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2006.11.30

白保メール No.86 新石垣空港起工式が終わって


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                             //転載歓迎//


 <新石垣空港起工式が終わって>             鷲尾 雅久

 10月20日、新石垣空港の起工式が行われました。建設予定地に大型のテントを張り
400人の人を集めるという大掛かりなもので、夜はホテルでさらに大規模な祝賀会ま
で開かれたそうです。しかし、このことは昨年末の空港設置許可のときと同様、本土
ではほとんど報道されなかったようです。400億円近い国費の投じられる事業が、他
の地域の人々の知らない間に進められようとしています。
 設置許可後ここに至るまでの動きをご報告します。

[06年度予算と用地買収]

 今年度(2006年度)の新石垣空港関係予算は、国庫補助事業54億4千万円余(補助
率9割)、県単独事業16億7千万円余、合計で71億1千万円余が計上されました。前
年度は合計で5億5千万円ほどでしたから、10倍以上の大幅な伸びです。今年度予算
の内訳は、大半が用地取得費で、この他試験盛土の経費、モニタリング調査費などが
含まれます。
 沖縄県は、2006年度と2007年度の二年度で全用地の取得を終える計画で、2006年度
中に9割の取得を目指す方針も示しました。

 その後、用地の大きな部分を占めるゴルフ場(石垣島ゴルフ倶楽部)の買収は終わ
り、すでに県に引き渡されたようです。
 一方、地元白保集落の地主達は、「新石垣空港整備事業用地地主会」を結成し県と
交渉してきました。低い金額が提示され、代替地も地主達の希望に沿うものではない
ため、交渉は難航し、地主会は、抗議のため起工式をボイコットしたとのことです。
農地の買収価格について県は、第5回位置選定委員会(2000年2月14日)で「概ね1
万円/坪」と言明していました。金額の当否はともかく、今回はこれよりかなり低い
金額を提示しているようですから、地主の同意が得られないのも無理からぬことです。

 県の説明では、事業用地面積約195ヘクタールに対し、11月下旬での取得面積98.6
ヘクタール、これに取得が確実な国、県、市などの公有地24.2ヘクタールを加えると
122.8ヘクタール、取得率63%とのことです。ゴルフ場の買収面積78.1ヘクタールを
差し引くと、この他に実際に取得した面積は20ヘクタール程度に過ぎません。しばら
く前に県は、起工式までに用地の70%の取得をしたいと言っていましたが、その目論
見どおりには進んでいないようです。
 土地造成工事は、赤土流出を避けるため海側から順次行うものとされており、2007
年度は概ね平行誘導路とそこから海側の部分で行う予定となっています。しかし、こ
の部分には、白保の方々の農地が多く含まれます。来年度工事予定箇所の用地買収も
終わっていないものと思われます。

[三つの委員会]

 9月から10月初めにかけて、ひと月あまりの間に、新石垣空港関係の三つの委員会
が相次いで発足しました。
 9月5日発足した小型コウモリ類検討委員会は、まぎらわしいことに、同名の委員
会を引き継ぐものです。モニタリング調査や人口洞の設置、餌場・移動経路としての
緑地の確保などを検討することとされています。建設工法検討モニタリング委員会は、
建設工法検討委員会と同じメンバーで10月2日発足し、赤土等流出防止対策と地下水
保全対策、それに際してのモニタリングについて検討することとされています。事後
調査委員会は、環境検討委員会を改組して10月10日発足し、モニタリング調査を踏ま
え、環境影響の回避・提言措置について検討することとされています。

 いずれも、環境影響評価書で宿題とされたことを扱うものですが、今回の環境影響
評価では脱落した議論があります。それについては触れられぬまま、細部の「仕上げ」
だけが目指されているように見えます。
 特に気になるのは、小型コウモリ類に関連する問題です。県やマスコミの関心は、
小型コウモリ類の保護だけに集中しているようですが、今回の環境影響評価で小型コ
ウモリ類が取り上げられたのは、洞窟という特殊な環境または生態系における注目種、
代表選手としてでした。評価書においても、そのことは途中で忘れられ、工事により
洞窟内環境がどう変化するのか、洞窟の他の生物はどうなるのかは、明らかにされま
せんでした。まして、洞窟という特殊な環境をこの島の中でどう位置づけ保全するの
か、示されることはありませんでした。
 個別事業の環境影響評価とは言え、実施主体は、この地域の環境行政に責任を持つ
沖縄県です。この島固有の自然、生態系をどう保全していくかという基本的な考え方
を持って、事業に当たってほしいと思います。

[工事先行]

 起工式は終わりましたが、今年度の工事予定は、「空港本体盛土に使用する機械の
選定、土工事に用いる諸数値を求める」ための小規模な試験盛土工事の他、ビオトー
プ整備工事、小型コウモリ類のための人工洞設置工事と採餌場・移動経路の植栽工事
です。実質的な本体工事は、来年度始められる予定です。その上来年度工事箇所の買
収も進んでいない状況で、なぜ今起工式を行う必要があったのでしょうか。事業が進
んでいることを予算当局などにアピールするのが眼目なのかもしれません。ひと月あ
まりの間にあわただしく三つの委員会が発足したのも同じ理由なのでしょうか。

 起工式に際しては、相変わらず、「新空港により観光客の飛躍的な増加が期待でき
る」といった声が聞かれました。ひところ全国各地で空港の新設が相次ぎましたが、
当初の計画通りの利用者数のあるところは数少ないようです。新石垣空港の場合は、
今ある空港の移転ですから、現状程度の利用者は確保できるとしても、それ以上に利
用者が見込まれるかどうかは不明です。
 新空港はキャパシティ、うつわの拡大でしかありません。それをどう利用するか、
例えばどのような観光を目指すか、どのような産品の出荷を目指すかを予め考えるの
でなければ、新空港もせいぜい「宝の持ち腐れ」に終わるでしょう。どうやら、そう
した地道な作業が欠けたまま、事業ばかりが進んでいるようです。

 今に至り、市街地と新空港を結ぶアクセス道路が空港完成に間に合わない可能性が
大きくなってきました。ルートの選定委員会を作ったものの、隣接する二つの集落が
相容れない案を主張し、論議は棚上げとなっていました。最近県は、区間を区切って
着工するが全面供用開始は新空港の供用開始後になる、と言っています。
 しかし、そうすると、新空港の利用者は、市街地から十数キロメートル(現空港へ
は3キロメートル)もの距離を移動しなければなりません。また、多くの車が三つの
集落内の往復二車線の道を通過することになり、住民にも迷惑です。と言って裏道を
通っても、問題が生じるでしょう。

 こういった、ちぐはぐな面を残したまま、新石垣空港事業は進められようとしてい
ます。

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白保メール NO.86  06.11.30
発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
      shiraho@estate.ocn.ne.jp


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