2007.12.01
e-giornale vol.68
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┃ 毎月1回1日発行 2007年12月01日号 vol.68
┃ 発行:(財)日伊協会 佐藤浩子
┃ http://www.aigtokyo.or.jp/
┃ 編集:Rotonda Club Italiana 池田匡克・池田愛美
┃ http://hometown.aol.com/ikedamasa/Index.html
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街のあちこちにツリーが立ち、電飾の準備をしている光景に出会うと、なぜか日本の
師走と似た感覚にとらわれることがあります。イタリア人にとって一年で最も大切な
ナターレの季節が迫りつつあります。(匡)
●2007年12月号の内容
連載 「Aiuto! フィレンツェ中央市場の危機」
------池田愛美(ライター・フィレンツェ在住)
連載 「スーペル・モバイラーへの道・その68」
------池田匡克(Rotonda Club Italiana主宰)
今月の表現 「vacca」
------向井真理子&Alberto Del Mela(Scuola DM Toscana)
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●連載 「Aiuto! フィレンツェ中央市場の危機」
--------文・池田愛美(ライター・フィレンツェ在住)
mailto:imanami@libero.it
ドイツ、スペイン、オーストリアと旅して、各地でいろんなものを見て、イタリア
とは違うなと思う場面に何度も遭遇したけれど、イタリア、このままではまずいぞ、
と思うことも少なからずあった。なかでも、最も心にひっかかっているのが、イタリ
アの市場、否、フィレンツェの中央市場の未来である。
人々の暮らしに密着しているはずの市場が、フィレンツェではものすごい勢いで観
光化しつつある。スペイン・バルセロナの市場も観光客で大賑わいだが、あくまでも
市場として界隈に暮らす人の食生活を支えている。観光客はこうした“生きた”市場
の店頭を眺めてスペインの食についての基礎知識を得、そして、地元民に混じってバ
ルで庶民の味を堪能する。
ところが、フィレンツェ中央市場では昔からあった精肉店や乾物屋、魚屋にパン屋
が次から次へと閉店し、代わってそこに土産物店が入る。生ハムやチーズ、オリーブ
オイルやパスタといった食品ではあるけれど、生活とは無縁な真空パックの値も張る
ものばかりを並べている。そして、店員による激しい客引き。とりわけ、若い日本人
女性の甲高い呼び声は頭の芯にきーんと響き渡り、あまつさえ市場の空気をぴりぴり
と震わせるよう。明らかに異質である。
住民がどんどん中心地から離れ、郊外に住むようになり、空いたアパルタメントは
短期貸しのバカンスハウスやB&B などに改装され、街にはゆきずりの外国人ばかりが
増える。腰を落ち着けて暮らす人がいないのだから市場はどんどん衰退し、観光客向
けの店ばかりが増えていく。こんな図式を、同じ外国人でありながらも、いや、それ
だからこそ、ほぞを噛むような思いで眺めている。
外国を旅するというのは、自分とは異なる人々と出会い、異文化に触れるのが最大
の目的だと思う。同胞が店員を務める店で共通の言語で買い物するというのは、もは
や旅ではない。土産物くらい気軽に買いたいという人もいるかもしれない。しかし、
今やイタリアの食品は日本のどこでも買えるし、各地デパートで開催されるイタリア
物産展のほうがよっぽどクォリティの高いものを扱っている。土産物は“どうやって
手に入れるか”、それが旅ならではの楽しみ(あるいは苦しみ)なのである。
知らない街を地図片手にうろうろとする。わからなければ人に聞く。それがごく普
通の旅の仕方であり、楽しみ方でもある。だから、街で同胞の旅行者が地図を眺めて
いるのを見かけても私はそれを邪魔しないことにしている。道に迷うのを楽しいと思
っているかもしれないところへ、「どちらへ行くんですか」と突然日本語で声をかけ
られたら、それこそ旅気分のぶち壊しである。
かゆいところに手が届くのを当たり前とする国からやってくると言葉も文化も違う
土地では不都合ばかりが生じる。その不都合を楽しめる人が旅を楽しめるのだし、そ
んな旅を楽しんでいる人に日本語で客引きするのは甚だ失礼なことである。そしてそ
の客引き行為が、フィレンツェ中央市場の衰退加速の片棒を担いでいるようで、居合
わす度にやめてくれと叫びたい衝動に駆られるのである。おかげでおちおち買い物も
できない。
筆者紹介:池田愛美(いけだまなみ)
編集者、ライター。1998年よりフィレンツェ在住。「料理王国」「専門料理」などに
コラム連載中。近著に「イタリアの市場を食べ歩く」「シチリア、美食の王国へ」
(東京書籍刊1800円)翻訳に「VIVA! トスカーナ」(ダヴィッド・アボラッフィオ著
・パラダイム社)がある。ローマの外国人記者クラブFreelance International
Press 会員。
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●連載 「スーペル・モバイラーへの道・その68」
--------文・池田匡克(Rotonda Club Italiana主宰)
http://rotonda.blog.ocn.ne.jp/rotonda/
1年ぶりに日本に戻って来た11月某日。週末に時差ぼけ調整した後の明くる月曜日
、はじめての外食は予想通り寿司ではなくイタリア料理だった。東京に戻ると必ず数
度は訪れるこの六本木の某カウンター・イタリア料理店のシェフとはすでに10年来つ
きあわせていただいているが、今回会うのは10ケ月ぶり。今年の正月シチリアの山奥
で豚の解体に立ち会った時以来である。
豚を殺めるのは正月も三が日を過ぎてから、と相場が決まっているらしく、きりり
と晴れた青空の下、豚に引導を渡し、あっという間に食材と化すのを見つめていた数
十分間は生と死、輪廻転生についてぼんやりと考えていたけれど、その後の宴会のす
さまじさにそんな憂鬱はどこかに消し飛んでしまった。とれたての内臓、自家製のサ
ルシッチャ、オリーヴ、ワイン、美味しくないわけが無い。その時点で恐らく本年最
高の食卓、と感じたがやはり今年一年あの食卓を越える場面には出くわさなかった。
翌週は一転、東京を離れて弘前へ。最近日本の地方のイタリアンは元気がいい、と
いう話を聞くにつけあちこち旅してたまらなかったのだがようやく念願かなって弘前
の某店に食事に行くことが出来た。地産地消、という行政が指導する標語ゆえではな
く、必要に迫られて、そして何よりも自分の手で作りたいからという前向きな欲望で
チーズやら肉製品やら、とにかく凝ったものをあれこれ作っている料理人S君とはこ
の旅で4年ぶりに再会したが、出会ったのはやはりカターニアだった。
そのS君の家で酒を交わし、寿司をつまみ、翌日は彼の店で目から鱗が落ちるよう
なイタリア料理を味わって、今度は羽田経由で福岡へと飛んだ。ここはやはりイタリ
アで知り合った友人が最近オープンした店で、カターニアの名店アンティカ・マリー
ナで存分にシチリアを吸収した後、地元福岡に同名の店を開けたのだが、月日は流れ
て新らしい店の開店となったわけである。前菜は懐かしいシチリア風の小皿おまかせ
スタイル。厨房に立つ後ろ姿は昔と変わらず、はじめてカターニアのアンティカ・マ
リーナで食事した夜を思い出してしばし彼の後ろ姿をぼおっと眺めていた。
考えてみると今回の旅はすべてカターニア絡み。別に彼の地に暮らしたことがある
わけでもないのだが、なぜかカターニアでは出会いが多い。とはいえ人生よいことば
かりではなくカターニアでは交通事故にも盗難にもきっちり出会っている。そう考え
ると人生のバランスシートとはうまくできているもので、受難の先にこそ前進がある
のだとしたら、今回の喜ばしき再会は全てそうした受難の積み重ねが授けてくれた果
実、ということになる。日本に久しぶりに帰って来ても気になるのはミシュランでは
なくイタリア料理店であり、気がつくと口にするのは白米ではなく、やはりパスタな
のである。狭き門より入れ、とはアンドレ・ジッドの言葉だが、やはりイタリア道を
一度志した以上、日本にいようがドイツにいようがオーストリアにいようが、考える
のはつねにイタリア料理という狭き門のことであり、どこにいようが心だけは遠くイ
タリアに飛ばしているのである。
筆者紹介:池田匡克(いけだまさかつ)
フィレンツェ在住。イタリア国立ジャーナリスト協会会員。Rotonda Club Italiana
主宰。「Esquire Japan」「Seven Seas」「Impression GOLD」「BRUTUS」などに執筆
。最新刊「イタリア縦断、鉄道の旅」(角川書店)好評発売中。
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●今月の表現 「vacca」
--------向井真理子&Alberto Del Mela(Scuola DM Toscana)
通常、「雌牛」を言い表すには、“mucca” という単語がよく使われますが、専門
的には“vacca”がより正しい用語です。実際には、“mucca”は“la vacca da
latte”「乳牛」という意味なのですが、日常の話し言葉においては、もはや、
“mucca”の方が優位に立ち、“vacca”という言葉はより野生的な響きを持つように
なりました(例えば“vaccaro”は「カウボーイ」の意)。
そんなわけで、“vacca” が使われている言い回しは、常に軽蔑的な意味合いを持ち
ます(例:“Porca vacca!” “Vacca miseria!”「ちくしょう!」など)。
“andare in vacca”というと、「物事が失敗に終わる」という意味になります。
“Paolo ! Che ci fai qui, oggi non dovevi sposarti ? “
「パオロ!ここで何やってるのよ?今日結婚するんじゃなかったの?」
“Macche’ ! Luciana ci ha ripensato all’ultimo momento e ha mandato
tutto in vacca !”
「んなわけないだろ!ルチアーナが直前に気が変わって、全ておじゃんになったんだ
よ!」
当然のことながら、“vacca” はエレガントさとは程遠い存在であり、そこから、く
つろぎすぎた状態でだらっと座っていることを、stare “svaccato”と言います。
“Michelino, stiamo mangiando, non stare svaccato sulla sedia !”
「ミケリーノ、食事中なのよ、だらしない姿勢で座るのはおよしなさい!」
更に、「最上の」という意味の接頭語stra-がついて“stravaccato”となると、と
てもくつろいで、しかし非常に行儀悪く、半分寝そべったような状態でいることを表
します。
“Ho passato una serata favolosa stravaccato sul divano davanti alla tv,
mangiando patatine e bevendo cocacola”
「テレビの前でソファにだらっと寝そべってさ、ポテトチップ食って、コーラ飲んで
、とびっきりの夜を過ごしたよ」
著者紹介:
向井真理子(むかいまりこ)
総合商社に勤務後1年間の米国大学留学を経て、1998年よりフィレンツェ在住。現在
は日本語講師、通訳・翻訳業を営む。
Alberto Del Mela(アルベルト・デル・メーラ)
フィレンツェ生まれ。Scuola Toscana校校長。ボローニャ大学卒業後、イタリア語教
師の経験を経て、弟とともに外国人のためのイタリア語学校 Scuola DM Toscana(ス
クオーラ・トスカーナ)創設。AIL(Accademia Italiana di Lingua)理事。
Scuola Toscana
Via dei Benci, 23
50122 Firenze
Tel/Fax:+39-055-244583
東京都港区赤坂7-2-17 赤坂中央マンション207
(財)日伊協会
Tel 03-3402-1632 Fax 03-3402-3707
mailto:italia@aigtokyo.or.jp http://www.aigtokyo.or.jp/
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『まぐまぐ』 http://www.kaijo.com/ ID:0000087519
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発行:(財)日伊協会 佐藤浩子
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編集:Rotonda Club Italiana 池田匡克・池田愛美
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発行システム:インターネットの本屋さん『まぐまぐ』
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