2008.05.11
空気を読まない=暫定税率の再議決は八百長だったんと違う?
「KY(空気が読めない)」というイヤな言葉が流行っている。
なぜ空気を読まなければならないのか? 理由はない。
みんなが同調してつくる「空気」などほとんど間違っている。
意識的に空気を読まず、空気に異議申し立てをする必要がある。
この論評は「市民の市民による市民のためのメディア」インターネット新聞JanJanに5月5日付で掲載されたものです。
JanJanで読むなら
http://www.news.janjan.jp/column/0805/0805046337/1.php
JanJanでのコラムタイトルは【大気圏外】です。次行のリストページからバックナンバーが読めます。
http://www.news.janjan.jp/column/taikikengai/taikikengai.php
[要約]「政府は暫定税率延長の再議決はできない」と予測したが外れた。だが、なぜ民主党は再議決の本会議を欠席したのか?
出席して反対票を投じたら自民議員からも造反が出て、一般財源化への道筋を付けられた可能性がある。野党欠席戦術は、共に不
人気の党首をかかえ政界再編を恐れる自民・民主両党がとった「安全策」だったのではないか。
◆外した予測
4月2日付の本コラム
「ガソリン値下げの既成事実で政治の流れが変わる」
http://www.news.janjan.jp/column/0804/0804014042/1.php
で大胆にうち出した予測が見事に外れてしまった。
そのコラムでも、<もの書きのはしくれだから、下手な予言は慎まなければならない。予知能力はもちろんないのだから、推測と
いうことになる。その推測が外れたら、書くもの全体の信ぴょう性が疑われてしまう。>という自戒の言葉は入れておいた。
「すぐ調子に乗って、やっちゃいけないことをやってしまうのだから」と反省しなければならないという気持ちはある。
◆なぜ欠席戦術だったのか?
しかし、どうして民主、社民、国民新の野党3党は、再議決のために開かれた衆院本会議を欠席したのだろうか? と問題提起し
たいという気もする。
30日の本会議についてのデータを新聞報道でまとめてみると……。野党からの本会議出席者は共産党の9人と、民主党会派所属
の田中真紀子、無所属の横路孝弘(副議長)、江田憲司の3人。自公両与党の出席者は335人。ほかに与党的な無所属の玉沢徳一
郎と中村喜四郎がいた。
採決は地方税3法と国税2法に分けて記名投票で行われたが、地方税は賛成336、反対12▽国税は賛成337、反対12だっ
た。それぞれ投票総数の3分の2にあたる233票は軽くクリアして、衆院の再議決は成立した。(国税と地方税で賛成票数が異な
るのは、玉沢が双方に賛成、中村は国税に賛成しながら、地方税は棄権したからである)。
◆24票は余裕の差だったのか
民主党など野党が出席していたらどうなるか。今年1月のテロ特措法採決が参考になる。投票総数473、賛成340、反対13
3。3分の2は316だから、24票の余裕でクリアした。
欠席者の数など、多少の変化はあるにしても、この数字が原点となるはずだ。造反票が24に達したかどうか疑問だが、ゼロでは
なかったはずだ。
◆自民党執行部は恐れていた?
4月19、20の両日実施した朝日新聞世論調査で、ガソリン税の暫定税率を復活させることについては、賛成24%、反対63
%という結果だった。それに加えて山口2区補選で民主党が圧勝したのだ。「復活賛成では、次回総選挙で当選できない」と考える
議員が多数出てもおかしくない。
こういう状態のときこそ、「衆院での採決」にのぞみ、自民党から造反議員が何人出るのか、見極めるべきだったのではないか?
。 それをやっていたら、少なくとも自民党執行部の心胆を寒からしめる(表現が古いナア)程度のことはできたはずだ。
◆異常な「一致団結」の念押し
状況証拠にしかならないが、その前週から自民党各派の会合では、トップが「再議決のさいは党の方針の下に、一致団結した行動
を!」と訴えていた。もちろん山口2区補選の翌日・28日には、ほとんど全派閥が会合を開き、再度「一致団結の呼びかけ」を繰
り返したのである。「議員一人ひとりの良識」を基盤に置いているはずの自民党では、異常ともいえる「締め付け」である。
造反の動きがないのなら、こんなことをやっても無意味であろう。造反の動きがあった、それもかなりの規模になる可能性が大き
かったから、こうした締め付けが行われたのではないか?
◆テレビに映っただけが戦果
欠席戦術をとった民主党は、若手国会議員約100人を動員、「民意を問え」などと書いたプラカードを掲げて衆院議長応接室前
に押しかけさせた。
「地方の声は(ガソリン)値下げだ!」などと叫んで気勢を上げ、河野洋平議長を缶詰めにして、午後1時開会予定の本会議を開か
せない作戦。自民党の若手議員らが議長の通り道を確保しようと割り込み、激しいもみ合いとなって、テレビには格好の映像を提供
した。
◆むなしいポーズ
議長は午後2時前、衛視に抱きかかえられるようにして封鎖を突破、議場に入った。本会議開会を遅らせただけの行動に何ほどの
意味があったのか? おそらく民主党は「再議決に強く反対している」というポーズを示すだけだったのではないか?
ほんとうに強く反対しており、再議決阻止の可能性に賭けるのなら、本会議に出席して、今年1月のテロ特措法のときと同じ採決
をやるべきだったのではないか?
以下は推論でしかないが、民主党など野党3党が出席していれば、自民党から24人以上の造反者が出て、3分の2再議決が成立
しない可能性は十分あったのではないか?
◆自民中堅・若手が「一般財源化を実現する会」
4月中旬自民党内に、棚橋泰文、水野賢一、河野太郎、柴山昌彦(いずれも衆院議員)ら中堅・若手議員による、「道路特定財源
の一般財源化を実現する会」が生まれた。同会は09年度から一般財源化するなど、道路特定財源制度改革の工程表を明示した新法
を、議員立法で成立させることを模索していると報じられている。再議決阻止はできなくても、こうした動きを後押しする程度のこ
とは可能だったはずだ。
それよりも「もみ合い」の映像がテレビで流れた方がいいというほど、民主党執行部のアタマも壊れてはいないだろう。
◆不人気すぎる福田・小沢両氏
問題は政局への影響だったはずだ。30日の衆院本会議で自民党からの造反者が多数出たら? 再議決ができなかった場合はもち
ろん、そこまでいかなくても、政局は一挙に流動化する。その場合、自民・民主両党の枠組みが崩れて、政界再編に突入する可能性
も大きい。
毎日新聞が4月5、6両日に行った全国世論調査(電話)では、「福田康夫首相と小沢一郎民主党代表のどちらが首相にふさわし
いか」という質問を盛り込んだ。「どちらもふさわしくない」が65%で最多となり、「福田首相」は20%、「小沢代表」はわず
か12%だった。福田首相の不人気は周知の事実だが、小沢代表はもっとひどい不人気だということが判明したのだ。不人気な首相
はもちろん、不人気な民主党代表についても「もうゴメンだ」と考えている国会議員は多い。
福田・小沢両氏ともお引き取り願うには、自民党も民主党もともになくなる政界再編がいちばん確実な手段だ。
◆超党派議員集団がつぎつぎ誕生
自民・民主両党の議員が仲良く加わっている議員集団が次第に増えている。北川正恭・前三重県知事らが中心となって呼びかけた
「地域・生活者起点で日本を洗濯(選択)する国民連合」(略称・せんたく)と表裏一体の「せんたく議員連合」は自民51人、民
主47人、公明8人、国民新1人の計107人が名前を連ねて3月3日発足した。
自民党の加藤紘一・元幹事長、民主党の仙谷由人・元政調会長らを中心とする超党派の勉強会が4月1日発足した。2月に共に訪
韓した国会議員(計16人)に加えて、新たにメンバーを募ったところ、5党・無所属の議員合わせ67人に膨らんだ。民主党の鳩
山由紀夫幹事長や国民新党の亀井静香代表代行らもメンバーに加わっている。発足のあいさつで加藤氏はアジアとの関係を重視する
姿勢を示しており、いわば「ハト派」連携を目指す集団となるとの見方もある。
メンバーは与党議員だけだが、自民党の中川秀直・元幹事長中心の「京都議定書目標達成議員連盟」も4月1日、衆参約60人参
加で発足した。中川氏の隣に小池百合子・元環境相が座ったほか、猪口邦子・元少子化相ら小泉チルドレンも参加した。小泉色の強
い、ポスト福田をにらんだ議員集団とみられている。
◆自民・民主共倒れを防ぐため?
政界再編志向の議員集団は多いが、じっさいに再編が動き出すきっかけがないというのが現状であろう。ガソリン税で「再議決成
立せず」だったら、十分きっかけになり得た。「福田自民党」は瓦解するが、同時に「小沢民主党」も安泰ではない。福田自民党と
小沢民主党が「共倒れ」を防ぐためには、30日の衆院本会議で、民主党など3党が出席して採決を行わないのがいちばんの安全策
だった。
◆トップだけの共通の利害
冷戦時代には、米ソをトップとする東西両陣営が対立していたはずだ。しかし両陣営のトップという立場にある米ソ両国が利害を
共有する場面も多く、その場合「トップのエゴ」を押し通して、米ソだけが握手してきた。
同様に「不人気なトップ」という共通の立場で利害を共有する福田首相と小沢代表が握手したのか? あるいは小沢代表と菅直人
代表代行・鳩山由紀夫幹事長の「民主党トロイカ」による片八百長だったのか? いずれにせよ、野党3党の欠席戦術は、国会とい
う場での八百長だったいうのが、私の読みである。
深読みにすぎるというご批判は当然だろう。しかし民主党など野党3党が欠席戦術をとった理由がほかにあるのだろうか? この
疑問に答える報道には接していない。
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