2008.08.02
明快!森羅万象と百家万節の系譜 -No.46/4-
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明快!森羅万象と百家万節の系譜 -No.46/4-
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先週は近くにある情報通信研究機構小金井本部の一般公開に行ってきました。
最先端の内容が理解できたとはとても思えませんが、簡単な理科実験、複雑そう
な装置(光学装置や電子機器)を見るだけで楽しい。催し物に研究者なりの工夫
が出ていました。でも、研究現場の苦労の方が面白そうでした。2-3、聞いてみ
たのですが、すぐに専門用語が出てきてしまって、ちんぷんかんぷん。
最近では日本の技術力を維持するために国を挙げてキャンペーンを行ってお
り、理科系の催し物が花盛りです。理科系坊主たちにはとても楽しいことでしょ
う。ただ、理科好きでない人にはあんまり関係ないかもしれない。そうなると、
市民が持つべき科学技術の素養なるもの、市民の科学技術リテラシーが行政的に
登場してくるのです。この「持つべき」が問題です。科学の知識を使って身の回
りにあるものに不思議を発見し、それを楽しむことができるようになればよいの
です。科学的な考え方を知って、身の回りの不思議の理由を解き明かす楽しみを
持てればいいのです。
もう一つはSFでしょう。SFはだいぶ読みましたし、自分でも短編を書いてみま
した。空想の強度を高め、ストーリーの質を高めるためには科学の知識(SFの着
想はここでしょう)はもちろんですが、社会、行政、法律、軍事、心理学などの
雑多な知識を集めることが大変でした。
最先端科学、テクノロジーと社会一般とを結合する活動については、専門的な
人材を育成し、国の研究機関に配置するアプローチがあってもよいようです。専
門家と一般市民との橋渡しの方法について、経験を分析し調査を行う「学」も必
要でしょう。
◆◇ 生体防衛論 ◆◇
42、DNAウイルスの種類
+++ DNAウイルスのゲノムサイズはピンからキリまである +++
RNAウイルスに比べて、DNAウイルスは様々な大きさがあります。小さいウイルス
が存在する理由はゲノムの複製をみんな宿主におんぶしてしまうことができるこ
と。RNAウイルスは巨大なRNA複製酵素を持つ必要があります。大きいDNAゲノム
を持つことができる理由は複製のミスを修復する機能を宿主から借りることがで
きるためと考えられています。RNAウイルスには修復機能がないので、最後まで
大きな間違いのなかったウイルスしか生き残れません。DNA ウイルスは間違いが
あっても直すことができますから、いくらでも(宿主以上の大きさは無理です
が)大きくなることができます。
DNAウイルスは最小のサーコウイルス(約1600-1800塩基)から最大のミミウイル
ス(バクテリアサイズ(120万塩基対)のゲノムを持つ、アメーバのウイルス)
まで多様です。ここで、RNAウイルスの近縁な生物ですが、ウイロイドを紹介し
ておく必要があります。ウイロイドはその名のとおり、ウイルスもどき。タンパ
ク質の殻を持だずにRNAゲノム本体が感染性を持ちます。RNA分子が細胞に侵入し
複製する。植物の感染因子として知られています。植物には小さなRNAを複製す
る仕組みが備わっているのでしょう。その仕組みを利用してウイロイドは複製し
ます。
+++ 小さなDNAウイルスは増えている細胞でしか増えられない +++
小さなDNAウイルスにはサーコウイルス、パルボウイルス、パポーバウイルスが
あります。種類によって違いますが、だいたい2つの遺伝子しか持っていませ
ん。ゲノムの複製に関与するタンパク質と、ウイルス粒子(カプシド)を作るタ
ンパク質です。ウイルスの複製は完全に宿主に依存するので、分裂・増殖する細
胞でしか増えることができません。
体の中で分裂・増殖している細胞は常に再生している組織の幹細胞です。粘膜や
皮膚の一番下の層、骨髄中の造血幹細胞、精母細胞(精子の素)、毛などがあり
ます。ウイルスのターゲットは粘膜や皮膚、造血幹細胞です。細胞に寄生するよ
うに増えますから重篤な病気を起こすウイルスは少ない。死にいたる感染症は犬
のパルボウイルス感染症くらいでしょう。幹細胞は体の深部にありますからそこ
に到達するまでウイルスはじっと耐えなければなりません。小さなDNAウイルス
のカプシドは丈夫で、自然界でも長く生き残ります。
小さなDNAウイルスの複製に関与する遺伝子は時々腫瘍(といってもイボなどの
良性腫瘍)を作ります。増殖する細胞の増殖に干渉するためです。代表例はパピ
ローマウイルス。ポリオーマウイルス、SV40など、宿主を変えると腫瘍を作るウ
イルスもいます。これらのウイルスの複製に関与する遺伝子はT抗原と呼ばれま
す。Tは腫瘍(tumor)の頭文字です。T抗原が宿主の DNA合成に干渉するメカニ
ズムの研究から腫瘍抑制遺伝子が同定されました。
+++ たくさんの遺伝子を持つ大型DNAウイルス +++
RNAウイルスは最大でも10個程度の遺伝子しか持ちませんでした。DNAウイルスは
この程度の遺伝子数のウイルスはむしろ少なく、小型DNAウイルスは 2個と最小
限、大型DNAウイルスは数十個と大型化しています。大型DNAウイルスにはアデノ
ウイルス(遺伝子数30-40)、ヘルペスウイルス(遺伝子数90-120)、ポックス
ウイルス(遺伝子数120くらい)があります。
アデノウイルスは膜由来のエンベロープ(32、40を参照)を持たないウイルスで
は最大です。風邪、結膜炎、下痢を起こします。ウイルスの形は紙風船のような
正20面体。6角形(平面)と5角形(傘型)のパーツを組み上げてできています。
5角形のパーツからはアンテナのようなファイバータンパク質が伸びています。
自前のDNA合成酵素を持っていて、ゲノムを複製します。
ヘルペスウイルスは正二十面体のキャプシド(DNAを収めたタンパク質の容器)
の外側にエンベロープを持ち、エンベロープとキャプシドの間の空間(テグメン
ト)にも多くのタンパク質を抱えています。口唇ヘルペス、性器ヘルペス、帯状
疱疹、水痘など、皮膚に小さな水疱を作り、ひどくなると爛れます。感染後、健
康なときには神経節に潜み、体調が悪くなったりして免疫機能が衰えると活動が
活発になります。
ポックスウイルスはDNAウイルスに珍しく、伝染病を引き起こします。人間の
ポックスウイルスは天然痘です。全身感染し、体中に水痘を作ります。致死率が
高く、人間社会では周期的に流行がありました。牛のポックスウイルスのマイル
ドな株をワクチンにして感染予防できます。ワクチンは乾燥させると室温でも長
期間保存できるので熱帯地方でも安価に提供できます。1958年より、WHOは世界
中でワクチン接種キャンペーンを行い、1980年には天然痘撲滅宣言を出しました。
+++ 大型DNAウイルスは遺伝子に余裕がある +++
大型DNAウイルスの遺伝子は2段階(アデノウイルス、ポックスウイルス)、3段
階(ヘルペスウイルス)で発現します。最初に発現する遺伝子は初期遺伝子で、
他の遺伝子の制御を行います。次に発現する遺伝子は核酸の材料を作ったり、
DNAの複製を行います。最後にウイルス粒子の材料を大量に作り、複製した DNA
を包んで細胞を破壊しながら外へ出て行きます。
これだけの活動であれば100個の遺伝子は必要ありません。DNAウイルスは宿主の
免疫系と戦う様々な遺伝子を持っています。次回はその話です。
◆◇ 森羅万象の系譜 ◆◇
39. 原人・・・驚異的な脳の発達
原人は大きく分けて2種類存在する。華奢なタイプ(ホモ属)と頑丈なタイプ
(パラントロプス属)である。猿人は250万年前頃にパラントロプス属が現れた
時期を境に、化石から姿を消している。
パラントロプス属はホモ属に比べて体が大きく、硬い臼歯を持っていた。また、
頬の骨が発達しているので顎の力が強かったと思われる。繊維質の多い硬い植物
を摂取するのに有利であった。パラントロプス属は、ほぼ同時期に出現したホモ
属としばらく共存していたが、約100万年前に絶滅した。
パラントロプス・ロブストスと呼ばれる原人の頭の化石は南アフリカの
Swartkransの洞窟で見つかる。この洞窟には180-120万年前の動物の骨も見つか
る。この洞窟は肉食動物の棲家であって捕らえられた獲物が引き込まれ食べられ
た。頑丈な頭をもつ原人は硬い部分が食べ残され、たくさんの頭化石が蓄積した
と考えられている。
現在のヒトの系統であるホモ属が出現したのは約200万年前と考えられる。最も
古い原人の化石は220万年前の地層から発見された。ホモ属は現代人と体躯が同
じ大きさにまで発達した。未熟なまま子供を出産し、出産後も脳が発達するとい
う二次的晩熟性を示した。さらに、原人たちは加工された打製石器を使い、火を
利用した後を残している。
原人の特徴は著しい脳の大型化である。脳の大型化は200- 100万年前あたりで加
速した。大型になるための直接的な遺伝子の変化は単純だったろう。マカク類と
ヒトの脳の大きさの違いは10倍であるが、脳の発生学過程から見ると、前駆細胞
の分裂期間が3日長くなるだけである。他の哺乳類に比べると神経接続の数が多
く、それが大きな脳を形成している。
大型化した脳は大量のエネルギーを必要とする。ヒトの脳の発達は他の哺乳類に
比べて遅い。体の成熟も遅くなっている。エネルギー消費量の多い脳を発達させ
るために体の成長が犠牲になったという説がある。肉食をするようになって脳の
拡大が起こったとは考えにくい。肉食動物は必ずしも脳が大きくないからだ。図
らずも大きな脳を抱えてしまったために何でも食べ始めたと考えたほうがよいか
もしれない。火を使うことで消化のよい食物を手に入れた。内臓が使うエネル
ギーを脳にまわせるようになった。
子供の成熟に時間がかかるようになると、子供の教育が男女の共同作業となり、
原人の時代に男女の絆が固定されたのではないか。もう少し拡大解釈すると、子
供の教育はその集団の共同作業として重要性を増した。類人猿に見られるように
男たちがセックスを巡って常に争うことがなくなり、セックスが私有化され、集
団の協力体制を高めたかもしれない。
学習などで起こった行動の変化が好ましい場合、その変化を支持するような遺伝
子の変化を選抜する自然選択が起こる。すなわち、行動や知識から遺伝子の変化
の方向付けが起こる。原人以降、新しい文化が進化を推し進め始めた。
原人は皮膚が黒くなった。メラニン色素の割合をコントロールするメラノコルチ
ン受容体遺伝子について、サイレント変異を用いた遺伝子時計を調べると現在の
黒人のメラノコルチン遺伝子は120万年前に固定された。この年代はこの遺伝子
変異が人類(ホモ属原人)全体に拡散した時代と考えられる。黒い皮膚の色が選
択されたのは現代の人類のように体毛が薄くなったためだろうか。
アフリカで誕生した原人は、氷期-間氷期のサイクルを生き延びた。原人がアフ
リカ大陸を離れたのは約100万年前と考えられている。天敵であった肉食動物の
脅威を受けなくなった原人は海岸沿い、河川沿いに棲息領域を広げ、アフリカ大
陸全土、ユーラシア大陸の南側、西は地中海沿岸から東は中国、ジャワ島まで分
布するようになった。地域によってさらに種分化が進んだ。直立原人は北京や
ジャワ島で発見されている。
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2008/8/2 発行
発行人 岩田
HP: http://eco-evo.hp.infoseek.co.jp
ご意見・お問い合わせ: a6iwata@infoseek.jp
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