備えるようになりましたが、
ブリティッシュガスの調べでは、テラス暖房器具一台当たりの年間CO2排出
量が4000KGにも上るといわれています。
…そういわれても、カーボンオフセット活動に取り組んでいない人(私だ)に
はいまいちピンとこない数字でしょう。これは、年間25000KM走行する
乗用車から吐き出されるCO2排出量に匹敵します。一年でこれだけの距離を
走行するのは、オランダではちょっと一苦労です。東西、南北とも300KM
ほどの小国オランダで、週末が来るたびに片道250KMの遠出をしてやっと
こさクリアできる距離ですから。
飲食店が、こぞって環境破壊な暖房危惧、じゃなかった、暖房器具を購入して
しまう前に、飲食店の屋外暖房を環境管理法の下に禁止するべきだ、というの
が、同政治家の見解です。しかし、暖房器具販売業者は「ナンセンス!」と反
論します。業者に言わせれば「CO2排出量がらみで巷が大騒ぎしていること
自体が偽善的」であり「この政治家はカフェの屋外暖房をネタに点数稼ぎをし
ようとしているだけ。それを証拠に、年々エアコンの導入が増えている各種店
舗について、CO2排出量を理由にエアコンを禁止しよう、という話は全く聞
こえてこないじゃないか」
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果たして緑の党の彼が提案するような「禁止令」は実現するでしょうか。私は
無理だろうと思います。この屋外暖房に関して今後何か起こるとしても、オラ
ンダ政府がやりそうなことといえば、KM税や飛行機税に続き、新たな環境税
を導入することくらいでしょう。「飲食店屋外暖房税」とかなんとか。そのせ
いで、ビールやコーヒーもジリっと値上がりして、結局は一般市民へしわ寄せ
がいって一件落着。そんなオチだろうと思います。
「オランダ政府は寛容で、物事を禁止するのではなく、管理する方を選ぶ」と
いうのがもっぱらの評判であり、それは確かにウソではありません。茶筒も横
から見れば確かに長方形をしています。でも上から見れば丸い。丸い方のお話
をするなら、オランダ政府が禁止より管理を好むのは、管理という名の下に新
たな税収源が確保できるからでしょう。
結局世の中は、正義でも倫理でもなくご都合主義で回っているのだろうか…そ
んな考えがふと頭をよぎります。その辺の世間話はこの7月、空気の澄んだカ
フェで話のタネにしたいと思います。話し相手が、外でタバコを吸いたくてソ
ワソワしていなければ、面白い話のひとつも聞けるでしょう。
あめでお
『ミナミも、ええよ。』
ご意見ご感想、待ってます。beraboamedeo@hotmail.com
◇◆次回5月20日(火)は、アイスランドから配信予定です◇◆
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【北米・オセアニア編】【中南米・アフリカ編】【アジア編】
【出戻り邦人】もよろしくね
◇◇◇詳細は下記のHPで◇◇◇
http://www.geocities.jp/detahome/
各種問い合わせ先:detahou@hotmail.co.jp
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電子出版 :出たっきり邦人【欧州編】<まぐまぐID:0000023690>
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