2004.05.31
『オン・つれ』 第百八十四段 ? 「障子の張りかえ」
[本の紹介・夏目書店] 2004.05.31.(月)
http://www6.ocn.ne.jp/~natume/ _________________________
「オンライン古本屋」にて、『徒然草』を読む。
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第 百八十四 段
相模守時頼の母は、松下禅尼(ぜんに)とぞ申しける。
守を入れ申さるる事ありけるに、煤(すす)けたる明り障子
の破ればかりを、禅尼、手づから、小刀して切り廻しつつ張
られければ、兄(せうと)の城介(じやうのすけ)義景、そ
の日のけいめいして候ひけるが、「給はりて、某男(なにが
しをのこ)に張らせ候はん。 さやうの事に心得たる者に候
ふ」と申されければ、「その男、尼が細工によも勝り侍らじ」
とて、なほ、一間づつ張られけるを、義景、「皆を張り替へ
候はんは、遥かにたやすく候ふべし。 斑(まだ)らに候ふ
も見苦しくや」と重ねて申されければ、「尼も、後はさはさ
はと張り替へんと思へども、今日ばかりは、わざとかくてあ
るべきなり。 物は破れたる所ばかりを修理して用ゐる事ぞ
と、若き人に見習わせて、心づけんためなり」と申されける、
いと有難かりけり。
世を治むる道、倹約を本とす。 女性なれども、聖人の心
に通へり。 天下を保つほどの人を子にて持たれける、まこ
とに、ただ人にはあらざりけるとぞ。
(全文)
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● 訳 ○
相模守時頼の母は、その名を松下禅尼と申した。 時頼を
ご招待申し上げなさったときに、古くなった障子の破れてい
る所だけを、禅尼みずからの手で、小刀をもって切りまわし、
お張り替えなさった。
兄の城介義景が、その日の準備につとめてそばに控えてい
て、「そのお仕事をこちらに頂いて、これこれの者に張らせ
ましょう。 そのような事を得意としている者でございます」
と申し上げなさると、「その者は、私の手細工にはけっして
勝らないでしょう」とおっしゃって、なお、一仕切りずつお
張りなさるのを、義景は、「障子の一面を皆張り替えました
ら、はるかに容易でございましょう。 まだらになるのも見
苦しいではありませんか」と重ねて申し上げなさったので、
「私も後で、すっきりと張り替えようと思っていますが、今
日かぎりは、わざとこのようにしておくつもりです。 物は
破損した部分だけを修繕して用いるものだという事を、若い
人に見習わせるためです」と申されたのは、たいへん素晴ら
しいことであった。
世を治める道は、倹約を土台とする。 女性ではあるけれ
ど、聖人の心に通じている。 天下を治めるほどの人を子に
お持ちになったのは、やはり、ただのお人ではなかったとい
うことだ。
※ 時頼 … 北条時頼。 鎌倉幕府、第五代の執権。 仁慈・
公平を旨とする政治で、世の尊信を集めた。
※ 禅尼 … 剃髪・受戒して仏門に入った、在家の沙弥尼。
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○ つれづれなるままに ●
仕事があるのはありがたい。 また、地道な商売で利益を
出し、生計を立てていくのは大変だという事を、古本屋を始
めて知った。
パソコンのソフトを開発して、あとはコピーして売るとい
うような事業とは違って、八百屋、魚屋、居酒屋、料理屋な
どの商売は、一人一人のお客、一日一日の商いの積み重ねで
何とか生計を立てている。
その大変さがわかるから、お客さんの役に立てることは何
でもやる。
野菜を配達したときに、荷物がメチャクチャに積まれてい
たら、途中で崩れないようにキチンと積み直しておく。 ダ
ンボールの空箱があれば、こちらで引き取って処分する。
ただ配達するだけなら小学生でもできる仕事だし、やりが
いもない。 こちらで気を利かせてやっていれば、値段など
の条件が同じならこちらの店を、少し条件が劣っていても、
うちの店を使ってもらえるかもしれない。
古本屋を通じて得られる利益は多くはないけれど、学べる
ことは無数にある。
(留)
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◎ 次号は… ◎
第百八十五段 「比類のない馬乗り」
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「オンライン古本屋」にて、『徒然草』を読む。 184/243
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◇参考文献◇
『新訂・徒然草』岩波文庫 (西尾実・安良岡康作、校注)
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〔発行〕 夏目書店 http://www6.ocn.ne.jp/~natume/
〔文章〕 松本留五郎
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