2008.06.20
[ほぼ日刊日々是映画] vol.2313 ★ 青春怪談
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-vol.2313--
ほぼ日刊 日々是映画 発行:cinema-today
http://www.cinema-today.net/
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2313号です。
突然39度近い熱が出てしまいましたが、大汗をかきながら寝たら
半日で下がりました。
まだ体がだるく、まったく食欲がわきませんが、何とか大丈夫そ
うです。おなかの風邪かなこれは。
皆様もお気をつけください。
今日は市川崑監督の『青春怪談』です。
これは隠れた傑作では。
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-------- 目次 --------
■ 今日の映画
青春怪談
□ ヒビコレリンク
□ DVD今日の買い!
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■ 今日の映画 − 青春怪談
--cinema2237------------
青春怪談
1955年,日本,115分
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<キャスト&クルー>
監督 市川崑
原作 獅子文六
脚本 和田夏十
撮影 峰重義
音楽 黛敏郎
キャスト 北原三枝
山村聡
三橋達也
轟夕紀子
山根寿子
芦川いづみ
北林谷栄
<評価>
☆☆☆☆1/2(満点=5)
<プレヴュー>
バレリーナの奥村千春の父・鉄也と事業家の宇都宮慎一の母・蝶
子は奥村の家ではじめて会い、二人を結婚させようと話し合う。一
方の千春と慎一も千春が独立するとひとりになってしまう父のため
に鉄也と蝶子をあわよくば結婚させてしまおうと考える。慎一は事
業家として銀座のバーへの出資を計画し、千春は初の大役の稽古で
忙しい日々を送っていた…
獅子文六の原作を日活と新東宝で同時に映画化するという試みで、
市川崑が監督した日活の作品(新東宝の監督は阿部豊)。軽妙なコ
メディでありながらよく練られたプロットが素晴らしい傑作。
<レビュー>
この作品の素晴らしさは、1に和田夏十のシナリオ、2に轟夕紀
子の怪演、3に市川崑の演出にある。
なんと言っても素晴らしいのは和田夏十のシナリオだ。この作品
には千春と慎一の関係、鉄也と蝶子の関係、千春とシンデの関係と
バレー、慎一の事業とそれにまつわる女たちとの関係、の4つがプ
ロットとして絡んでくる。若い男女がその親同士を再婚させようと
いう話は珍しくなく、そういう場合はそれを画策している若い男女
のほうが結婚して大団円となるわけだが、この作品はそのような単
純化はなされず、若いふたりの関係も親同士の関係も独特な面白さ
がある。
若いふたりのほうはといえば、バレリーナの千春(北原三枝)は
男っぽいちゃきちゃきとした性格で、バレー学校の後輩のシンデ
(芦川いづみ)に惚れられている。今で言えばレズビアンの関係と
いうことになりそうだが、当時ではそういう発想ではなく中世的な
愛情として描かれている。慎一は非常にしっかりとした性格で男前
だが、女にあまり興味が内容で積極的にモーションをかけてくる女
性達をまるで無視して、事業家として成功することと母親の世話だ
家に力を注ぐ。
千春の父の鉄也(山村聡)は家でただただ時計の修理をしている。
中盤でわかるのだが、兄の会社の役員に名を連ねてお金だけをもらっ
ているという。慎一の母の蝶子はちょっとバカなんじゃないかと思
うくらいの天真爛漫な女性で、こちらも夫が経営していた病院など
からの家賃で暮らせている。
この要素だけを見れば、話はテンポよく進んでいきそうなものな
のだが、慎一の事業がうまくいかなかったり、鉄也が強情だったり、
いろいろなことがあって物語りは曲がりくねりながら予断を許さな
い展開を見せるのだ。このあたりがこのシナリオの非常にうまいと
ころだ。決して大団円を予想させず、若いもの同士の関係も、親同
士の関係もどうなるかわからず、周りの人たちがそこに影響を与え
もするのだ。
和田夏十はそのようにしてさまざまな仕掛けを織り込んで楽しい
物語を作るのが本当にうまい。
その物語の中でも特に面白いのが轟夕紀子だ。ちょっと頭の弱い
妙齢の婦人というなかなかない役どころを見事に演じている。見た
目はおばさんでありながら心は十代、肉のついてしまった体をゆす
りながらも恋する乙女を演じている。上目遣いの表情や、惚れた男
に嫌われたと思って部屋に引きこもる姿など、本当に力いっぱいの
演技という感じだ。若い男女ではなく、中年の男女のほうにこうい
う恋愛を演じさせるというのがこのシナリオの素晴らしいところで
もあるのだけれど、それを見事に演じた轟夕紀子の存在あってこそ
だとも思う。
轟夕紀子は宝塚のトップスターで鳴り物入りで映画界に入ったが、
目の病気や結婚、離婚などの私生活の不運もあって、結局脇役を中
心に女優としての生活を送った。戦後30代のころには多くのコメディ
に出演、40歳前後からは『洲崎パラダイス』や裕次郎作品などで存
在感を示している。そう考えるとこの作品は彼女が脇役として大成
する転機となった作品なのかもしれないと思う。しかし1967年に49
歳の若さで亡くなってしまい、最後まで不運だった。
そんな轟夕紀子の魅力が十分に楽しめるのがこの作品だ。
市川崑の演出は、非常にうまいのだが、シナリオのよさや出演陣
のうまさの陰に隠れて、目立たないものになっている。見事な演出
というよりは、いい素材をうまくまとめるための調整役という感じ
で、それはそれで彼らしい立ち方だと思う。そんな市川崑が存在感
を示しているのが音楽の使い方ではないかと思う。全体的にそれほ
ど音楽を使っているわけではないのだが、ここぞという場面でその
シーンの意味を明確にするような音楽を使い、シナリオが観客にすっ
と受け入れられるように構成している。あまり目立たない要素では
あるが、これがあるとないとではわかりやすさが全然違ってくる。
やはり和田夏十と市川崑のコンビは稀代の映画作家だ。この作品
が市川崑の作品群の中で埋もれてしまっているように見えるのは、
短い日活時代の作品だからだろう(『こころ』『ビルマの竪琴』と
あわせて3作品しか監督していない)。DVD化もされていないの
でなかなか見る機会もないが、こういう軽い作品でこれだけ面白い
作品というのはなかなかないので、ぜひDVD化もして欲しい。
□ ヒビコレリンク
『洲崎パラダイス』
http://www.cinema-today.net/0704/14p.html
□ DVD今日の買い!
<今日の作品:青春怪談>
原作:『青春怪談』
http://tinyurl.com/5nhgxf
<今日のお勧め>
市川崑&和田夏十の作品(コメディ系)を。
『満員電車』
http://tinyurl.com/5uw78q
『あの手この手』
http://tinyurl.com/676pam
『盗まれた恋』
http://tinyurl.com/5p5oc5
『ぼんち』
http://tinyurl.com/288zl2
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日々是映画第2313号
2007年6月20日発行
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