2008.07.11
「落語に見るオモシロ江戸風俗」 ●怪談牡丹灯籠・其の弐
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3分で読める! 「落語に見るオモシロ江戸風俗」・特別増刊号
平成弐拾戊子年文月拾壱日 其の弐佰玖號 (2008/07/11 No209)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━お━も━し━ろ━ば━な━し━━
●怪談牡丹灯籠・其の弐
告2薄命1孝助脩2武術1(はくめいをつげてこうすけぶじゅつをおさむ)
感2至孝1飯島使2怨人1(しこうをかんじていいじまえんじんをつかう)
飯島様のお屋敷で、お妾のお国が我が儘を働くうち、抱え入れられた新参
の草履取りの孝助は、年頃二十一、二で、色白の綺麗な男ぶり。
平左衛門「手前は孝助と言うか。陰日向無く良く働くと評判が良い。」
孝助「私は武家奉公をして、お剣術を覚えたいので。こちら様は、新影流(※)
の御名人とうけたまわりましたゆえ、御奉公にあがりました。どうぞお
殿様のお暇な節には、お稽古を願います。」
平「オフクロはいくつになるか?」
孝「四つの時に、私を置き去りにして、越後の国へ行ってしまいました。そ
れと申しますのも、親父の不身持ちに愛想をつかしての事でございます。」
平「親父は存生か?」
孝「今より十八年前、本郷三丁目の藤村屋新平衛と申します、刀屋の前で斬
られました。」
平「シテ手前の親父は何と申す者だ。」
孝「小出様の御家来にて、黒川孝蔵と申しました。」
と、言われて飯島平左衛門は、ギックリと胸にこたえ、十八年前、いささ
かの間違いから手に掛けたはこの孝助の実父であったか。俺を実父の仇と知
らず奉公に来たかと思えば、何かと心悪く思いましたが、素知らぬ顔で。
平「それはさぞ残念に思うであろうナ。」
孝「これからは、お剣術を教えていただき、覚えました上は、死に物狂いに
なって、親の仇を討ちます。」
飯島平左衛門は、孝助の孝心に感じ、おりをみて自ら孝助の仇と名乗り、
討たれてやろうと心にかけておりました。
促2垂綸1伴蔵慰2憂鬱1(すいりんをうながしてともぞうゆううつをなぐさむ)
得2香合1新三長2恋慕1(こうごうをえてしんざれんぼをちょうず)
さて、萩原新三郎は飯島のお嬢様の姿を思い詰め、ただ手拭いの上から手
を握りあったばかりで、実に枕を並べて寝たよりもなお深く思いました。し
かし、一人で逢いに行く事もできず、志丈が来れば、お礼かたがた行きたい
ものだとクヨクヨ悩んでおりました。
ある日、新三郎の孫店(※)に夫婦暮らしで住む伴蔵と申す者が来て。
伴蔵「旦那様、この頃、御膳も上がりませんで。ちっと保養をなさいませ。」
新三郎「伴蔵、貴様は釣りが好きだっけナ。柳島の横川へ釣りに行こう。」
伴蔵に弁当と酒の用意をさせて、神田の昌平橋から舟を出しました。新三
郎は、釣りはしたくないけど、飯島の別荘のお嬢様の様子を垣根の外からな
りとも見ようとの心組みで、酒を呑んで舟の中で寝てしまいます。
新「伴蔵や、舟をつけてくれ。ちょっと行ってくる所があるから。」
新三郎は飯島の門から、中へ入り、庭づたいに参ると、お嬢様のお部屋。
お露も新三郎に別れてからそのことばかり思い詰めおりましたから、恥ずか
しいのも何も忘れて、新三郎の手を取って、蚊帳の中へ。新三郎も知れても
かまわんと心得、蚊帳のうちで互いに嬉しき枕をかわしました。
露「新三郎様、これは私の母様から譲られました大事な香箱でございます。
どうか私の形見と思し召しお預かり下さい。」
秋野に虫の象眼(※)入りの結構な品。お露はこの蓋を新三郎に渡し、自
分はその身の方を取って、互いに語り合うところへ、隔ての襖をサラリと開
けて出てきたのは、お露の父、飯島平左衛門でございます。
平「天下御直参(※)の娘が、男を引きいれるとは、家名を汚し、ご先祖に
対してあいすまん。不届き者めが、手打ちにするから、さよう心得ろ。」
新「お嬢様をそそのかした、手前の罪で。お嬢様はお助けなすって私を。」
平「誰彼と容赦はない。不義は同罪。観念しろ。」
と言い様、片手なぐりにヤッとくだした腕のさえ、島田(※)の首がコロ
リと前へ落ちました。新三郎は驚いて前へのめるところを、頬よりアゴへか
けてズンと斬られ、ウーンと言って倒れる。
伴「旦那え、たいそううなされてますね。風邪を引くといけませんヨ。」
新「伴蔵や、俺の首は落ちていないか。」
新三郎はお露に逢いたいと思い続けているものだから、そのことを夢に見
て、ビッショリ汗をかき、舟をいそがせて帰りまして、上がろうとすると。
伴「旦那、ここにこんな物が落ちております。」
と差し出すを新三郎が手に取り上げてみますれば、飯島の娘と夢のうちに
て取りかわした、秋野に虫の模様のついた香箱の蓋ばかりだから、ハッとば
かりに奇態の想いをいたし、どうしてこの蓋が我が手にあることかとびっく
りいたしました。
●能書き
まず、訂正です。前号でレ点は半角カタカナのレ、一二点は半角のーとニ
で表します、と書きましたが、メールにして送信すると、全角に戻されてし
まう様です。すみませんでした、あらためて、レ点は半角アルファベットの
r(あーる)で、一二点は、半角数字の1、2で表します。
新影流=戦国時代、上泉秀綱(かみいずみひでつな・?〜1577?)が創始した
剣術の一派。新隠流とも。その後、上泉秀綱に学んだ柳生宗厳(やぎゅうむ
ねよし・1527〜1606)が改良したのが、柳生新陰流。
孫店=母屋にさしかけて造り設けた店・家。
象眼(ぞうがん)=金属・木材・陶磁器などの材料に模様を刻んで、金・銀・
赤銅・四分一などをはめ込む技法。
直参(じきさん)=江戸時代、将軍・徳川家の家臣で俸禄(ほうろく・現代
で言う年収?)が、一万石以下の者を直参と呼ぶ。諸国の大名の家臣は陪臣
(ばいしん)と呼ぶ。
島田=島田髷。近世、未婚の女が結った髪型。前髪と鬢(びん・頭の左右側
面)を張り出し、髷の中ほどを元結で締めて撥(ばち)の形にする。現代で
も花嫁が結う文金高島田の他、つぶし島田・投げ島田・奴島田等種類が多い。
●跋
この牡丹灯籠と言うお噺は、中国の小説「剪灯新話(せんとうしんわ・明
の瞿祐(くゆう)が1378年頃書いたとされる、中国の怪奇談を収めた文語体
の短編小説集で、全四巻からなる)」中の「牡丹灯記」を、浅井了意(あさ
いりょうい・江戸前期の仮名草子作者(? 〜1691))が翻案して、寛文六年
(1666)に刊行した「伽婢子(おとぎぼうこ)」に、元ネタが収録されていま
す。近代落語の祖と言われる、三遊亭円朝師が、これに天保年間牛込の旗本
の家に起った事実譚を加えて創作した怪談です。
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HNを。江戸時代、あこがれます・・・
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