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シカゴ発 映画の精神医学


2008.05.14

映画の精神医学 「フィクサー」の精神病理 ギャンブル依存症の恐怖


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      映画の精神医学
       
●第271号● 2008年5月14日発行 ● 発行部数 :49,549部
 
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    【 目 次 】
■1 はじめに
■2 樺沢紫苑講演会に無料ご招待します
■3 最新映画批評 「フィクサー」 
■4 精神医学の目  
    自分を手助けしてくれる人は誰もいません
■巻末 「フィクサー」ネタバレ考察
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■1 はじめに
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 今月創刊したばかりの私の新メルマガ「映画の心理学」ですが、
おかげさまで「まぐまぐプムレミアム」の「エンタテイメント」部門で、
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「映画の心理学」というわけです。

 登録してくださったみなさん、本当にありがとうございます。


 早くも、「まぐまぐプムレミアム」を代表する、人気メルマガの
一つになることができました!!

 そして明日、いよいよ「映画の心理学」第2号が出ます!!


 明日の「映画の心理学」の内容は、「羊たちの沈黙」の第2回ということで、
「羊たちの沈黙」の核心部分である、クラリスの告白「子羊の悲鳴」
について解釈します。
 
 要するに、この告白内容がクラリスの「性的虐待」を意味するのか
どうかということを検討しますが、意外な結論に到達しました。

 この考察を通して、「トラウマ」や「PTSD」、
「虐待の心理」について学びます。

 また、「羊たちの沈黙」の続編「ハンニバル」から、
ビジネス・教育・恋愛に効く心理テクニックを紹介したいと思います。

 「映画の心理学」第2号は、明日の19時発行です。

 タイムリーに読みたい方は、明日19時までに登録してください。
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 有料メルマガですけども、登録初月(5月分)は
無料で読むことができます。


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■2 樺沢紫苑講演会に無料ご招待します
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 樺沢が新創刊しました、心理学&精神医学を楽しく勉強するメルマガ
「映画の心理学」。

 この創刊を記念しまして、【「映画の心理学」講演会】を開催します。

■日時 2008年6月28日(土) 14:00〜16:00まで

■場所 東京・渋谷

■講演会タイトル 「シカゴと映画と精神医学」

■講演会内容 

 シカゴを舞台にした映画「ブルース・ブラザーズ」「逃亡者」
「シカゴ」などを題材に、シカゴ在住者でないと絶対にわからない
マニアックな視点で解説します。 

 さらには、樺沢がシカゴで実際に会ったデビッド・リンチ監督、
ガンダムの富野監督。あるいは、本人を見に行ったジェニファー・ハドソンや
ダスティン・ホフマンの話などを樺沢が実際に撮影した写真100枚以上と
動画を閲覧しながら、映画とシカゴ、そして「アメリカ文化」について
学んでいく楽しい講演会になるはずです。

 海外生活を通して気がついた、樺沢の発見。

 「ビジネス」「教育・子育て」「恋愛」に役立つ、
心理学テクニックも、あわせて紹介します。

 特に、あなたの見えざる可能性を引き出す発想法
「ブラインド・チョイス」。

 「ブラインド・チョイス」のテクニックを身につけると、
あなたの将来の可能性が、何倍にも広がります。


■参加条件

 この講演会は、「映画の心理学」を5月と6月の2ケ月間、
継続購読された方を無料で招待します。

 講演会の参加を希望する方は、
今すぐ、「映画の心理学」に登録してください。
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■定員 

 講演会の定員は、50名です。

 現在、すでに26名の参加申し込みを受け付けております。
 残席24名しかありませんので、お急ぎください。

 満席となりしだい、締め切らせていただきます。


■参加申し込みは・・・

 「映画の心理学」第2号配信は明日5月15日です。

 その翌日、5月16日に、「映画の心理学」の購読者全員に
講演会参加申し込みについての連絡メールを差し上げます。
 したがいまして、無料講演会への参加を希望する方は、
5月15日までに、ご登録をお願いします。


■参加できない人は・・・

 遠方で講演会に参加できない人のために、
「映画の心理学」を2ケ月間継続購読された方全員に、
講演会の音声ファイルと講演資料を差し上げます。

 通常、樺沢紫苑のビジネス・セミナーは、参加費2万円いただいています。

 今回の講演会は、「映画の心理学」の購読者は無料で参加できますので、
たいへんお得です。


「映画の心理学」を購読して樺沢無料講演会に参加しよう!!
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■3 最新映画批評
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┌──────┐
  フィクサー    4月12日公開
└──────┘ 

 ジョージ・クルーニー主演の「フィクサー」。
 「映画の精神医学」的には、傑作である。

 ネットでいろいろと批評読んでいたが、あまり評価がかんばしくない。
 私も、「どす黒い法律もの」という印象があったので、見るのが後回しに
なってしまったが、超硬派、本格的な社会派映画として完成されている。

 最初から最後まで張りつめた緊迫感がスクリーンを支配し、
ラストシーンまで目が離せない。

 NYの大手一流弁護士事務所に勤めるマイケル・クレイトン
(ジョージ・クルーニー)の専門は、不始末をもみ消すこと。
 通称、フィクサーと呼ばれる。
 彼がそんな仕事に嫌気が差していたとき、大規模集団訴訟を担当中の
同僚弁護士アーサーが、依頼人の農薬会社を裏切る行動に出る。
 マイケルは事態の収拾に乗り出すが、アーサーは訴訟を覆す恐るべき秘密を
握っていた・・・。


 弁護士や医者とといえば、人気職業の代表格である。
 給料も高くて社会的なステイタスも高い。
 でもその実情は・・・。
 
 多忙な毎日で自由時間もほとんどなく、押しつぶされんばかりの
過剰なストレス。
 いくら給料が高くても、割に合わない職業である。

 「フィクサー」は、弁護士という人気職業の裏側を描き出すが、
私も人気職業の「医者」の裏側を知っているだけに、
「そうだろうなあ・・・」と大いに共感した。

 私は非常に完成度の高い映画だと感じたが、
「おもしろい映画」ではない。

 法廷闘争の暗部、弁護士という職業の影の部分にスポットを当てて
いるので、非常に「重苦しい作品」に仕上がっている。
 この辺が、この映画の好き嫌いを真っ二つにわけているのだろう。

 農薬会社の法務部本部長カレン・クラウダを演じるティルダ・スウィントン。
 この役で、彼女はアカデミー助演女優賞を受賞した。
 劇中での登場時間は、それほど長くはないのだが、
強烈な印象と存在感である。

 一方、最初から最後まで、ほとんど出ずっぱりのジョージ・クルーニー。
 彼の存在感と演技力も光るが、これでアカデミー主演男優賞を
とれなかったのは、本当に残念。

 「アビエイター」におけるディカプリオのようなもの。
 「フィクサー」は、、クルーニーにとって代表作の一つになる
だろうが、これだけの演技でオスカーをとれないのなら、
今後も厳しいと言わざるを得ない。

 「フィクサー」における最大の見所は、あまりの忙しさと精神的な
ストレスでつぶされる寸前の二人の弁護士の心理描写である。

 薬害訴訟の担当弁護士であり、躁うつ病にかかり、異常な行動で
周囲に迷惑をかけるアーサー。

 彼は典型的な「躁状態」である。
 彼が依頼人を裏切る行動に出たのは、「正義感」が根底にあるが、
それを突き動かしたのは、「躁状態」の病的エネルギーだろう。

 そして、法廷担当に移りたいという希望を無視されつづけ、
「もみ消し屋(フィクサー)」という、弁護士業界の「掃除屋」を
不本意に続けるマイケル。

 マイケルは、ずばり、ギャンブル依存症である。
 借金をしてまでギャンブルをする彼は、単なる「ギャンブル好き」では
なく、もはや「病気」なのである。

 彼を「病気」とみないと、この映画の本当の姿は見えてこない。
 ラスト・シーンに対するネタバレ考察を当メルマガの巻末につけて
おいたので、映画を見た人だけご覧ください。

 「フィクサー」は、こうした心を病んだ人物の心理を理解しないと
ちっともおもしろくないのだが、「躁うつ病」や「ギャンブル依存」という
病気についての知識を常識として持っているアメリカ人と異なり、
日本人にはわかりづらい作品になっている。

 社会派映画好きには圧倒的にお勧めするが、純粋に「娯楽」を
期待する人は、残念ながら楽しめないだろう。

樺沢の評価  ★★★★☆
 (★★★★★が満点。☆は、★の半分)


─────────────────────────────────
■4 精神医学の目   
─────────────────────────────────
┌───────────────────┐
 自分を手助けしてくれる人は誰もいません
└───────────────────┘

 読者のから、前号の「千と千尋」の記事に関する感想を
いただきましたので、ご紹介します。

=================ココカラ=================

 こんにちは。時々メルマガを拝見しております。
 今日は「千と千尋」の成長の話を読んで思ったことを伝えたくなりました。

 私はこういう成長物語を見ると、癒されるというよりは
 羨ましくて嫉妬に似た気持ちになります。

 千尋にハクの最初の褒め言葉がなかったらどうだったのか。
 その後の厳しいながらも千尋を成長させる環境がなかったら
どうだったのか。それがあったから千尋は成長したわけで、
結果千尋は自立した人となり、他人らも尊敬される人となった。
 
 スピリチュアルな世界だと、思いが現実化するということですが、
千尋が成長したくてそういう環境を下さいと望んでいたから
こうなったというよりは、偶然千尋にそういうチャンスが与えられた、
という風に私には見えます。

 世の中には、成長や教育、ポジティブ・フィードバックが得られた
人と得られなかった人がいて、それでも大人になったら自己責任で
社会でやっていかなくてはなりません。

 私自身が、そういった機会がないままずっと来ていて、
成長も変革もできないままでいることが消化できず、
千と千尋を見ていても妬ましい気持ちを抱きます。

 少年犯罪の報道を見ると、私はいつも犯罪者の人をかわいそうだと
思ってしまいます。その人には成長する、教育される機会が与えられて
いたのだろうか。

 先日は曲にライオンキングの映像に「you raise me up」が流れてくる
のを見て、この子にはこん指導者がいてくれるのに、どうしていない人
もいるんだろうと思い泣いてしまいました。

 といったようなことを思いました。
 愚痴を吐いたみたいで少しすっきりしました。
 ありがとうございました。

=================ココマデ=================

 意義深いメールありがとうございます。

 千尋のように、良き支援者がいて、良きアドバイスをしてくれる人は、
非常にラッキーである。

 でも、支援者に恵まれず、誰も助言してくれない人は、
アンラッキーでそういう人は一体どうしたらのいいの?

 という質問というか、意見として私は理解しました。

 これに関しては、私は一つの明快な意見を持っています。

 患者さんと接していますと、

「自分を助けてくれる人は誰もいない」
「自分を気にかけている人は誰もいない」
「自分のことを心配してくれる人は誰もいない」

とおっしゃる方が、たくさんいます。


 しかし、そういう方の家族はどんなに冷たくて冷酷な人なのだろう、
と病院に呼んで、実際に会ってみると、
自分の予想とは180度反対で、
その家族の方は、非常に親身で熱心で、患者さんのことを
非常に心配されていたりするので驚かされます。

「自分を助けてくれる人は誰もいない」
「自分を気にかけている人は誰もいない」
「自分のことを心配してくれる人は誰もいない」

 これは、全て「主観」です。

 自分が、「助けてくれる人は誰もいない」と思っているだけで、
本当に「助けてくれる人は誰もいない」のかどうかは、別なのです。

 というか、実際は、
「助けようとしてくれる人」
「気にかけている人」
「心配してくれている人」が自分の周りにたくさんいるはずです。

 たくさんでないとしても、1人か、2人くらいはいるはずです。

 これが、「ネガティブ思考」に支配されてしまうとと、
そういう支援者が周りにいても、全く気付かないのです。

 親切で助言や援助をしているのに、
「下心があるんじゃないか」とか「ありがた迷惑だ」とか
せっかくの好意を否定的な考えで退けてしまっている
場合が多いと思います。


 例えば、患者さんに
「●●●した方がいいですよ」
「●●●するのはやめた方がいいですよ」と
親身にアドバイスしても、
全く受け入れてもらえません。

 こちらは、職業ではありますが、よかれと思って
アドバイスしているのに、全く受け入れてもらえない。

 むしろ、「俺には精神科なんか関係ネー」という感じで、
迷惑がる人も多いです。

 そして、不思議なことに、
私が「しない方がいいですよ」という方向に
ドンドンと進んでいってしまいます。

 援助の手を差し伸べても、あっけなく切られてしまいます。

 そういう患者さんを、実にたくさんみます。
 なぜ、あえて不幸になる道を進むのか・・・不思議なくらいです。

「自分は不幸だ」
「自分は孤独だ」と思えば思うほど、
周囲から差しのべられている援助の手。
 あるいは、周囲の人たちの思いやりや親切心からの助言を
見逃してしまうのです。


 おそらくは、幼少期の親子関係や交友関係などが深く関係して
いると思います。
 「素直に人を信じられない」何か、があるのでしょう。
 
 何でも懐疑的になってしまう。
 何でも否定的になってしまう、という思考パータンが
幼少時からの親子関係や交友関係などの環境因子によって
自然と出来上がっているのでしょうから、
そういう意味で不幸というか
不運であることは間違いありません。


 犯罪者の手記などを読むと、
「今まで自分は無視され続けてきた」
「誰にも相手にされない青春時代を送った」
「今まで人に愛されたことがない」
といったネガティブな自己イメージのオンパレードです。

 私は、本人がそう思っているだけで、実際は違うのではないかと
と思うのです。
 少なくとも私が今までみてきた患者さんたちは、全てそうでしたから。
 
 愛情や友情や好意をかけられても、それに気付けないとしたら・・・。

 確かに最悪の人生です。
 暗いい人生です。
 犯罪に走るのもわからないではない。

 でも、それは「自己イメージ」であって、
「実際にはそうではない」はずです。


 考え方を切り替えただけで、自分の周りに自分に
好意を持っている人は、1人か2人くらいは見つかります。

 必ず見つかります。
 援助の手を差し伸べている人も、最低でも1人はいるはずです。

 いなければ、いるまで探してください。

 本当にいないならば、あなたから先に、人を好きになりましょう。
 あなたから先に、援助の手や、好意の手を差し出しましょう。

 「受けとろう」「受けとろう」と思っている人には、
誰も手を差し出してくれない可能性も、なくはありません。

 ですから、考え方を切り替えて、まずあなたから
手を差し出しましょう。

 そうしていけば、必ずあなたに好意の手をのばしてくれる
人は現れるはずです。

 「自分のいる不幸な現実は変えられない」
 「なんて自分は不幸なんだ」と思っている人は、たくさんいるでしょうが
考え方を切り替えれば、瞬時に現実は変化します。

 「マトリックス」のようなもので、ちょっとした「気付き」で
見えないものが見えるようになるのです。

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「フィクサー」のネタバレ考察

============================================
 ラストシーンについて全てネタバレしていますので、
映画をまだ見ていない方は、読まないでください。
============================================

 マイケルは、いろいろと苦労して、7万5千ドルを返済します。
 8万ドルを手に入れたマイケルは、5千ドルの現金を得たはずですが、
そのキャッシュを持って、彼はまたギャンブルへ出かけます。

 「バカじゃないか?」と思うかもしれませんが、これは病気です。

 「ギャンブル依存症」という病気なのです。

 日本で、サラ金からお金を借りてまでパチンコをする人がたくさん
いますが、それと同様に「ギャンブル依存症(病的賭博)」なのです。

 「ギャンブル依存症」は、「勝つ」ことを目的としません。
 ギャンブル中の異様な高揚感に対する中毒です。

 お酒を飲んだ時の「気持ちよさ」。
 覚せい剤を使った時の「気持ちよさ」が、中毒を招くように、
ギャンブルも中毒になって、やめたくてもやめられなくなります。

 この「ギャンブル依存症」の心理が重要です。
 
 命を狙われたマイケルは、最後の勝負に出ます。

 農薬会社の法務担当者カレンとの一騎打ちです。

 マイケルには、警察と結託して、おとり捜査を行いますが、
交渉によって500万ドルを自分の懐に入れることもできたでしょう。

 なにしろ百戦錬磨のフィクサーなのですから。

 しかし、彼は「正義」を選びました。
 あるいは、彼の友人アーサーに対する「友情」や「無念」が
マイケルを動かしたのかもしれません。


 しかし、本当にそうでしょうか?

 もし「正義」が動機なのであれば、カレンやドンが逮捕されて
めでたしめでたしのはずです。
 マイケルは笑顔の一つを浮かべてもいいでしょう。

 マイケルの思惑どおりに全て進んだはずなのに、
マイケルの表情は、非常に重苦しいのです。
 ありえないほど。

 そのままタクシーに乗り込みますが、マイケルの重苦しい表情を、
カメラは映し続けます。

 その理由は、説明されています。
 マイケルの会社の合併話は消滅。
 今回の事件の不祥事もありますから、会社は破たんし、
マイケルはクビになるでしょう。
 その意味では「負け」です。

 だから「重苦しい表情」をしていたと考えられるのですが、
私はそれだけではないと思います。

 では、マイケルは、「負け」とわかっている勝負に
なぜのぞんだのでしょうか?

 「正義」ですか?

 私は、「ギャンブル依存症」だから・・・だと思います。

 これこそが、「ギャンブル依存症」者の性(さが)です。

 カレンと対決しているときのマイケルの表情は、
実に生き生きとしています。

 1000万ドルをめぐる攻防。

 マイケルにとってこれは、1000万ドルを賭けたギャンブル
だったのです。

 勝つか負けるかというギャンブルの高揚感を、
マイケルはこの瞬間に間違いなく味わったに違いありません。

 ラストのタクシーでのマイケルの表情は、
「有り金すべてをギャンブルですってしまったときの表情」に
見えます。
 
 現在の職業。
 今までの経歴、全てを失ってしまった。

 でも、「負け」とわかっていても、その勝負をしないわけには
いかないのです。

 そして、彼は「ギャンブル依存症」から全く逃れられていない。
 この先も、ギャンブルから逃れられないことを自分で自覚しながら
どうしょうもない自分。
 そんな自分に対する猛烈な自己嫌悪が、タクシー内での
彼の暗い表情の真意ではないでしょうか?

 「ギャンブル依存症」という事実が、
ラストの茫然自失の表情に全く別な意味を与えるのです。

 犯人逮捕というハッピーエンドでありながら、
完全にアンハッピーな不思議なラストシーンになっています。

 映画史に残る重苦しいエンディングといっていいのでは
ないでしょうか。

 (終)


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