2008.03.07
【出たっきり邦人 アジア編】400号 バンコク
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のんきぃのんの現在進行バンコク駐在妻らいふ
その23
「世界で食べよう、日本食」
最近、日本の有名ラーメン店「桂花」がバンコクに進出したというので、さ
っそくその一号店に行ってみました。
桂花といえば、九州熊本が本場の、ばりばりのとんこつラーメン。
日本にいたときは、デパートのレストラン階の店によく行ったのですが、週
末の昼時はいつも行列でした。
バンコクの一号店は、今一番ホットなデパート、サイアムパラゴンに出店し
ています。
サイアムパラゴンは、BTSサイアム駅のどまん前にある超巨大デパート。
サイアムは、日本で言う若者の街、渋谷みたいな感じです。その超一等地に
一年前に建ったパラゴンは、歩くだけで疲れる馬鹿でかさ。
お正月に両親が来たのですが、デパートの中に池や噴水があって、鯉が泳い
でいるのにえらく感心していました。
「桂花」は、ごったがえすフードコートの一角の、それほど広くないブース
に出店していました。
そして、日本と変わらず、大行列でした。
うわさを聞いてやってきた、在住の日本人客もいなくはなかったのですが、
その大半はタイ人客。
お味のほうは、、、
うん、そうそう、これこれ。
こってりしたターロウ麺、みじん切りの固ゆで卵が乗ったターロウ丼、
日本で食べた味、そのものでした。
それにしても、、、
日本人が好むそのものの味なのに、やっぱりタイ人にも受けるんだなぁ。。
と、感慨が深いのには、訳があります。
私はバンコクにいる前に、ロンドンにもしばらくいたのですが、その滞在時
のいやっていうほどの経験から、「外国における日本食」というものに、けっ
こう懐疑的でした。
平たく言うと、ロンドンでイギリス人にえらく受けていた日本食は、日本人
にとってみると「えー」と思うものが少なくなかったのです。
10年以上前から海外をあっちこっち行っていると、
「日本食のグローバリゼーション、その変遷」
みたいな論文でも一本書けそうな気がしてきます。
黎明期の日本食は、日本人の、日本人による、日本人だけのための日本食。
包丁一本で海外にやってきて、個人で細々とやっているお店。
ドアをくぐれば、日本そのもの。おしゃれじゃないけど、ほっと落ち着く。
海外の日本人コミュニティで、なくてはならない存在。
もちろん、いまだに健在です。
そして来たのは、流行に敏感なその地のお金持ちたちがもてはやす、「今一番
新しい」「おしゃれな」そして「お値段も高い」日本食。
日本人のシェフが、上手に西洋の要素も取り入れた匠の技で、見た目も味も
芸術の粋の日本食を披露する。ニューヨークの著名店「NOBU」なんかがこ
のあたりではないでしょうか。
でもこの時点ではまだ、日本食は、物珍しい珍味の域を出ていません。
「フジヤマ、ゲイシャ」とあんまり感覚は変わらないですよね。
これで終わっていれば、ブームの域を出なかったのですが、ここでおそらく
目をつけたのが、大衆相手の商売人たち。
イギリスならば、
「イッツー」(クールな都会のバー風の回転寿司)
「ワガママ」(明るいカフェ風の店舗で出される日本風麺類)
という、「ちょいおしゃれめ」ジャンルのお店を出して、大当たり。
「日本食は、おしゃれでヘルシー」というイメージと、「でも、超高級店より
は高くはない」というバランスをうまく取り、一気に人気店&チェーン化に
成功。
日本食のメジャー化に拍車がかかりました。
この時点ではすでに日本人の手を離れ、
イギリス人の、イギリス人による、イギリス人のための、日本食。
その後は、日本ならばセブンイレブンとかイトーヨーカドーみたいな立場の
メガチェーンが後追い。マークスアンドスペンサーのサンドイッチコーナー
には、ちゃんと寿司のパックが並んでいます。
「日本食の大衆化、完了」ってとこでしょうか。
タイにおける「日本食の大衆化」の功労賞は、
「オイシ」=日本食ジャンルの最初の開拓者。大手食品グループ。
「フジ」=日本食ならなんでもごされ、の大型レストランチェーン
「ゼン」=フジよりはちょっと高級目系のレストランチェーン。
の三つにあげたいと思います。
この三つは、ショッピングエリアならどこでも見られるほど、超メジャーな
チェーンです。そしてどの店も、いつも行列ができるほど込み合っています。
もちろん、これは全部タイ資本のチェーン。
タイ人の、タイ人による、タイ人のための日本食です。
日本でたとえるなら、ちょうどスカイラークとかジョナサンみたいな感じ。
日本のファミレスも、最初は洋食をメインにすえて成功しました。で、日本
人受けするように、パンだけじゃなくてライスも選べるとか、アレンジを加
える。
タイの日本食も、タイ人受けするような工夫がされています。
どうもタイ人は、「いろいろなんでも食べられる」というのに魅力を感じるよ
うです。
オイシグループの中で、今一番流行っているのは「スキシ」というチェーン
なのですが、これは回転寿司としゃぶしゃぶをミックスさせた形態。
ベルトコンベヤーにはもちろん寿司も回っているのですが、小分けにされた
しゃぶしゃぶの具も同時に回っていて、自分で好きな具をとり、目の前の一
人用のしゃぶしゃぶ鍋で食べられる、という具合。
しゃぶしゃぶはみんなで囲んで食べるもの、という固定観念がある日本人に
は、とてもこんな発想はできません。
寿司もしゃぶしゃぶもお好みで、という「スキシ」はよほどタイ人受けする
のか、いつ見ても早い時間から込み合っています。
ほかの二つ、「フジ」も「ゼン」もやはり、日本食ならなんでもござれという
豊富なメニューが売りです。
つまり、メニューを開けば、寿司もすき焼きもしゃぶしゃぶも刺身もどんぶ
りも、およそ日本食の名がつくものならなんでも頼める、という具合。
お味の方はというと、うーん、日本人にとっては、可もなく不可もなく、と
いう感じです。すごく美味しいとファンになるほどではないけど、かといっ
て、代金を損したと思うほど不味くはない。
しかし、タイの日本食でとっても評価できるのは、どの店もオリジナルの日
本食のメニューに忠実だということです。
つまり、イギリスで出会った日本食みたいに、日本人からするとちょっと首
をひねりたくなるような、突飛な創作メニューがない。
日本で見たのと同じような、定番メニューが並びます。
そして、在住の日本人にはうれしいことに、このところ、満を持した感じで
日本系のチェーンがバンコクに進出してきています。
第一弾は、「大戸屋」。
関東圏ならなじみが深いのですが、ちょっとこじゃれた定食屋で、女の人が
一人で入れるような明るい店内とヘルシーな定食が売りのチェーンです。
バンコクの店舗は、日本よりももっとおしゃれで高級目に仕上がっています。
日本でいうなら、表参道ヒルズのような目抜き通りのショッピングセンター
に出店した一号店は、たちまち人気を博して、平日でも昼食時は並ばなけれ
ばなりません。
さっそく行ってみて実感したのは、
「やっぱり、ホンモノの日本系は味がいい。」
日本で食べるのと同じ味。日本人が食べるに十分耐える味。
失礼ながら、フジやゼンよりも一段上の感があります。
大戸屋の次には、「山小屋」がやってきました。
そして、今回の「桂花」。
大戸屋も山小屋も最初の一号店が大人気になると、バンコク内で少しずつ店
舗を増やしています。桂花は、間をおかずもう二号店がオープンしました。
どの店も、タイ人でいっぱいです。
もはや日系であっても、昔から日系コミュニティに細々とあった
「日本人の、日本人による、日本人のための」
日本料理ではありません。
「日本人の、日本人による、現地人のための」日本食。
日本食は、日本のものをそのまま持っていっても、すでに現地で幅広く受け
入れられるだけの下地ができあがっているのです。
つまり、日本食を食べなれた現地の人たちが、より上質の日本食なら、ちょ
っと高めでもお金を落とす時代に。
そういえば、日本語フリーペーパーに、「コカ」というタイスキチェーンの社
長のインタビュー記事がありました。お年は初老くらい。コカといえば巨大
チェーン、その社長といえばハイソー(上流階級)だと思うのですが、
ご自身が好きな食べものはなんですか、の問いに
「クイッティアオ(タイ風のうどん)」との庶民的なお答え。
「うちの息子たちは日本食が大好きでねぇ。でも、私はやっぱりタイ料理だ
な。タイ人なら、タイ料理を食べなきゃ。」
「日本食」を「洋食」に、「タイ料理」を「日本料理」に置き換えたら、日本
人のおじいさんが、若い世代にいう言葉そのままではないでしょうか?
少なくとも都市部においては、タイの日本食は、日本人にとってのスパゲッ
ティくらい、身近な存在になりつつあります。
そういえばつい一昨日、パリにある日本人シェフの日本食店に、ミシュラン
のひとつ星が付いたとニュースになってました。
パリの日本食店に、ミシュランの星がつくのは初めてとかで。
その店のオーナーは
「先人のみなさんが道を切り開いてくれたから」
というようなコメントをしていました。
もう8年も前、パリに回転寿司が流行りだしたときに何件か行ったのですが、
料理のうまいフランス人でも、この新しいジャンルには四苦八苦なのか、日
本の上級レベルには程遠かったように記憶してます。
ミシュランのその店は、日本人シェフが腕を振るう以上、日本人が食べても
美味しいんでしょう。
日本食の裾野が広がって、きっとフランスでも、日本人が食べても美味しい
日本食屋に、現地のフランス人が足しげく通う時代になってるんでしょうか。
「日本人の、日本人による、現地人のための」日本食の時代。
現地の人の支持がなければ、ミシュランの評価が付くはずがないですし。
学生のころ、アメリカのカルフォルニアに少しいたとき、
「日本食って、魚を生で食べるんでしょう?」
うえーっ、なんて野蛮、って顔で言われたのが懐かしい。
あのときの子も今は立派な大人のはず。たまには寿司を食べたりするんでし
ょうかねぇ。
ともあれ、どの国に行っても美味しい日本食が食べられるのは大歓迎。
バンコクにも、もっと日本資本が上陸してくれないでしょうか。
期待して待っています。
のん
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