2007.12.31
クラシック音楽夜話 Op.211 ベートーヴェン交響曲第4番
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クラシック音楽夜話 Op.211 2007年12月31日(月)
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赤いジャケットに恋をして
Op.211 CONTENTS━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1.運命の出会い
2.ベートーヴェン 交響曲第4番 作品60
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1.運命の出会い
★悲運の交響曲
4番は悲運の交響曲である。なにしろあの3番の後である。後には5番、6番
がある。ニックネームで呼ぶと「英雄」「運命」「田園」。クラシックに興味
がない人も名前くらいは聞いたことがあるはずだ。それほど高い認知度の交響
曲間に挟まり、目立たない存在になってしまった、それが4番である。この傾
向は現代だけではなく、ベートーヴェンが生きていた時代でも同じだったよう
だ。
初演から200年もの間、影の存在であり続けた4番は、9つの交響曲のうちで、
最も演奏される機会が少なく、最も録音も少ないという。具体的数字データが
あるわけでもないので、インターネットなどで読んだ情報による単なる憶測に
過ぎないがほぼ当たっているだろう。
とはいっても、最近、チクルスプログラムによる演奏企画、交響曲全集発売目
的の録音が流行っているから、この頃は4番を聴けるチャンスもある。東京近
辺の方々なら、大晦日にあの狂気のイベント(笑)に行けば必ず4番を聴ける。
あの演奏会なら4番を省略することは絶対ないから安心だ…。
それでも、4番を最優先し演奏する指揮者やオケはそう多くない、はず。これ
を何度も演奏経験した指揮者やオケも少ないだろう。日本のオケは第9ならば
毎年演奏するだろうが、4番は?はて、どうでしょう。その希有の経験、つま
り何度も演奏経験のある指揮者がひとり存在する。厳密にいうと存在した。そ
う、故カルロス・クライバーだ。
★赤いジャケット
クライバー指揮による交響曲第4番との出会いは全くの偶然だった。この話は
何度も書いているし、今月ブログで連載した「ベートーヴェン全交響曲解説」
にも昔の文章をアレンジし掲載したから、いいかげん、読み飽きた…という皆
さんも多いでしょうが、もう一度書かせていただきたい。出会いは、私が通う
中古CD店のレコード棚で見つけた赤いジャケットに魅せられたからである。
赤い地色。金のフレームの中にモノクロの写真。クライバーが指揮棒を左肩上
から勢いよくおろす瞬間を捉えたショットだ。この写真を撮ったカメラマンに、
私は「あっぱれ」を差し上げたい。素晴らしい絵である。存在感あふれるこの
ジャケットデザインを更に引き立てたのはその大きさだろう。アナログLP30
センチ大きな空間いっぱいに広がる世界である。12センチしかないCDでは、
それほど虜にさせられたか疑問だ。手に取った私は、購入するか否かを迷うこ
となく、レジへと運んだ。レジでのお店のご主人の言葉にもグッときた。
「これは、アナログで持っておきたい盤ですよね」
カルロス・クライバーは細部まで研究し尽くした作品しか演奏しないことで有
名で、極端にレパートリーが少ない、とアンサンブルさんのご主人から教えて
いただいたのは後日のこと。その日、赤いジャケットのレコードを持って自宅
へ帰る道をまるで幼い頃欲しかったプラモデルを買ってもらい帰路についた時
のようにドキドキしながら歩いたのを覚えている。あんな気持ちになったのは、
以後一度もない。まだ聴いてもいないレコードに対し特別な想いを抱いたのは
実に不思議だが、本当のことだ。
クライバー指揮によるバイエルン国立管弦楽団演奏のベートーヴェン「交響曲
4番」のLPは私の中では伝説である。他の指揮者・管弦楽団によるCD、LPレ
コード、演奏会も数多く聴いたけど、超えるものはない。クライバーがコンセ
ルト・ヘボウ管弦楽団と収録したDVDでさえも感動度合いが少ない。いや、い
ずれも感動はする。しかし、バイエルン盤とは感動の質が違うのだ。なんてい
おうか…、そう、意中の人の出会いの時のトキメキだ。といえば、大人の皆さ
んならわかっていただけるでしょうか(少し照れながら…笑)。これを運命の
出会いと呼ばずに、なんと呼ぼうか。
ということで、4番との恋は今も続いている。といっても四六時中聴いている
わけではない。年に数回。極端に少ないじゃないかって?いいのだ。毎日のよ
うに顔をつきあわせていても他人のような関係もある。年に二、三度、徹底的
に聴き、聴くたび惚れる。これが、オレ流音楽の聴き方だから。
★文中に登場するお店
中古CD店 Ensemble(アンサンブル)
http://www.janis.or.jp/users/ensemble/
同店ブログ
http://ameblo.jp/ensemble/
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2.ベートーヴェン 交響曲第4番 作品60
交響曲第4番の作曲時期は1806年の夏の終わりから秋にかけて。献呈はフラン
ツ伯爵。非公式の初演は1807年3月、ウィーンのロブコヴィッツ伯爵邸にて。
「交響曲第4番」以外に「ピアノ協奏曲第4番」(ぺートーヴェン自身のピアノ
演奏による初演)「コラリオン序曲」が演奏されている。
【第一楽章】アダージョ〜アレグロ・ヴィヴァーチェ
コワーイアダージョである。弦楽器のユニゾンによるゆったりとした五度間隔
の動き。中途半端な上下運動によるメロディ。ピチカート。悪魔の足音を聞い
ているみたいな。悪夢を見て、寝床で金縛りにあうかのような。夜の闇。闇の
恐怖である。
そんな怖い思いは、アダージョが終わる頃のゆっくりとしたクレッシェンドで
吹っ飛ばされる。せえーのー、で始まるのは、ほとばしる水しぶきのような底
抜けに明るい音楽。なんというコントラストだろうか。恐怖は一気に微笑みに
変わるのである。シンコペーション多用によるスリル感演出。木管楽器の喜び
の歌声に弦楽器が応える。ティンパニーの雄叫び。強弱の極端なコントラスト
。クライバー指揮バイエルン国立管弦楽団の演奏では際だっている。満面の笑
みは、テンポを落とし、少し休憩。再びピアニッシモの世界だけれど、今度は
音楽が明るさを保っているので不安を感じさせない。やがて再びほとばしる喜
びへ。ファゴット、オーボエ、フルート等のメロディのリレーが面白い。緩急
自在でワクワクドキドキさせてくれる楽章だ。
【第二楽章】アダージョ
弦楽器の動きの少ない息の長いメロディが美しい。裏でつまずきながら歩くよ
うな伴奏部のリズムも印象的だ。続き、つまずきのリズムは弦楽器にバトンタ
ッチで木管が長いメロディを担当。じわじわとあふれ出てくる喜びの音楽。た
っぷりとした音色にとことん身をゆだねたい。そして、この楽章の主役は続い
て出てくるクラリネットのソロ。ためらいがちな弦楽器のフレーズに支えられ
てこれまた息の長いどことなく切ないメロディを聴かせてくれるのである。再
び冒頭の音楽に戻るが今度は少し音型を変えている。その後はドラマチックに
予断を許さず…。ファゴットが寂しくソロを奏でた後は木管楽器たちのソロで
冒頭の音楽の再現。同様のバリエーションが続き、最後は各楽器分散和音のリ
レーとティンパニー連打によりおごそかに静かに楽章を閉じる。
【第三楽章】メヌエット〜アレグロ・ヴィヴァーチェ
アレグロ・ヴィヴァーチェと称されているがスケルツォ的な少しユーモラスで
忙しい三拍子。不安定なリズムとメロディ展開が不思議な味を出す。中間部は
安心感あふれる木管楽器による可愛げなアンサンブル。弦楽器の装飾音が効き
ますな。冒頭の音楽の再現はクラリネットのつなぎのようでつなぎでない主役
のフレーズが良い味を出す。中間部、冒頭の再現の後は、あっさりと盛り上げ
てフィニッシュ。
【第四楽章】アレグロ・マ・ノン・トロッポ
弦楽器による16音符リズムふんだんの、はじめから忙しい音楽展開の楽章。
第一楽章の雰囲気を引き継ぎつつ、当然フィナーレに向けた盛り上がりを意識
し創られている。弦楽器の格好いい堂々としたメロディの後は、木管楽器のさ
わやかなメロディリレーである。不安定な和音を間にはさみながら、弦楽器の
小刻みなメロディを絡まる。長調和音に短調を織り交ぜ微妙に色合いの変化を
試み、聴き手の高揚を誘っているところなどは誠に憎い演出だ。ファゴットの
細かい音階や、クラリネットの早い三連符による伴奏部など演奏家泣かせの箇
所もふんだんにある。一瞬たりとも演奏者聴き手共に休ませてくれないベート
ーヴェンは罪深い(笑)。思い切り盛り上げたかと思えば。コントラバスも加
わった小刻みなフレーズで各楽器リレーのリタルダンドの後、これまたあっさ
りとフィナーレ。
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【私の聴いたCD】
※惚れたLPのCD版です。
C-100841-B ORFEO D'OR
1984 ORFEO Music GmbH
ベートーヴェン 交響曲第4番
指揮:カルロス・クライバー
管弦楽:バイエルン国立管弦楽団
4番がこれほどエキサイティングな交響曲だということを、カルロス・クライ
バーとバイエルン国立管弦楽団の演奏で初めて知った人は少なくないだろう。
この録音はライブ音源であり、レコードとCD共に、なんと演奏後の拍手が入
っている。CDなんかは、4楽章分のトラックに加えわざわざ「Applause(拍
手喝采・賞賛)」というトラックがある。それも3分間もだ。編集されている
ので、本番では延々と「ブラボー」が続いたのだろうが、聴衆たちの熱気が伝
わってくる素晴らしい記録である。
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【今週のPODCAST】
ー最新配信番組ー
◆12月30日配信
ベートーヴェンの第九を語る
◆12月9日配信
エピソードop.210 モーツァルト ピアノ協奏曲について
◆11月4日配信
エピソード op.209 ハイドンの交響曲について
◆10月8日配信
エピソード op.208 ホルスト《惑星》、夏川りみさんの歌声など
※iPODやiTUNESをご利用でない方も、次のURLでお楽しみいただけます。
ぜひどうぞ。
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【私の聴いたCDや本】
http://www.musiker21.com/cdinfo.html
※本誌で取り上げた作品のCDや書籍などを掲載しています。
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【あとがき】
4番についての話題となると、どうも、赤いジャケットのレコードのことやク
ライバーばかりのことを書いてきたことに頃気がつきました。ということで、
今日は、交響曲の各楽章について私流のコメントを書いてみました。
大晦日です。これからベートーヴェン弦楽四重奏演奏会へ行くのですが、出発
時間ギリギリでこれを書いています。あと、20分。ということで、読み返しも
せず、即配信します。誤字脱字等があれば、次号でお詫びしますのでよろしく
お願いいたします。滑り込みセーフで、音声版も配信しました。話題は第九に
ついてです。そちらもどうぞよろしく。
今年も一年間お読みくださいまして、ありがとうございました。配信数が激減
したことをお詫びします。
来年もどうぞよろしくお願いします。新年号op.112でお目にかかりましょう。
では、皆様よいお年をお迎えください。
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