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クラシック音楽夜話


2007.12.09

クラシック音楽夜話 Op.210 モーツァルト ピアノ協奏曲第21番


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     クラシック音楽夜話 Op.210 2007年12月9日(日)

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            音楽があなたを包み込む

Op.210 CONTENTS━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1.中年のオヤジが『Kiss』を…
2.モーツァルト ピアノ協奏曲第21番

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1.中年のオヤジが『Kiss』を…

衝撃の告白をします。世間体もあるので、公にするのをためらっておりました。
しかし、今年世の中で起きたさまざまな騒動に共通のキーワードの事を思うの
です。流行語大賞「どげんかせんといかん」よりはるかにこっちの方が身近で
誰もが「またかよ〜」とうんざりしつつ最も頭にこびりついている言葉。
「隠蔽(いんぺい)」であります。
都合の悪いことを隠し通すのは私の良心が許しません。ということで…。

禁断の果実を食べてしまったのであります。踏み入れてはいけない世界に足を踏
み入れたのです。一度この快楽を経験すると、ううう、逃れられるか?いささか
自信がありません。いい歳をしたオヤジが、まさかこういう世界へと…。とて
も人様には話せません(話しているけど)。もちろん、妻子には内緒です。

女性向け漫画雑誌『Kiss』(講談社刊)を買ったのです、昨日、セブンイレブン
で。いえ、ビールを買うため、なにげなく店に入ったのです。最初は買う気な
どさらさらなかったのです。ただ、以前からこの雑誌のことが気になり、コン
ビニや書店へ行くたび漫画雑誌コーナーで、見て見ぬふりをしつつも物色して
いたのは事実です。お客さんが立ち読み等をしている時はコーナーに近づきま
せん。誰もいない時に、さりげなく、探すのです。人が近づいてきたら、
さーーーっと逃げます。

目的は?もちろん、「女心を勉強するため」。い、いえ、そうではありません。
雑誌連載されている「のだめ」(『のだめカンタービレ』二ノ宮知子作)を読
みたかった。いや、見たかった、ただそれだけなのであります。ただそれだけ
なのに、敷居が高いこと、高いこと。なにしろ、この雑誌タイトル『Kiss』の
Kの文字の横に小さくこう書いてあるのですから。
「読むと恋をする★★」 ※★印は頭の中でハートマークに変換してください
ドキドキしますね。

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とにもかくにも、見つけたのです。発売されたばかりの『Kiss』。辺りを見回
し、指さし確認。「左よし、右よし、後方よし」(誰かいないかの確認です)。
雑誌を手に取り「表紙にのだめのタイトル確認。ある。よーし!」。

そして、目的の「のだめ」をさささーっと探すのですが、なかなか見つからな
い。結局目次を参照し見つけたのですが、最もめくりにくい場所にありました
挟み込みはがきの手前です。編集者さん、いじわるしないで、巻頭に入れてく
ださい。思わぬ時間を食ったので、ぱらりとページを追っただけで、閉じまし
た。なぜなら店のドアの向こうに女子高生たちの姿を見つけたからです。おま
けに、左側から、うら若き女性もやってくる。
「むむむ…。ヤバイ(←何が?)」
ここに立ち続けるわけにはいかぬ。立ち読みで済ますつもりだったのに。
「むむむむむむ、むむむむー、む、む、むむむ、むー」
(↑ここ「英雄」第三楽章スケルツォのメロディでどうぞ)
0.5秒考えた末、私は、決断しました。
「ええい!買っちまうぜ!」

『Kiss』だけをレジに持って行くのもなんなので…、ついカロリーの高そうな
パスタを買ってしまった。メタボが心配です。漫画雑誌を買うだけの話なのに、
なんで、私はこんなにドキドキしなければならないのでしょうか(笑)。

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Lesson116。単行本19巻はLesson107〜112ですから、ストーリーのつなが
りがよくわかりません。千秋が、Ruiと共演するらしいです。ラヴェルの「ピア
ノ協奏曲ト長調」(前に書きましたが第3楽章でゴジラ映画に出てくる音楽う
り二つのフレーズが出てきます。協奏曲の方は少しテンポが早いです)。Ruiと
の共演のことをのだめに報告しそびれ悩む千秋。

そして、パリに来ていた峰が帰国するらしいです。元R☆Sオケのコンミスでウ
ィーン留学中の三木清良参加のコンクールは終わったようです。などなど…。

パリのアパートの仲間たちも次々巣立っていきます。取り残された気分になっ
ているのだめ。包み込むように、彼女の心の内を聞き出す千秋。しかし、最後
は千秋流のやり方でのだめを奮い立たせます。
「だけど、そんなの関係ねぇ!」
いや、間違えました。
「オクレール先生から出されてる課題って どこ?」*
ショパンのソナタ、ベートーヴェンの後期ソナタ、ブラームスの小品集、サン=
サーンス…。*
「よし!とっととやろう これ全部」*
「ハイ?」*
*の部分は、Lesson119より転載(『Kiss』23号・平成19年12月10日号)

この二人を常に包み込んでいるのは音楽なんですね。

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次号は12月10日(月)発売です。禁断の果実を食べたオヤジは、このまま同じ
あやまち(笑)を続けるのでしょうか?

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2.モーツァルト ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K.467

おどろおどろしく、深い哀しみに満ちあふれた20番のピアノ協奏曲。この作品
については、既に本誌でも取り上げましたね。モーツァルト作ピアノ協奏曲の
中でも最高傑作と評判の名曲です。
クラシック音楽夜話Op.169 2005年12月18日(日)
http://blog.mag2.com/m/log/0000078859/106763431.html

私の手元にあるCDは20番と21番のカップリングです。他のCDもそうなのかと
思っていたら、違うようです。同じ短調の24番や、最後のP協奏曲27番など、
さまざまです。レコード会社の営業方針ですから茶々を入れるつもりもありま
せん。ただ、私は20番と21番の組み合わせが好きなんです。短調と長調で対
比的で面白いこともあるのですが、注目しているのは作曲時期です。

いずれもモーツァルト自身が主催した演奏会用に作られました。20番は1785
年2月11日、21番は翌3月10日、それぞれのコンサートで初演となります。
作曲、演奏、ピアノ指導と連日多忙な日々を送っていたため、完成はギリギリ。
20番などは完成後ロンド部分を読み返しただけで本番に向かったそうです。
21番はまだよかった、といっても完成は前日でしたが。

ちょうどこの頃、父レオポルトがウィーンを訪れていて、息子モーツァルトの
多忙さを手紙で娘ナンネル(モーツァルトの姉)に書いています。毎日のよう
に演奏会、レッスン、演奏、作曲に取り組む息子の前で、なすすべもなくて、
落ち着かない気持ちであること。モーツァルトが使ったピアノは、2月11日
から3月12日までの間に、少なくとも12回は演奏のため運び出されたこと。
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モーツァルトの作品の中で人気が高いのは短調作品といわれています。確かに、
一般的には、交響曲では40番が、P協奏曲では20番と24番が好んで聴かれます。
全作品中短調作品の占める割合はごくわずかなのに不思議ですね。私も20番が
大好きで、繰り返し聴いていた時期もあります。ただ、20番の後には必ず21番
も聴きました。CDのカップリングがそうなっていたから、という単純な理由と
はいえ、とても幸せなことだったと、思っています。

なぜなら、20番を聴くと哀しい事を思い浮かべてしまう。とてもメランコリッ
クな気持ちになります。映画「アマデウス」冒頭で使われたような悪魔的雰囲
気と哀愁帯びた曲想がぷんぷんしているこの協奏曲は悲劇ドラマです。モーツ
ァルトの音楽は短調であっても、対比的に暖かみやぬくもりもあり、救われる
のですが、20番の場合第一楽章の悲劇感にインパクトがありすぎて、気持ちが
萎えたままになりそうです。終楽章フィナーレで、彼は長調に転じて聴衆を煙
に巻きますが、置いてきぼりにされた私たちは戸惑うだけ。奈落の底に落ち、
闇の中でちらりと光を見せられた、そんな気分です。

そんな時、21番が聞こえてきます。安心します。いや、むしろずっこけるので
す。弦楽器ユニゾンのメロディを聴くだけで、思わず可笑しくなります。映画
「笑いの大学」で役所広司さん演ずる検閲官が、泣きながら笑うシーンがあり
ますが、あんな感じでしょうか。聴き続けていると、やるせない思いが次第に
消えていきます。
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【第一楽章】アレグロ
冒頭からゲラゲラと笑いたくなる弦のユニゾン。ヴァイオリンの美しいメロデ
ィに呼応するトランペットとホルン、ティンパニーの軽妙なリズム。笑いのメ
ロディと軽妙なリズムはその後形を変えて出てきます。木管楽器のソロに導か
れ控えめに出てくるピアノ。それまで出てきたテーマを即興風に演奏していき
ます。

曲想が変わりますが、驚きますよ。まず、交響曲第40番冒頭のメロディに似た
フレーズがピアノによって奏でられるのです。やがて長調に転じて、今度は、
ホルン協奏曲風(番号は失念。1番か3番だったような…)メロディとなりま
す。

冒頭のテーマの再現。笑いのテーマは今度はピアノ低音部で表現です。ここか
らピアノの独壇場ですから、よく聴きましょう。ピアノソロが終わると、後半
部へのつなぐ管弦楽。後半はうって変わり哀愁帯びた曲調になります。展開の
仕方が20番第二楽章中間部のメロディ不在部に少し似ているような気がするの
ですが、気のせいでしょうか。

それまで出てきた一連のメロディを交互に登場させて、フィナーレに向かいま
す。笑いのテーマを可愛らしくピアノ高音部で表現するところなど、思わず微
笑んでしまいます。カデンツァの後、管弦楽で締めくくり。モーツァルト作の
カデンツァはないため、ピアニスト独自のカデンツァをお楽しみください。

【第二楽章】 アンダンテ ヘ長調
トランペット抜きで、弦楽器には弱音器、コントラバスは終始ピチカート。
なんとも上品な雰囲気です。舞台が笑いあふれた後に、上品な女優さんの登場
ですね。メインメロディは、どこかで聞き覚えのあるメロディ。美しいです。
弦楽器の音色が不思議な味わいなのは弱音器のせいなのですね。ピアノの控
えめな高音の清らかな音色と、芯のある低音の音色の対比が素晴らしいです。

【第三楽章】 アレグロ・ヴィヴァーチェ・アッサイ ハ長調
ハツカネズミのように軽妙でリズミカルなメロディに嬉しくなります。スピー
ディで、たとえば運動会のリレーを鑑賞しているような。木管楽器の音色がき
れいですね。ピアノの小刻みなフレーズとの掛け合いも楽しい。終始ワクワク
させられ続けますが、中間部には少し神経質で難解な音楽展開があり、ドキッ
とします。いろんな楽器がワイワイがやがやと口論しているみたい。頭が混乱
しそうになる一歩手前で、軽妙なリズムとメロディの再現です。安心しました。
モーツァルトの術中にはまりそうです。最後はころげまわるような楽しいカデ
ンツァの後、管弦楽でフィナーレ。
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★この曲をインターネットで聴くには
http://www.classicalarchives.com/mozart.html#mozart_piano_con
Piano Concerto No.21 in C ('Elvira Madigan'), K.467で三行目にD.A.Barg
というクレジット付きmp3データで3楽章共聴けます。演奏者は不明ですが、
音はクリアでなかなか良いです。
※"classicalarchives.com"で試聴するにはフリー会員登録が必要です。mpg3、
midi等膨大な種類の音楽データの宝庫。音楽好きの皆様は会員になることをオ
ススメします。
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★私がお気に入りのCD
PHILIPS 416-381-2
モーツァルト
ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466
ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K.467
内田光子(ピアノ)
イギリス室内管弦楽団
指揮:ジェフリー・テイト
録音:1985年10月7日〜10日、ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール
※このCDは現在入手不可。20番+24番、21番+23番にカップリングが変わっ
 ていました。

UCCG-3328(453-080-2)
モーツァルト
ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466
ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K.467
フリードリヒ・グルダ(ピアノ)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:クラウディオ・アバド
録音:1974年9月、ウィーン、ムジークフェラインザール

CDの情報はこちらでどうぞ
http://www.musiker21.com/cdinfo.html
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【今週のPODCAST】

ー最新配信番組ー
◆12月9日配信
エピソードop.210 モーツァルト ピアノ協奏曲について
◆11月4日配信
エピソード op.209 ハイドンの交響曲について
◆10月8日配信
エピソード op.208 ホルスト《惑星》、夏川りみさんの歌声など

※iPODやiTUNESをご利用でない方も、次のURLでお楽しみいただけます。
 ぜひどうぞ。
http://musiker21.seesaa.net
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【私の聴いたCDや本】
http://www.musiker21.com/cdinfo.html
※本誌で取り上げた作品のCDや書籍などを掲載しています。
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【あとがき】

またもや月刊配信になってしまいました。大変ご無沙汰して申し訳ありません。

ピアノ協奏曲第20番と21番との曲調が正反対な理由は、モーツァルトの父の
存在ではないか、とこの頃思うのです。結婚を反対していた父がウィーンへや
って来ました。最初こわばった顔をしていたレオポルトも孫の顔を見てからは、
徐々に表情が緩んでいきました。モーツァルトの安堵の気持ちが想像できます。
二人のわだかまりが溶けていった象徴が協奏曲第21番。元々明るい曲調の多い
モーツァルトの作品の中でも、とびっきりの明るさと暖かさが、この曲にはあ
ります。父と息子はいつまでも父と息子。相当嬉しかったのでしょうね。

今年一番売れたCDは、あの「千の風になって」です。唯一のミリオンセラー。
でも、本年の「レコード大賞」では特別賞なんですね。販売枚数と賞は直結し
ないことは周知されているものの、なんだか納得いきません。販売数は文句な
いでしょうからともかく、今年最も印象に残った歌、世代を超え私たち日本人
の心を満たしたのはこの歌だと思います。えこひいきすぎますか?(笑)。

ブログ版「musikerの音楽夜話」では「ベートーヴェン全交響曲解説」を連載
中です。「クラシック音楽夜話」と「ベートーヴェン音楽夜話」で以前書いた
文章をアレンジしていて書き下ろしは少ないのですが、よろしければ、どうぞ
お楽しみください。4番まで来ています。
http://ameblo.jp/musiker

年内に少なくともあと一回配信します。次はベートーヴェンの交響曲。何番
になるかは、内緒です(笑)。では、op.211まで、皆様お元気で。

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構成・文:musiker
◆webサイト「musikerの音楽夜話」(更新停滞中)
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