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3分で読める!「落語に見るオモシロ江戸風俗」


2008.08.15

「落語に見るオモシロ江戸風俗」 ●怪談牡丹灯籠・其の漆(七)


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 3分で読める! 「落語に見るオモシロ江戸風俗」・特別増刊号

   平成弐拾戊子年葉月捌日 其の弐佰拾玖號 (2008/08/15 No219)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━お━も━し━ろ━ば━な━し━━

●怪談牡丹灯籠・其の漆(七)

匣底百金偽解2臣冤1(こうてい(※)のひゃっきんいつわってしんのべんをとく)
戸隙一槍誤復2父仇1(こげきいっそうあやまってちちのあだをふくす)

平左衛門「お国。紛失した百両の金が出たよ。俺が他へしまって忘れていた
    のだ。孝助の手文庫から、胴巻きが出たのは、前に孝助がそれを欲
    しがっていたので、やったのだが、私も孝助もそれを忘れていたの
    だ。みんなに心配をかけて気の毒だ。源助もお国も孝助を疑ったの
    だから、謝れ。」
 お国は、今度こそ、孝助が手打ちになると思っているところへ、お金が出
たと言うから、残念でたまらないが、しかた無く、孝助にわびる。平左衛門
は、孝助の忠義はかねて見抜いているから、孝助が盗み取るような事は無い
と知っているゆえ、金子はまったく紛失したなれど、別に百両を封金にこし
らえ、この騒動を我が粗忽にして、ぴたりと納まりがつきました。

 そのうち、三日となり明日はいよいよ殿様と隣の源次郎が釣りに行く当日。
孝助は、お嬢様が亡くなったばかりだから、見合わせたらと、殿様に釣りを
お止めになるよう進言するが、お聞き入れがない。今夜は源次郎が来て、お
国の所へ泊まるに相違ないから、廊下で源次郎を槍玉にあげ、中二階のお国
を突き殺し、自分はその場を去らずに切腹をしようと覚悟を決め、欄干にか
かている槍をはずし、砥石で研ぎはじめます。それを見た飯島は、しばし腕
をこまぬき、小首をかたげて考えておりました。

 孝助は槍を小脇にかいこんで、庭口に忍んでいる。やがて、八つの鐘が鳴
ると、さらりさらりと障子を開け、抜き足で廊下を忍んでくる寝間着姿の男、
たしかに源次郎に相違ないと、力任せに繰り出す槍はあやまたず、プッツリ
と腓腹(※)へ突き通る。突かれて男はよろめきながら、槍先を引き抜き、
「孝助、表へ出ろ。」と言われて孝助、びっくりしたのは、源次郎と思いの
外、大恩ある主人へ槍を突っかけた。

平「源次郎を突こうと思って、平左衛門を突いたか。」
孝助「(泣きながら)とんでもない事をいたしました。源次郎とお国が、殿
  様を釣り船から突き落とし、源次郎を当家の養子にしようとの悪巧み。
  この額の傷はその時のもの、今晩、二人の不義者を殺し、私も切腹をし
  ようと思いましたが、かえって主人を殺すとは、神も仏もないものか。」
平「ふつつかなるこの平左衛門を主人と思えばこその志がかたじけない。仇
 同士とは言いながら、手前の槍に命を落とすのは、輪回応報(※)。」
孝「なんで、私達が仇同士でございましょう?」

 平左衛門は、十八年前に、孝助の父、黒川孝蔵を殺したのは、自分である
事、国と源次郎の密通はすでに知っており、二人の命を断たんとする孝助の
心底を察し、自ら源次郎を装って、孝助に槍で突かせた事を告げ、孝助の父
を斬った刀、天正助定(※)と遺言状、百両の金を孝助に託し、自分の髷を
切り取って、胸を晴らし、ここを立ち退いて、相川新五兵衛方へ行く様に命
じます。夜中に叩き起こされた相川は、コツリと柱に頭をぶつけながら、孝
助から渡された、飯島の遺言状を見て、ハッとばかりに、ため息をつきまし
た。

帳中怪異果如何(ちょうちゅうのかいいはたしていかん)

 伴蔵は、畑へ転がりましたが、両人の姿が見えなくなりましたから、震え
ながらようよう起きあがり、泥だらけのまま起きあがり、家へ駆け戻る。

伴蔵「おみね。出なよ。」
おみね「暑かったこと。脂汗がびっしょり流れたよ。」
伴「てめぇは脂汗をかいただろうが、俺は冷や汗をかいた。幽霊が裏窓から
 入っていったが、萩原様はとり殺されてしまうだろうか。」
 伴蔵は、抜き足で萩原の家の裏手へまわり、しばらくして立ち帰り。
伴「何だか、ゴチャゴチャ話し声が聞こえたから、のぞいて見ると蚊帳が釣
 ってある。その内に話し声がパッタリと止んだから、大方仲直りがあって、
 幽霊と寝たのかもしれねぇ。」
お「いやだよ。つまらない事をお言いでないよ。」
 と言ううちに、やがて夜もしらじらと明ける。夫婦そろって、怖々と萩原
の家へ行ってみます。

伴「旦那、夜が明けましたよ。」
 と、戸を開け、床のうちをのぞいた伴蔵は、うわー!っと叫び声を上げる。
伴「おみねや、俺は、もうこの位怖いものは見た事がない。」
 と、おみねは聞くより先にキャッーっと声をあげる。
伴「おお、てめぇの声の方で、びっくりした。とにかく、白翁堂の爺さんを
 連れて来て、立ち会いをさせよう。」
 と、これから、白翁堂の家へ飛んでまいります。呼ばれた白翁堂は萩原の
家へ入り、床のうちをさしのぞいて、ワナワナと震えながら、後へ下がりま
した。



●能書き

匣底=こうてい。箱の底の事。
腓腹=ひばら。脾腹(ひばら)とも。よこばら。わきばら。
輪回(廻)応報=りんえおうほう。車輪が回転してきわまりないように、善
悪の行いに応じて吉凶・禍福のむくいを受けること。因果応報とも。
天正助定=てんしょうすけさだ。金明竹08/03/03の能書きでも書きました備
前長船の名刀で、助定は室町の古刀。戦国時代真っ只中の需要が沢山あった
時代に量産されました。


 
●跋

 飯島家のお家騒動と、恋慕の幽霊の場面が、表裏一体となって、噺はいよ
いよ佳境に入ってまいります。一話でも聞き逃したら、ストーリーが分から
なくなる様な展開。昔の古き良き時代の方は、次の展開を聞きたくて、毎晩、
寄席へ通ったのでしょうね。ご意見・ご感想、お待ちしております。頂いた
メールは、お断りのない限り、メルマガの中で紹介させていただく場合があ
りますので、よろしければ、HNを。江戸時代、あこがれます・・・

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