2007.12.10
すまいとくらしのア・ラ・カルト vol.141
EDIT DESIGN WORKS エディットデザインワークス メールマガジン
2007.12.10 Vol.141
住まいづくりの6人の専門家が
あなたの暮らしと住まいを
デザインします
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●コラム(家づくり箴言の知恵・名言のヒント)
建築家によっては、依頼者に甘言を弄する者も、いるような気がする。意匠
面の斬新さだけではなく、生活面の快適さもうけあいましょう、と。まあ、
なかには例外中の例外で、それを両立させてしまう建築家も、いるのかもし
れない。だが、こういう甘い言葉は、まあ信用しないほうが無難だろう。
(井上章一・国際日本文化センター教授)
井上さんは、若い頃に建築の設計を学ばれています。なので、これはご自分
の体験からの実感としての言葉。建築家と依頼者の間には、「そこまで言っ
てしまうと百年の恋もさめるのでは」というホンネもありますが、逆に裏付
けのない甘い文句もあるように思います。
それらをうまく理解し合うことが、あとでお互い後悔しない秘訣となるでし
ょう。一般には、「そこまで言いますか」という人が誠実だと思われますが、
それにもやはり例外はあるようです。
(笠井義文)
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●エディット広場
エディット仲間の連載シリーズをおとどけしています。
美術発見 2007年12月
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NHK朝の連続テレビ小説「ちりとてちん」を楽しみにしています。話の進
行役である語りの女性タレントはあまり好きではないのですが、上方落語の
世界が舞台となっているので、ああいう人選になったのかな。それを我慢す
ると、結構、見る値はあるのではないかと思います。なんせ、朝。忙しい朝。
仕事に出かけなければならない憂鬱さと一日の始まりとしての爽やかさが同
居する朝ですから、できるだけ気分を盛り上げたいというのは誰もが思うこ
とでしょう。
主人公の喜代美は、明るく生き生きとしていますが、自尊感情はあまり持て
ず、迷いながらもまっとうな自分探しをしている若い女性。高校卒業後、彼
女が飛び込んだ下宿屋が落語家であった徒然亭草若師匠の家。ゆえあって落
語をやめてしまった師匠の落語を伝えたいという弟子の草々の純粋さに、毎
朝、心を洗われるような思いがしています。
あそこまで、「好きなもん」を見据え、それに向かって邁進する若い人を、
最近ではほとんど見掛けることはないからでしょうか。落語にかける情熱も
さることながら、人が人を大切に想う熱い気持ちが胸を打ちます。師匠は親
で、兄弟弟子はまさに兄さんであり、弟であるという世界を改めて見て、少
子化の現代では「こういう手もあるなあ」と思ったことです。
「二人寄って、話せば漫才」といわれる上方でもやはり、落語の人気は低迷
しています。若い人達は、よりアクティブな漫才に目や耳を傾け、落語の語
りには大きな魅力を感じていないようです。いい語り手が少なくなり、ちょ
っと売れるとテレビタレントですから、話芸を磨くと言ったって、大した磨
きも期待できません。
こういう風潮の中、大阪市内のしもた屋には、未だ粋な落語家が暮らしてい
ることを久しぶりに思い出しました。上方落語会の大御所である桂春団治で
す。粋で、色っぽく、芸事をさらりとたしなみ、世事に長けたこの落語家の
ことは、前の職場の同僚が近所に住んでいたというので、よく聞かされまし
たが、長屋の一軒に住まい、軒先には地味な暖簾をさげているので、そこが
春団治の住まいだとわかるというほどのもので、洗面器を片手に銭湯に通う
姿を見掛けたそうな。
華美ではない、堅実な上方芸人の有りようは、近隣の人達にも好ましいもの
だったことでしょう。同僚が、彼の出演する落語会に誘ってくれたこともあ
りました。仕事があまりに忙しくて、それどころではなかったのですが。そ
ういえば、長屋住まいは、近隣の人々の飾らない日常がよく見えます。見方
を変えると、近隣の面倒なことも本当によく見えて、うんざりすることも多
いのですが、ネタの宝庫と言えるでしょう。
「一生、笑うて暮らしぃや」と、落語が大好きだった主人公の祖父は諭すよ
うに言って、亡くなります。福井の小浜で塗り箸職人をしていた頑固一徹の
老人ですが、その工房にはいつもラジオやら、カセットテープやらで落語が
流れていました。「一生笑って暮らす」ことは、簡単なようであり、難しく
もありますが、上方落語の世界で採り上げられる多くは、庶民の日常の出来
事です。つまり、庶民の日常の中には、汲めども尽きぬ話芸のネタが溢れて
いるのでしょう。
ネタといえば、新聞は、現代を生きる美術家の、これまたネタの宝庫です。
直接にヒントが潜んでいるというのではなくとも、世の中に起こっている実
にさまざまな事柄を政治や経済、現代社会、教育、文化など、たくさんの目
と耳と手と足で集めた情報をコンパクトに紙面に載せて届けてくれます。そ
ういうわけで、できる限りのチェックを心がけているのですが、長い留守の
間など、ぽっかり空いてしまったときに、大切な情報が掲載されている場合
もあり、後になって驚くこともしばしばあります。
現代美術家、北山善夫の場合、社会面に掲載される記事を徹底的に探ります。
その多くは、人の生と死にまつわる記事です。記事では、一人の人の生死が、
ほんの小さな紙面で報道されるだけですが、彼はその小さな記事から想像力
を働かせて、現実のものとして、一人の人間の死と真摯に向き合うことを作
品化してきました。この手法は、中学生たちを相手にしたワークショップに
も持ち込まれ、中学生たちは、たくさんの社会面の記事から、真実を見極め
る術を学んでゆきます。現代美術のワークショップは、実に、人の命や人生
を見つめ、生活科にも倫理、道徳にも関わってゆくことが解ります。
それにしても、最近の新聞のやるせない記事はどうでしょう。我が国の御粗
末で幼稚な政治家たちのドタバタ劇、景気回復といいながらも、現実には経
済の先の見えぬ暗闇、社会の問題を如実に反映した荒れる教育現場、若年層
の不安定な雇用、熟年層の遠ざかるばかりの夢。記事を眺めていると、明る
い話題があまりにも少ないことに驚かされます。
こう書いているうちに、なんだか上手い落語を聴きたくなりました。古典も
いいのですが、春団治はん、現代美術家たちが取り組んでいる、世相を斬る
ような新しいネタで一席うってくれはらへんやろか。新聞ネタによると、現
代人は「よりせっかちになった」とあります。待てない人たちが、果たして
人と人との「間」について学ぶためにも、落語の興隆が望まれてなりません。
さて、師走の日々もせわしなく過ぎております。今年もお世話になりました。
皆様には、どうぞよい子年を迎えられますように。
(玉川稲葉)
※稲葉さんがコーディネイターをされるシンポジウムがあります。年末の週
末、「劇場王国阿波の復活について」ご一緒に考えませんか?
(笠井義文)
●「劇場王国復活に向けて」Part2
阿波の農村舞台の全国への発信、活用への提案発掘シンポジウム
・とき:12月15日(土)13:00〜16:00
・会場:徳島ホール(徳島市幸町1丁目・088-653-1802)
・基調講演:妹尾河童
・シンポジウム:舞台の表現方法
・入場料:1000円
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●次回予告 vol.142の発行は、12月25日頃を予定してます。
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