2007.05.05
クラシック音楽夜話 Op.201 beethoven 七重奏曲
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クラシック音楽夜話 Op.201 2007年5月5日(土)
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おれ様の音楽を聴け
Op.201 CONTENTS━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1.ショートストーリー「楽聖を救え〜ある陰謀」
2.ベートーヴェン 七重奏曲 変ホ長調 Op.20
【今週のPODCAST】
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1.ショートストーリー「楽聖を救え〜ある陰謀」
1824年。ウィーン。
初老の男がピアノに向かいつつ、つぶやいている。
この間、変な男がやってきてな。
「21世紀から来た」と言っていた。
どうせ大ホラ吹きだろう。
21世紀といえば200年も未来じゃないか。
この間読んだ『ファウスト』物語が現実になったのか。
うううむ、どうも最近頭がおかしくなってきたようだ。
この間の交響曲に没頭しすぎたせいかもしれぬ。
やつは変な書類を置いていった。
Copyrightの管理をするから書類にサインをしろ、というのだ。
英語はワシはわからんのでドイツ語で説明しろ、と言うと
「著作権」という意味だ、と。
なんだ、それは?版権のようなものか。
ワシの作品が演奏されるたびに金が入ってくる?
歓迎だが…、まてよ。
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最近ワシの曲を演奏する奴がめっきり減ってな。
難しすぎる、いや、新しすぎるからだろうな。聴衆にも受けないのだ。
おお!21世紀では大人気?特にヤーパンでは、ニ短調交響曲が年末に津々
浦々で演奏されているだと!あれは、傑作だから当然といえば当然。
でもな、今のウィーンでは、意外に不評でな。再演の話がない。
最終楽章にコーラスを付けたのが、いけなかったのかもしれぬ。
書き換えようかとも思ったが…、
未来で、それほど人気があるならそのままにしておくか。
ところで、手に持っているのは何だ、そのキラキラ光る丸い板は。
音を記録するだと?それがあればどこでも演奏を聴けるのか。
世界中の人が私の作品を聴けるとは、なんとも便利な物があるな。
それが売れるたびに、金が私に入ってくるのか。ますます、いいぞ。
しかし、だ。いくら21世紀で私の作品がベストセラーだとしても。
その金を誰がもらうのだ。私はとうに死んでいるし、家族もないから子孫も
いない。本当は結婚したかったのだが縁に恵まれなかった。結婚できなかった
男というわけだ。何?似たタイトルのドラマが去年放映されていただと?
いろいろと恋はしたがな、ひひひひひ。アブナイ恋もなぁ、ふふふふ。
そのヘンの話はフラウ・アオキに任せておくとして…。
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え?著作権は作者死後50年で切れる?
じゃあ、私の作品は21世紀には権利消滅だろ?
私の曲をバンバン演奏しても金がかからないわけだ。
ちょっと悔しいが、それはそれで、いいんでないかい。
私の音楽のもとで、世界の人々は兄弟になる。素晴らしいじゃないか。
だったらサインする必要などないだろ。
なに、今度、世界の著作権保護法を改正し作者死後500年間権利が続くように
する?私はもちろんだが、アマデウスもヨハーンも、英国の詩人ヴィルヘルム
だって皆著作権の対象になる。しかも、著作権料を、時代をさかのぼって支払
う仕組みにするだと?21世紀でも、演奏するたびに金を徴収するわけだな。
少し心が痛むが…、ううむ腹に背は代えられぬ。あ、逆か。そもそもなんでワシ
がヤーパンのことわざを知っているのだ。それはともかく…。
これで、ワシも貧乏から抜け出せるかもしれん。
では、サインしてやろう。ははは。お前はいい奴だ。はははは。
ダンケ・シェーン。アウフヴィーダーゼーン。
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男のもとに、後日、未来から金が送られてきた。
だが、金はすべて電子マネー「メロン」だった。19世紀のウィーンでは使える
はずもない。愕然とした楽聖は、失望のあまり、コーヒー豆通常60粒を70粒も
使ってひいたコーヒーを飲み、しばらく胃が悪くて仕方がなかった。
また、使われない著作権料は貯まる一方であった。それを闇の手を使って横取
りするという、某国際組織による陰謀があった。実に手の込んだヤヤコシイ方
法である。優秀な軍師がいたに違いない。
500年前までさかのぼったため、著作権管理対象芸術家たちの数はふくれあが
った。そのため、管理用コンピュータの処理能力を超え何度もフリーズし、最
後はハードディスクのクラッシュで一瞬のうちにデータは消えた。某国際組織
の陰謀は水の泡となったのである。ははは、悪は滅ぶのだ。
また、いったん500年に改正された世界著作権保護法は、新しく就任した西国
春大統領の「こんな法は芸のためによくないから、変えな、いかんとです」と
ツルの一声により、元の50年に戻されたのであった。めでたし、めでたし。
それにしても…。
長生きした楽聖の、交響曲第10番やピアノ協奏曲第6番、ピアノ・ソナタ第33
番、そして、弦楽四重奏曲第17番を聴いてみたかったのお。な、勘助。
(※本ストーリーはフィクションです。登場する団体や個人、名称等はすべて
架空のものですので、あらかじめご了承ください。)
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2.ベートーヴェン 七重奏曲 変ホ長調 Op.20
★ベートーヴェンの当時最も人気作品
とても珍しい編成の作品です。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバ
ス、クラリネット、ファゴット、ホルン。ほとんど小オーケストラと呼んでも
いい編成。コントラバスが入る事自体室内楽曲の域を脱しています。低音楽器
を充実させたのは、ベートーヴェンが重厚な音色を狙ったのかもしれませんね。
狙いは見事にあたり、彼の室内楽曲の中でも異色の存在ではあるものの大人
気でして、初期の作品の代表作のひとつとして数えられています。当時最もひ
んぱんに演奏され、各種編曲も出版されています。
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★全6楽章の中に宝がいっぱい
はつらつとした第一楽章。ゆっくりとしたテンポ、重厚で堂々とした前奏。ヴ
ァイオリンとクラリネットの音色が美しく、いかにもベートーヴェンらしい曲
想。やがてヴァイオリン先導で明るく快活なメロディが奏でられる。これが軽
やかで底抜けに明るいのです。メロディはクラリネットに受け継がれます。以
後、七つの楽器の絡み合いは目が回りそうなほど圧巻。
第二楽章の主役はクラリネットとヴァイオリンです。モーツァルトのクラリネ
ット五重奏曲のアダージョを思わせる叙情的なメロディが素晴らしい。途中で
ファゴットやホルンとの絡み合いもあり、いずれも柔らかな音色が心地良いで
すね。中間部分は弦楽器が主役、まるで弦楽四重奏曲のよう。ホルンの長い音
によるソロが途中入り哀しげな曲想に変わります。押し寄せる波のような低音
の弦の音色、そして応える木管楽器の音色の高音。再びクラリネットのソロで
冒頭の曲想へ戻りクライマックスを迎えます。おだやかで静かな田園風景を思
わせるしみじみとした曲である。この楽章だけでも充分「七重奏曲」を聞く価
値はあるでしょう。
第三楽章は、「あれ?どこかで聴いた覚えが…」。そうです、「ピアノソナタ
第20番」の第2楽章です。個人的にはこの曲はピアノよりも室内楽曲の方が
断然良いと思うのです。ユーモラスな曲想が多彩な楽器構成にぴったり合いま
す。中間部分の管楽器のかけ合いがとても面白い。特にホルンとクラリネット
の活躍には目をみはります。主題を奏でるヴァイオリンの音色も終始美しい。
第四楽章は軽やかなヴァイオリンとヴィオラのデュエットで始まり、全楽器に
引き継がれ、常にさっぱりとした風味で音楽が進みます。ヴァリエーション
(変奏)を楽しむ曲なのですが、巧みな変奏さばき(変な表現ですがまさにピッ
タリ)はベートーヴェンならではの見事さ。感動的です。チェロのソロがいい
し、他の弦楽器も素晴らしいけど、ホルン、ファゴット、クラリネットによる
変奏もラインも面白いですよ。ちょっと手放しで誉めすぎ?そんなことはない
です。聞けばよくわかるでしょう。
ホルン先導でこれまたユーモラスに始まる第五楽章。楽しげに遊ぶような音楽
です。中間部のチェロのソロが叙情的。中間部、奏者全員が仲の良い家族のよ
うにチェロをささえる合奏も感動的です。
第六楽章はまず哀しげな前奏で始まり、ホルンが哀愁を呼んでくる。暗いイメ
ージをここでは抱いてしまいますが、そんな不安を解消させてくれるスピーデ
ィで明るい音楽がその後に続きますからご安心ください。快活なその音楽の心
地よさ。走り続けだけだと疲れるので、途中でホルンが休憩の合図を奏でるの
ですが、アンサンブルはそんなのはお構いなしにつっ走り続けます。クライマ
ックスのヴァイオリンの活躍はほとんどヴァオリン協奏曲。面白い曲ですね。
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★社交用音楽にさらば
ディヴェルティメント(小組曲)というジャンルがハイドンやモーツァルトの
時代には流行っていて、ベートーヴェンもウィーンへ出てきた頃は、その流れ
を継承する音楽を書いていました。社交の世界で注目されるためには求められ
る音楽を書く必要があったのです。でも、彼は自分の音楽が食事やおしゃべり
しながら聴かれるのを好みませんでした。音楽家がしもべのような扱いであっ
たことも気に入りません。千秋真一君的表現を使えば「おれ様の音楽を聴け!」
というわけです。
このようにBGM的音楽を書きこなす才能を充分持っていたにもかかわらず、彼
は「七重奏曲」を最後にこの種の音楽は書かなくなります。きちんと静かに座
って演奏を聴く、いわゆるコンサート向け音楽の先駆者であるベートーヴェン
の誕生ですね。
でも、私は、この時代のベートーヴェンの音楽も大好きでして、なぜか一定の
サイクルで無性に聴きたくなります、とりわけ「七重奏曲」が。
交響曲第1番を書いた頃に重なる初期の傑作。ぜひ一度お聴きください。
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http://www.classicalarchives.com/live/b.html#BEETHOVEN
↑こちらでMP3の演奏が聴けます。フリー会員登録が必要ですが、ベートーヴェ
ン以外の作曲家の作品も聴ける素晴らしいサイトです。
※Other Chamber Works の項目中の Septet for strings and winds in Eb, Op.20
です。
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★私の聴いたCD
ベートーヴェン
七重奏曲 変ホ長調 作品20
〜ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、クラリネット、ファゴット、
ホルンのための
六重奏曲 変ホ長調 作品81b〜2つのホルンと弦楽四重奏のための
演奏:ウィーン八重奏団員
4つのトロンボーンのための3つのエクアーレ WoO.30
演奏:フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブル
※私のCDは全集版です。同種CDは残念ですが現在入手できないようです。
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【今週のPODCAST】
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最新配信番組
◆5月5日配信
エピソードop.201〜今号に関連の話題を
モーツァルト フルート四重奏曲 K.285 第3楽章
◆5月3日配信
モーツァルト フルート四重奏曲 K.285 第2楽章
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過去の番組ラインアップ
◆4月22日配信
モーツァルト
「バセットホルン2とファゴットのための三重奏曲」K.410 ヘ長調
◆4月22日配信
「ウィーン古典派三羽がらすの相関関係」
◆4月29日配信
musiker習作2「弦楽四重奏のための軽いワルツ」
◆4月29日配信
「ハイドンとベートーヴェン」
番組中、ハイドンに出版を止めるようにアドバイスされた曲のことを、
op.1-1と語っていますが、op.1-3の間違いです。ピアノ・ソナタop.2の枝番
号と混同していました。
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※本誌で取り上げた作品のCDや書籍などを掲載しています。
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【あとがき】
もし、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンに著作権料が支払われるとすれ
ば莫大な額になるでしょう。そんなことを想像して今日のストーリーを書きま
した。
ベートーヴェンといえば、中・後期の作品を中心に脚光を浴びています。確か
に傑作揃いですから無理もないでしょう。でも、初期の作品もなかなか興味深
いのです。若いベートーヴェンは世に認められるのを夢見て、さまざまな曲を
書きました。その代表作が今日ふれた「七重奏曲」でした。本日の原稿は、以
前「ベートーヴェン音楽夜話」用に書いたものをアレンジしています。遠出し
ているため、ちょっとだけ省エネです(笑)。
PODCASTを聴いた我が家族が皆で笑っているらしいです。「なんで、あんな
にもったいぶった話し方をするのの?」と妻の意見も。むむむ。「ちょっと」
という口調が多いのが自分でも気になっています(笑)。話し方は徐々に慣れ
ていくと思いますのでしばらくご辛抱ください。
では、op.202まで、ごきげんよう。
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