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ほぼ日刊日々是映画


2008.06.17

[ほぼ日刊日々是映画] vol.2311 ★ ゴッド・イン・ニューヨーク


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================================================2008/6/17==
                        -vol.2311--
  ほぼ日刊 日々是映画         発行:cinema-today
                http://www.cinema-today.net/
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2311号です。

えー、いろいろDVDをチェックしたので、発売情報をまとめて
おきます。欲しいDVDはお早めにどうぞ。
『ノーカントリー』 8月発売
 http://tinyurl.com/5f7dqa
『潜水服は蝶の夢を見る』 7月発売
 http://tinyurl.com/58bccs
『再会の街で』 6/25発売
 http://tinyurl.com/5c3cko
『フローズン・タイム』 7月発売
 http://tinyurl.com/68zcze
『帰ってきた東宝ゴクラク座 DVD-BOX』 7月発売
 http://tinyurl.com/5pezzs
『佐藤真 映画の仕事』 発売中
 http://tinyurl.com/66dv3h
『アート オブ 市川崑 BOX』 復刻6/27発売
 http://tinyurl.com/5bssco

雑多になってしまいましたが、オススメは最後の市川崑BOXです
かね。『黒い十人の女』を含む大映時代の5作品+インタビュー
です。

今日は『ゴッド・イン・ニューヨーク』という作品。
未公開ですが、B級というわけではなく、いい作品です。


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-------- 目次 --------

■ 今日の映画
 ゴッド・イン・ニューヨーク

□ ヒビコレリンク

□ DVD今日の買い!

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■ 今日の映画 − ゴッド・イン・ニューヨーク


--cinema2235------------

 ゴッド・イン・ニューヨーク

 God has a Rap Sheet
 2003年,アメリカ,118分

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<キャスト&クルー>

監督 カメル・アメッド
脚本 カメル・アメッド
撮影 トム・ニエッロ
音楽 カメル・アメッド

キャスト ジョン・フォード・ヌーナン
     ボンズ・マーロン
     ウィリアム・スミス
     ピーター・アベル

<評価>

☆☆☆☆(満点=5)


<プレヴュー>

 ニューヨークのとある拘置所、太った初老の男が入っている監房
に8人の男達が入ってくる。黒人、白人、ユダヤ人、ムスリム、ア
ジア人などニューヨークを象徴するかのように多様な彼らは最初は
無視しあうが徐々にいがみあるようになる。そんな中、太った男が
いきなり自分は神だと名乗る…
 コメディグループ“ジャーキー・ボーイズ”の一員だったカメル・
アメッドの初監督作品。密室劇で見事にニューヨークという街を描
いた快作。


<レビュー>

 「お前なんか怖くない」という奴に限って相手のことを怖がって
いる。怖がっていないと言葉に出すことで自分を奮い立たせ恐怖心
を後景へと押しやろうとするわけだ。
 この作品にはたびたびこの「お前なんか怖くない」という言葉が
飛び出す。拘置所という密室に押し込められた9人の男、ホームレ
スらしい初老の男、黒人とプエルトリカンのふたり組、刺青だらけ
の白人男、イタリア系のマッチョ、黒い服に身を包んだユダヤ人、
アジア人とイギリス人のふたり組、アラブ系のタクシー運転手。彼
らの間にはあまりの多くの隔たりや壁がある。ニューヨークは“人
種の坩堝”とよく言うけれど、実はニューヨークと言うのはたくさ
んの人種が混在するだけで、決して交じり合ってはいない。隣に住
んでいたとしても人種や民族や宗教が違えばそれは他者であり、決
して分かり合うことの出来ない別世界の住人なのだ。その常に他者
に囲まれた生活が彼らの恐怖心を育み、その恐怖心は攻撃性へと変
化する。
 この映画の舞台となる拘置所はまさにニューヨークの縮図である。
狭い空間に押し込められた他者たち、彼らは自分の縄張りを確保す
るためにまず手近な敵を攻撃する。そして彼らの区別は主に人種と
宗教から生じているがために、その攻撃は常に差別の問題につなが
る。白人と黒人、ユダヤとムスリム、ムスリムと黒人… そして差
別への意識は他者との間の壁を厚くしてゆき、理解への道のりはさ
らに遠ざかる。
 彼らはとにかく言い争い、一触即発の空気になる。しかし彼らの
言っていることの一つ一つは間違っていない。誰もが自分を正当化
するための事実を知っていてそれを使う。しかし、誰もが自分の正
当性をめいっぱい主張してしまったら、それは誰の主張がより正し
いかと言う順位争いになり、それは水掛け論に堕してしまう。その
結果彼らの誰もが不満を抱えたまま黙り込み、状況は元に戻ってし
まう。

 ただ、ニューヨークの縮図たる拘置所で男達が言い争っているだ
けならば、ただただそれが繰り返されるだけなわけだが、ここでは
“神”と名乗る老人がいて、彼らに金言を与える。見た目はホーム
レスでものすごい臭いのだが(笑)、その言葉には誰もが認める理
知がある。彼が神だとはもちろん誰も信じないのだが、その老人の
言葉は彼らの急所を突く。誰もが自分のことは棚に上げながら、他
者を非難するばかりの言い争い、それはまったく不毛であり、ほん
の少しでも相手のことを理解しようとすれば生じない無駄な争いな
のだ。彼らはこの“神”の言葉によってそのことに気づく(しかし
またすぐに忘れてしまう)。
 彼らがすぐに忘れてしまうのは、相手のことを理解しようとすれ
ばいいということにみな気づいてはいるのだけれど、そのように譲
歩することによって相手につけ込まれるのではないかという根強い
恐怖感に起因する。誰かがその一歩を踏み出せば、和解は意外と近
くにあるのだとそんなメッセージをこの物語は放つ。
 この物語にそれ以上の解釈は必要ない。“神”はいたのかいない
のか、“神”はいったい誰だったのか、それは謎として物語の鍵に
なってはいたけれど、その答えは必要ない。それが謎のまま終わる
こと自体がこの作品にとってのひとつの答えなのだ。神がいようと
いまいと、神を信じようと信じまいと、世の中をコントロールする
のは人間なのだ。

 こう書くと、難しい内容の映画のように感じるけれど、実際は他
愛もない会話からなる物語であり、哲学的であるよりは日常的な作
品だ。この作品はすべてにおいて今のアメリカ(あるいはニューヨー
ク)をリアルに描いた描写であると思う。複雑な社会を人種や宗教
といった特定の問題に一面化するのではなく、複雑なものを複雑な
まま描くことで、さまざまな問題に通呈する根っこのようなものを
掘り出すのだ。
 ただ、女性は登場しないので、その点では片手落ちかも知れない。
しかし、ここに更に女性を登場させたら、問題の複雑さは2倍では
なく2乗になって、映画はおそらく8時間くらいになり、誰も理解
できなくなってしまうだろう。だからこれでよかったのだろうが、
別の作品でまた女性の場合についても描いて欲しいと思う。




□ ヒビコレリンク

 『ゴッド・イン・ニューヨーク』公式サイト
  http://www.roundtablecinema.com/god/



□ DVD今日の買い!

<今日の作品:ゴッド・イン・ニューヨーク>

 『ゴッド・イン・ニューヨーク』
  http://tinyurl.com/4yqx8d


<今日のお勧め>

 ニューヨークという名の映画

 『ニューヨーク1997』
  http://tinyurl.com/5bowgk

 『ニューヨーク・ニューヨーク』
  http://tinyurl.com/5bfsju

 『僕のニューヨークライフ』
  http://tinyurl.com/6qb4fe

 『ニューヨーク・ストーリー』
  http://tinyurl.com/58pyod


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                     日々是映画第2311号
                      2007年6月17日発行
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