2004.09.15
ベートーヴェン音楽夜話 WoO.32
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【ベートーヴェン音楽夜話】 WoO.32 2004年9月15日(水)
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1.モーツァルトとベートーヴェン
2.ピアノと管楽器のための五重奏曲 作品16 変ホ長調
3.「クラシック音楽夜話」創刊三周年記念コンサートへのお誘い
ウィーン・ピアノ・デュオ 2004年12月11日(土)18:30〜
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1.モーツァルトとベートーヴェン
★実際の接触はほとんどないに等しいが…
ベートーヴェンがモーツァルトとウィーンで会った時の記録は乏しく、かろう
じてモーツァルトの伝記に出てくる記述が参考になるくらいです。
以前もお話しした通り、ベートーヴェンは、誰かの紹介でモーツァルトに会い、
まず自作曲を演奏しました。ところが、モーツァルトはさほど興味を示しませ
ん。やがてベートーヴェンは挑発気味に、即興演奏のためのテーマをモーツァ
ルトに求めます。彼は得意のファンタジーレンを繰り広げます。モーツァルト
はベートーヴェンの才能に気がつき、ごく近しい友人に「この若者を注目して
おくがいい。彼は将来世界にその名をとどろかせるだろう」と告げた、という
エピソードが伝えられています。短いウィーン滞在時にベートーヴェンがモー
ツァルトから何らかの指導を受けたのは確実らしいのですが、その時の様子は
全くわかりません。
ただ、ベートーヴェン自らが語ったモーツァルトのピアノ演奏についての印象
が、弟子のチェルニーの言としてオットー・ヤーンによって伝えられています。
それによれば、モーツァルトは巧みにピアノを弾いたけれど、音が途切れ途切
れでレガートに乏しかった、というのです(チェルニーが付けくわえたコメン
トによれば、ベートーヴェン自身も最初はモーツァルトと同様、ピアノフォル
テをオルガンのように弾いていたらしい)。これは、ベートーヴェンがモーツ
ァルトの演奏を聞く機会が、公的にせよ私的にせよ、実際あったことを物語っ
ています。
いずれにしても、現代もなお世界を夢中にさせている二人の音楽家が、ごくわ
ずかな接触しか実生活では、なかったわけです。まあ、接触がもっとあったと
仮定したところで、では、両者にとって今以上の音楽的な成果が生じたか否か
は全く未知であり、想像することに意味はないでしょう。ただ、忘れていけな
いのは、作品という媒体があったこと。ベートーヴェンは、ウィーンから帰り、
ボンでなおいっそうモーツァルトの作品と深く向き合ったことでしょう。
★モーツァルトの作品との接点
ベートーヴェンの作品リストを何気なく見ていて気が付いたのは、彼がモーツ
ァルトの作品を題材に数曲変奏曲を書いているという事実です。
WoO.28 「ドン・ジョヴァンニ」より「たがいに手をとりあって」による
変奏曲 ハ長調 管楽三重奏曲
WoO.40 「フィガロの結婚」の主題による12の変奏曲 ヘ長調
ヴァイオリン、ピアノ
WoO.46 「魔笛」の主題による7つの変奏曲 変ホ長調 チェロ、ピアノ
これらは当時流行の作品のメロディを使うという常道手段でしょうから、特に
驚くべきことではないでしょうが、興味を覚えます。WoOという、正式なOp作品
でないところにも注目すべきでしょう。使い捨て的な、後の世に残す価値のな
い、いわばパンのための作品という認識だったのかもしれませんね(ベートー
ヴェンは自分のピアノ・ソナタでさえも「パンを得るための作品」と言ってい
るのです…。唖然とさせられます)。
その他、ピアノ協奏曲用のカデンツァも残っています。
WoO.58 「ピアノ協奏曲KV466」カデンツァ 第一楽章と第三楽章
内田光子さんが同作品の演奏でこのベートーヴェンのカデンツァを使っていま
す。
ベートーヴェンはモーツァルトを大変尊敬していました。尊敬度合いはおそら
く実際に指導を受けたハイドンをもしのぐのではないでしょうか。ですから、
モーツァルトのピアノの腕前うんぬんの言はさておき、ウィーンでわずかの時
間ではあったにせよ、モーツァルトとの面会を、ウィーン滞在時における最大
の印象深い出来事だった、と後に語っているのです。アイドルに会った後の興
奮みたいに(ちなみに、もう一人の印象深い人物は皇帝ヨーゼフ二世だったそ
うです)。
モーツァルトのオペラの中で三本の指に数えられる上の作品から主題をとり、
変奏曲を書いたという事実は、ベートーヴェンのモーツァルトに対する尊敬の
念の証ではないか、と私は密かに思っているのですが、皆さんいかがでしょう?
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2.ピアノと管楽器のための五重奏曲 作品16 変ホ長調
【作曲】1796年、ベルリンにて?
【初演】1797年4月6日、ウィーン宮廷料理長イグナツ・ヤーンのホールにて
ピアノはベートーヴェン
【出版】パート譜 1801年3月、ウィーンのモロ社
総譜 1830年以降、フランクフルトのドゥンス社
【献呈】シュヴァルツェルベルク侯爵
比べられる相手がいて、どうしてもそれを超えられない時、人はどんな気持に
なるでしょう。
「悔しい」
「いつか超えてやる」
「いや、俺の方が上だ」
「人は見る目がない」
「まいりました」
「あんたにはかなわない」
と、まあいろいろな感情がよぎるでしょう。
ベートーヴェンの作品の中で必ずモーツァルトと比較対象になる作品がありま
す。Op.16の「ピアノと管楽器のための五重奏曲」です。モーツァルトはKV.452
です。オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、ピアノという編成も同
じなら、調も変ホ長調、三楽章の構成も同じ。この珍しい編成の作品は他に類
がなく、事実上モーツァルトとベートーヴェンの作品が双璧をなすといっても
間違いではありません。LPでもCDでも、この二曲がカップリングされるの
が半ば常識になっている感もあります。
そこで冒頭の話題になるのですが、おおかたの評論家たちの評価は、モーツァ
ルトに軍配をあげています。先に書いたのがモーツァルトであること、ベート
ーヴェンはおそらくモーツァルトの作によって刺激を受け、全く同じ編成同じ
調、そして同じ曲の構成で書いたのであろう、とされています。挑戦者ですね。
若気の至りという見方もあるでしょう。上に上げた比べられる立場の感情の中
で、はたしてベートーヴェンはどう考えていたか興味深いところです。
先生方の見方は、ベートーヴェンはモーツァルトの作を手本としていわば習作
としてこの作品を書き上げた、というものです。だから音楽の深みは比べ物に
ならない、とさえほのめかします。実は、白状しますと、私も最初数回聞く中
ではそういう感想を持ちました。なんとなくベートーヴェン作の方が冗長で、
退屈に、特に第一楽章がそう感じられたのです。
でも、四回、五回と聞くうちに、考えは変わってきました。むしろ、ベートー
ヴェンの作は、ダイナミックな和音の中にユーモアが見え隠れし、清々しい思
いにさせられると。考えてみれば当然のことですよね。両者それぞれの個性あ
ふれる作品なのですから、四六時中比較する必要はないのです。まして勝負ご
とじゃあるまいし、優越をつける方が間違っています。
【第一楽章】
力強いユニゾンによるグラーヴェの始まりが印象的です。その後続く管楽器の
美しいメロディによる絡み合いから生まれる心地よいハーモニー。ピアノ先導
で始まるアレグロに続くクラリネットの見事なソロ。それをサポートする他の
楽器の和音。いずれも山奥の清流のような流れが心を洗ってくれるようです。
宝石にも似たピアノの音の粒もきれいですね。ファゴットとホルンの暖かい音
も聞き所。中間部の緊張した表情がぴりりと聞いたスパイスのようです。
【第二楽章】
第一楽章の流れを組むアンダンテです。カンタービレというくらいですから、
歌うように流れる曲想が明るく優しいです。ピアノだけでうっとりさせられる
音楽に、木管楽器のハーモニーが入るとまた格別の表情になります。ポリフォ
ニーとは正反対の縦割りの和音の動きを楽しみましょう。オーボエの哀愁おび
たメロディ。ファゴットのメロディが聞かせどころですし、和音変遷とメロデ
ィのつながりがまた素晴らしい。オーボエとファゴットの絡みも素晴らしい。
ホルンによる主役も存在感たっぷりです。主役ピアノと微妙に絡む管楽器たち
の調べの妙を堪能してください。
【第三楽章】
ピアノのソロで始まり、すべての楽器がハーモニーで誇らしげに歌うメロディ
が、暖かく、時にはユーモラスです。すぐに別展開へ突入するのは唐突すぎる
けれど、逆にダイナミックで面白さが増してきます。ピアノと管楽器の対話で
進むラインの美しさ。中間部は短調に転じきびきびと緊張感溢れています。再
び冒頭のメロディ。今度はエコーに似た管楽器のハーモニーと対話。少しトチ
狂ったピアノのフレーズの後、各楽器による余韻たっぷりの音が続き、フィナ
ーレ。
演奏時間:約30分
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★私が聞いたCDと同じCD
ユニヴァーサルクラシック
モーツァルト ピアノと管楽のための五重奏曲変ホ長調
ベートーヴェン ピアノと管楽のための五重奏曲変ホ長調
演奏:ブレンデル(アルフレッド), トゥーネマン(クラウス),
バウマン(ヘルマン), ホリガー(ハインツ), ブルンナー(エドゥアルト)
http //www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005FEZ2/musiker21-22
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3.「クラシック音楽夜話」創刊三周年記念コンサートへのお誘い
ウィーン・ピアノ・デュオ 2004年12月11日(土)18:30〜
本誌発行人musikerが発行中のもうひとつのメルマガ「クラシック音楽夜話」の
三周年記念イベントとしてコンサートを開催します。出演はウィーン・ピアノ・
デュオ。男性二人のピアニストによる連弾および、二台のピアノによる演奏で
す。ベートーヴェンのプログラムはありませんが、シューベルト、ブラームス、
ラフマニノフの作品ということで、興味がおありの皆様もおられるのではない
かと思い、お知らせいたします。
音楽愛好家、演奏家に評判のTOMONOホール(東京都新宿区市谷)をお借りし、
二台のスタインウェイを使った100名様限定のコンサートです。演奏家の息
づかい、そして聴衆の視線と呼吸が一体になる贅沢なひとときとなるでしょう。
ぜひ皆様お越し下さい。詳細は以下の通りです。
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【期日】 2004年12月11日(土)
【開演】 19:00(開場18:30予定)
【会場】 TOMONOホール
新宿区市谷加賀町2-5-26
都営地下鉄大江戸線『牛込柳町』駅徒歩5分
※周辺地図は改めてHPに記載する予定です。
【入場料】4,000円(全席自由)
【定 員】100名
【プログラム】
シューベルト 幻想曲 ヘ短調 D.940(四手連弾)
ラフマニノフ 2台のピアノのための組曲第2番 Op.17(2台のピアノ)
ブラームス 2台のピアノのためのソナタ ヘ短調 Op.34(2台のピアノ)
(※ピアノ五重奏曲 Op.34のオリジナル編曲版)
【主催】メルマガ「クラシック音楽夜話」
【お問い合せ】yawa@musiker21.com
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ウィーン・ピアノ・デュオについては、「クラシック音楽夜話」で何度か取り上
げていますが、「そんなアーチスト知らない、いったい誰?」等疑問の方はHP
および「クラシック音楽夜話」バックナンバーをご参照ください。
★musikerの音楽夜話TOPページ
http://www.musiker21.com
★メルマガ「クラシック音楽夜話」バックナンバー
http://www.musiker21.com/yawa_backnumber.html
★ウィーン・ピアノ・デュオのページ
http://www.musiker21.com/wiener_klaviere_duo.html
※現在試聴も可能。現在ブラームス「16のワルツ」より1〜8番までが聞けます。
20日からはブラームス「ワルツ」の残り9〜16番、来月からはシューベルト「幻
想曲」を配信予定。
※ブラームス「ワルツ」は当日のアンコール曲としてデュオに頼むつもりです。
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【お申込み方法】
ホームページに設定したフォームメールで仮予約を受け付けます。折り返し確
認メールを差し上げます。確認メール到着により仮登録完了です。
※確認メール送信作業は夜間行いますので到着まで最大で一日お待たせする場
合もございます。二日経過しても確認メールが届かない場合は、こちらのアド
レスまでご一報ください。
mailto:yawa@musiker21.com
定員は100名です。先着順とさせていただきます。
料金お支払い方法については後ほど改めてメールをお送りいたします(支払い
は銀行振込の予定です。申し訳ありませんが振込料のご負担をお願いします)。
ウィーン・ピアノ・デュオの詳細および、コンサートお申込みページへはこち
らから↓
http://www.musiker21.com
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【あとがき】
ベートーヴェンの「ピアノと木管のための五重奏曲」は、モーツァルト作と並
び、私のお気に入りの作品です。聞いていると心が暖かくなってきます。音色
のせいかもしれませんね、それぞれの楽器の。特に第三楽章がいいですよ。
「ヴァイオリン協奏曲」を生演奏で聞く機会がありました。この作品も特別な
存在でして、ワクワクしながらティンパニーの冒頭ソロを聞きました。オケの
メロディで体中がじーんと…。ヴァイオリンのソロが始まる頃には何が何だか
わからなくなってしまいました。困ったものです。
今回は「クラシック音楽夜話」主催のコンサートですが、「ベートーヴェン音
楽夜話」の読者の皆様もぜひどうぞ!もちろん、次のチャンスがあればベート
ーヴェンプログラムで演奏会を企画するつもりです。
では、WoO.33まで、皆様お元気で!
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【ベートーヴェン音楽夜話】
発行・執筆:musiker http://www.musiker21.com
★ご意見・感想等はこちら↓
mailto:yawa@musiker21.com
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◇ まぐまぐ◇ http://www.mag2.com/m/0000105739.htm
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