2007.06.10
クラシック音楽夜話Op.203 〜ウェーバー協奏的大二重奏曲
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クラシック音楽夜話 Op.203 2007年6月10日(日)
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そこに家族がいるから
Op.203 CONTENTS━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1.ウェーバー クラリネットとピアノのためのグランド・デュオ・
コンチェルタント(協奏的大二重奏曲)
2.羽田健太郎さん、ありがとうございました
【今週のPODCAST】
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1.カール・マリア・フォン・ウェーバー(1786〜1826)
クラリネットとピアノのためのグランド・デュオ・コンチェルタント
(協奏的大二重奏曲) 変ロ長調 op.48
ウェーバーというと歌劇「魔弾の射手」を中心としたオペラ作曲家というイメー
ジが強いのですが、オペラ以外にも歌曲、合唱曲、管弦楽曲、協奏曲、ピアノ
曲、そして室内楽曲などで重要な作品を残しています。今日は室内楽の傑作を
一曲とりあげます。が、その前に、ウェーバーはいったいどんな人だったのか
を簡単に触れてみましょう。
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ウェーバーの父はモーツァルトのように子供を音楽の神童に育て上げるのを夢
見ていました。二度目の結婚で生まれたカールがようやく彼の期待に応えてく
れました。幼い頃は期待できなかったものの、9歳頃から隠された才能が開き、
同じ頃にオルガン曲を書いています。さらに13歳でオペラ処女作を書き、順調
に成長し、20歳でとある地の楽長になります。
しかし、周囲との対立や父親の金銭面でのトラブルのあおりを受け、敵を作り
同地を出て行きました。行き先でいったん音楽以外の仕事に就きますが、今度
は公金費消の疑いをかけられます。再び別の地へと追われるのです。
再び音楽の道を模索し始めたウェーバーは、かつてのモーツァルトのように、
各地で就職活動行います。ちょうどその頃にミュンヘンで出会ったのハイリヒ・
ベールマンというミュンヘン宮廷楽団のクラリネット奏者でした。彼のために
クラリネット小協奏曲を書き、国王の注目を浴びます。彼は国王の依頼により、
クラリネット協奏曲を二曲書きました。うまくいけば就職のチャンスを得られ
れるのでは、という期待も空しく、願いはかないません。
1813年にプラハ歌劇場の指揮者として雇われ、ようやく定職につきます。1817
年、ドレスデン歌劇場指揮者に就任したウェーバーは結婚し、放浪の旅に終止符
を打ちます。中断していた『魔弾の射手』を完成したのもその頃でした。しか
し初演は5年後の1821年、しかもドレスデンではなくウィーンにおいて行われ
ます。安住の地であったはずのドレスデンも、ウェーバーを、作曲家としてさ
ほど高く評価していなかったわけです。そのことを彼自身も知っていました。
『魔弾の射手』の人気はそうとうなもので、初演以後二年で50回もの上演を記
録します。とりわけロンドンでの人気が高く、コヴェント・ガーデン歌劇場は
ウェーバーにイギリス・オペラの作曲を委嘱します。この時期、結核で静養を
余儀なくされていた彼でしたが家族のためにこの仕事を引き受けます。貧乏暮
らしに耐えさせてきた家族への思いやりでした。1826年、委嘱作『オベロン』
をみずからの指揮でロンドンで初演した二ケ月後、ウェーバーはその地で亡く
なります。遺骸がドレスデンに還ったのは18年後。ドレスデン歌劇場の楽長は、
ワーグナーが務めていました。
(参考文献『標準音楽辞典』音楽之友社刊「ウェーバー」の項)
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28歳のウェーバが「クラリネットとピアノのためのグランド・デュオ・コン
チェルタント(協奏的大二重奏曲と訳されます)」の創作に取り組んだのは
1815年7月のことでした。まず手始めに終楽章ロンドを書き、次に中間楽章ア
ンダンテにとりかかります。そして、一年後1816年11月に第1楽章アレグロ
を完成させたのです。完成前後に30歳の誕生日を迎えています。創作順序が
逆行しているため、音楽構成の上で支障があるのではないかと勘ぐりむきもあ
るようですが、まったくそういう印象はなく、バランスの整った作品です。
クラリネットが主役、ピアノは伴奏という通念はこの作品では全く的はずれで
す。ふたつの楽器共々主役となり、時にはしのぎを削る大勝負、時には相手が
ソロを奏でるときのサポート役として、常に大活躍するところが、この曲の醍
醐味といえます。
協奏的大二重奏曲はミュンヘンで就職活動をしていた時代のウェーバーが絶大
なる信頼を置いた、19世紀を代表する名クラリネット奏者で友人ハイリンヒ・
ベールンに捧げられています。就職が叶わなかった苦い想い出のあるミュンヘ
ンでしたが、ウェーバーはベールマンと変わらぬ友情を保ち続けました。ウェー
バー自身もピアノの名手。名手ベールマンの存在があったからこそ、クラリネ
ットとピアノの「競演」そのものである、この素晴らしい作品が生まれたので
しょう。
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第一楽章は、少し古典派作品の雰囲気ただよう快活で明るいアレグロ。力強い
ピアノのフレーズに続き、短い音でクラリネットが返答します。はしゃぎまわ
るお茶目なメロディとダイナミックなピアノのフレーズの絡み合いの妙を楽し
ましょう。ぬくもりのある第二主題、思わずはしゃぎたくなるピアノのリズム。
この楽章に限らず、随所に出てくるピアノの高音とクラリネットによる三度の
ハーモニーの美しさが特に格別です。中間部はピアノが主役に転じクラリネッ
トがサポートしています。この部分のピアノの動きは凄いですよ。
第二楽章は、苦悩する哀愁帯びたクラリネットのメロディの美しさを堪能して
ください。中間部のピアノ独奏部が素晴らしい。やがてクラリネットが重なり
ふたたび味わい深いデュエット。和音が微妙に変化していく過程の妙を楽しん
でください。
第三楽章は、暗雲とした空のすきまから光が差し込むようなおだやかなメロディ
で始まります。終始おだやかな旋律の間に、細かい音が数珠繋ぎで円を作り、
ひとすじの風のように舞います。二つの楽器が高音から低音を自由自在に行き
来しながら聴かせる見事なデュオ。中間部のピアノのざわめきのようなフレー
ズと少し観念的なクラリネットのメロディが切ないです。終盤の両楽器の音の
コンビネーションは圧巻。
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★私の聴いたCD
C187-891 A(1989 ORFEO)
CARL MARIA VON WEBER
Grand Duo Concertant fuer(クラリネットとピアノのための)
Variationen op.33(クラリネットとピアノのための)
Trio g-moll op.63(フルート、チェロ、ピアノのための)
※Amazonにて輸入盤で見つけましたが日米共に現在入手不可のようです。
こちらにリンクをはっておきます。情報としてご覧ください。
http://www.musiker21.com/cdinfo.html
★PODCASTにサンプル掲載
midiで作った音源をPODCASTにアップしてあります。いつものように微妙な音
楽的ニュアンスは欠けていますけれど、雰囲気は感じていただけるでしょう。
(第一楽章、第二楽章はテンポや音量を編集したため、少し音割れがあり、お聞
き苦しいことを、あらかじめお詫びします)
http://musiker21.seesaa.net/
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2.羽田健太郎さん、ありがとうございました
ずいぶん前に本誌で書きましたが、私は90年代はじめ頃、あるファミリーコン
サートの台本を15回ほど書かせていただいたことがあります。2ケ月ごとに関
東の主要地区のホールを順に回る無料演奏会で、レギュラー出演者は故山本直
純さん(指揮と司会)と歌手の森みゆきさん。オーケストラによる演奏を家族
ぐるみで楽しんでもらおうという趣向です。有名な管弦楽曲、交響曲、協奏曲、
TVや映画音楽をプログラムとしたバラエティに富んだ内容でした。本誌読者の
皆さんの中にも、コンサートに足を運んだ方がおられるかもしれません。
台本といっても、ドラマや映画のようなストーリー性は必要でなく、舞台進行
表みたいなものでした。出演者の舞台への登場と退場、曲の始まり、終わり、
照明がON、OFF等の適切な指示が最も大きな役割でした。ただ、間に山本さん
と森さんの語りのためのネタとして、台詞的に何か書き添えなければなりませ
ん。舞台進行の情報については演出家の指示に従い書くだけですが、「話題」
のテーマは誰も与えてくれません。ですから私自身の神経の90パーセントは台
詞に注ぐことになりました。音楽や作曲家、楽器にまつわるネタを自分で資料
を漁り調べ台詞もどきのものを毎回書きました。
「山本さんは台本通りにお話しないから…」、気楽に書けば良いといわれまし
た。けれど、本番では確かに台本記載通りではないものの、内容のエキスを抽
出し山本さん流の口調で話すのです。これにはあわてました。また、森さんは
むしろ台本に忠実にお話になるのですから、やはりいい加減なものは書けない。
こうして私は2ケ月に一度、心地良い緊張の日々を送ることになりました。
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毎回、ソロ奏者をゲストに迎えました。ヴァイオリン、トランペット、歌手、
ピアニスト、ハープ奏者等々。初めてのピアニストが羽田健太郎さんでした。
ベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第5番《皇帝》」を堂々と弾く姿に惚れ惚れ
したことを覚えています。羽田さんは大げさな動作もなく、淡々と弾いていお
られる、というのが印象的でした。山本さんや森さんとの喋りも実に流ちょう
で、それまでの出演者とはひと味違う感じがしました。
数年後、今度はテレビの夜の報道番組で羽田さんをお見かけするようになりま
す。野外でのピアノ演奏です。「羽田さん、大変だろうな…」といつも感じて
いました。普通の演奏家なら、音響条件が悪く、悪天候によっては演奏不可と
なる恐れもあるコンディションでの演奏など拒絶するでしょう。でも、羽田さ
んは、いつも変わらぬ笑顔で引き受け(ておられたと想像します)、いつもと
変わらぬ演奏を聴かせてくれました。
音大卒業後、クラシックの道に進む実力があるのに、あえて学生時代のアルバ
イトの延長でスタジオミュージシャンを務め、そして作曲・編曲家になられた
羽田さん。クラシック畑に明るく、しかも協奏曲を弾けるだけの力量のある人
材ということで引く手あまただったそうですが、さらに、トークという才能が
加わり多方面で活躍されました。羽田さんの作品や演奏、そしてお話に接し、
クラシック音楽に導かれた人は日本全国に大勢おられるでしょう。
ありがとうございました。安らかにお眠りください。
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【今週のPODCAST】
ー最新配信番組ー
◆6月10日配信
ウェーバー クラリネットとピアノのためのグランド・デュオ・コンチェルタント
(協奏的大二重奏曲)
第一楽章、第二楽章、第三楽章
クラシック音楽夜話 エピソードop.203(予定)
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過去の番組ラインアップ
◆6月10日配信
シューベルト 即興曲 D.935-2
今号の2で触れた曲を音源にしてみました。
◆5月26日配信
永遠のピアニスト、バックハウス
バックハウスへの私musikerの想いを語りました。
◆5月5日配信
エピソードop.201〜今号に関連の話題を
モーツァルト フルート四重奏曲 K.285 第3楽章
◆5月3日配信
モーツァルト フルート四重奏曲 K.285 第2楽章
※iPODやiTUNESをご利用でない方も、次のURLでお楽しみいただけます。
ぜひどうぞ。
http://musiker21.seesaa.net
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【私の聴いたCDや本】
http://www.musiker21.com/cdinfo.html
※本誌で取り上げた作品のCDや書籍などを掲載しています。
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【あとがき】
羽田健太郎さんが亡くなりました。58歳という年齢に唖然。クラシックを身近
な存在にするために大きく貢献された方だけに残念です。ご冥福をお祈りいた
します。
ウェーバーは名前にvonが入っていますから元は貴族の家系ということで生活
は裕福だったのだろうと勘違いしていました。職を得るため各地を転々として
いたところなどモーツァルトを思わせますが、私は、時代も場所も違うけれど
つい山本勘助のことを思い出してしまいます。
安住の地ドレスデンでも、作品の評価が今ひとつであったということは、きっ
と寂しかっただろうに。ウェーバーにとって家族が唯一の慰みだったのでしょ
う。そして、家族がいるからこそ、病もなんのそので、オペラを完成させるこ
とができたのでしょうね。
昨日からmidi制作に没頭し気がつけば朝5時になっていました。疲れましたが、
それなりの成果を感じています。第二楽章が一本調子で不満ではありますが(笑)。
毎回申し上げておりますが、気に入っていただき、ぜひCD等で改めて聴いて
いただきたい逸品です。
それにしても、クラリネットって、本当に低い音が出せるんですね。改めて驚
きました。
さてと、これから音声版「クラシック音楽夜話」の録音をはじめましょ。昨日
は雨がザーザー、雑音で録音にはふさわしくありませんでしたからね。
op.204で、再びお目にかかりましょう。
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構成・文:musiker
◆webサイト「musikerの音楽夜話」
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