2007.02.16
白保メール No.88 この夏に白保海中公園が誕生する
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//転載歓迎//
<この夏に白保海中公園が誕生する> 農民 小林 孝
[これまで水面下に沈降していた白保の海中公園計画]
いわゆる白保のサンゴ礁の海を海中公園にしようという動きは、随分以前からあり
ました。最初にこの計画の存在を知らされてから、もう10年になるでしょうか。
しかし、いつの間にやら立ち消え状態になっていました。国立公園を管轄する環境
省の担当官からは、その理由を伺うことができません。私たちには知らせたくない政
治的な背景があるのでしょう。私の憶測を述べれば、これまた新石垣空港問題がから
んでいることが容易に想像できます。
新石垣空港建設予定地がカラ岳陸上に決まりそうな時に、石垣島の東海岸に海中公
園を設定することは、国の事業として整合性に欠けてしまいます。だから、新空港の
建設場所が不動のものになるまで、白保海域の海中公園地区指定に誰かが「待った」
を掛けたに違いないとにらんでいます。そして、新空港予定地が決まった今、この計
画が再び動き始めたということなのでしょう。
白保のサンゴ礁の海(陸域も同様ですが)にとって予測不可能な脅威を及ぼす計画
を優先させ、その後にその海域を保全するための計画が再び動き始めたというわけで
す。新石垣空港計画の矛盾は、こうした面にも及んでいます。
[海中公園とは何か]
海中公園とは何か、なるべく簡潔な表現での説明を試みてみましょう。
私たちが認識している国立公園が陸域のものであるのに対し、海中公園は海域を対
象にした国立公園だと理解できます。陸域での国立公園が、その地域の重要度に応じ
て、それが高い方から順に、特別保護地区、第1種特別地域、第2種特別地域、第3
種特別地域、その下に普通地域が設定されています。海域の場合は、重要度が最も高
い海中公園地区と、その下位に設定される普通地域の2種類があります。
そして「海中景観の保護と利用を図る」ことを目的として、「熱帯魚、サンゴその
他の生物や海底地形が特にすぐれている地区」が海中公園に指定されるのです。
さらに詳しく「海中公園地区の選定要件」を環境省からの配布資料から引用してご
説明しましょう。
・周辺の陸域、海域がともに国立公園等の区域として指定されており、かつ陸域の自
然保護が十分図れる場所。
・海底地形に特色があり、海中動植物が豊富であること。
・海水が清澄(せいちょう)であり、河川等により汚濁されるおそれが少ない。
・水深はおよそ20m以浅を標準にする。
・潮流および波浪があまり激しくない。
・桟橋、休憩所、自然教室、駐車場等の陸上関連施設を設ける土地が周辺にある。
・漁業との調整が可能であり、特に海中景観の保護について地元漁業関係者の協力が
得られること。
・その他各種産業開発による景観破壊のおそれが少ないこと。
とされています。
海中公園に指定されるとどういう制限が設けられるかは、以下の通り。
・工作物を新築し、改築し、または増築すること。
・鉱物を掘採し、または土石を採取すること。
・広告物等を掲出、設置し、または工作物等に表示すること。
・海底の形状を変更すること。
・物を係留すること。
(☆以上の5項目について、漁業を行うために必要な行為は除く。)
・熱帯魚、サンゴ、海そう(海草、海藻類:筆者注)等で環境大臣が農林水産大臣の
同意を得て指定する動植物を捕獲、殺傷、採取、損傷すること(漁業対象種は含ま
ない)。
・海面を埋め立て、または干拓すること。
・汚水または排水を排水設備を設けて排出すること。
ということです。
この他にも、自然公園法ではいろいろと定められていますが、それらについてはネ
ットで環境省のホームページを訪ねるなどしてみてください。
今回の石垣島周辺海域での海中公園地区の指定は、白保海域だけではなく、平久保、
米原、川平石崎も対象にされています。これらは、西表国立公園内に編入され、ひと
つの国立公園内の海中公園として同列に扱われるということです。これまで西表国立
公園内に設定されていた海中公園は、石西礁湖内の4箇所、タキドングチ(竹富島北
西方)、シモビシ(竹富島南西方)、キャングチ(黒島東方)、マイビシ(新城島北
方)の、それも局地的なものでしかありませんでした。新たな海中公園の総面積は
1106.5ヘクタールに及びます。これで西表国立公園内の海中公園は、日本最大規模に
なります。
[石垣島の陸域も国立公園に指定される]
さらに2007年2月8日の八重山毎日新聞の記事では、今回の西表国立公園の見直し
は、上記の海中公園だけではなく、石垣島の陸域にも及びます。代表的な予定地域は、
平久保半島・伊原間、玉取崎・野底岳・吹通川、於茂登岳、米原海岸・川平湾、屋良
部半島、名蔵アンパルで、面積は7022ヘクタールです。これは石垣島の面積の31%に
及ぶそうです。
環境省はこれから、市民を対象にした説明会を行い、パブリックコメントを募集し、
関係機関との協議を経て、中央環境審議会から答申を得られれば、今年夏を目処に公
園を指定するということです。
なぜこれほどの大規模な国立公園化(西表国立公園への編入)がなされるのかとい
えば、環境省は「石垣島の社会情勢は大きく変化しつつあり、優れた自然環境の保護
と適切な利用を進めていくことが必要」だと説明しています。つまり、それだけ今の
石垣島は危機的な自然環境の破壊が進行しているということでありましょう。
[白保の海中公園化についての住民の反応]
昨年(2006年)の5月25日には、環境省の担当官による白保集落への説明会が行
われました。対象は、白保公民館の審議委員、執行部役員、白保魚湧く海保全協議会
の会員で、全住民ではありませんでしたが、先ずは白保の代表者たちへ、海中公園に
ついての勉強会のようなものが行われました。また同年6月には、白保のウミンチュ
(漁業者)を対象にした、環境省担当官からの、捕獲を制限する魚種を決めるための
聞き取りが行われました。
5月25日の白保での説明会では、集落の東の海が海中公園に指定されることに賛
同する意見が大半を占めましたが、環境省への要望として、(1)指定範囲をもっと広
げるべき、(2)海域だけではなく、指定海域に隣接する陸域も開発を制限する場所と
して指定せよ、という声が強く上がりました。
(1)については、最初の予定地域の南端が、白保の海の代表的な地形のひとつであ
る「クシキヌワタンジ(集落の北東方向にある。ワタンジとは、干潮時には浜からリ
ーフまで干出する海中の廊下のような地形のこと)」の半ばに設定されていたことへ
の不満でした。どうせなら「ワタンジ」をすっかり指定区域内に入れたらどうか。そ
うすれば、このワタンジのリーフ外洋側にあるブーグチ(リーフがくびれて小規模な
入り江状になっている。ブーグチとは大きな口の意味)も含まれるし、付近の好漁場
も保全される、というわけです。
(2)は、現在石垣島のあちこちの海岸線が住宅やホテルの建設のために乱開発され
ていることへの白保住民の不安の現れです。同じような状況が白保の海岸では起こっ
て欲しくはない、だから陸域も出来る限り国立公園の指定をかぶせて、海域陸域が連
続して保全されることを望んだのです。その要望はその後の計画図にきちんと反映さ
れました。
因みに白保海中公園の指定範囲は、轟川の河口から約500m南の東西の直線を北端
(新石垣空港予定地の南端の緯線=東西の線は2km前後しか離れていない)とし、南
端は集落の海岸線の半ば(WWFしらほサンゴ村に面した道路の延長上辺りか)を起
点に位置する東西の直線、それから海岸線と、リーフから外洋側の数百m(最大で
500m程度)沖合いに設けた南北の線に囲まれた地域が、予定地として示されていま
す。面積は約311.6haにも及びます。
また陸域は、海中公園の海岸線沿いに存在する海岸の保安林のほとんどが、国立公
園の第2種特別地域として指定されます。地図で見ると、陸域の国立公園の帯は予想
していたよりははるかに狭く、心許ない気もしますが、これで少なくとも海岸線の景
観が人工物で壊されることへのある程度の防御ができるものと解釈できます。
ウミンチュからの聞き取りでは、彼らが漁で捕獲する魚類は、捕獲禁止魚種のリス
トに載せないための調整がなされました。のちのち問題が発生するような可能性が極
力抑えられた調整ができたものと信じています。基本的には、観賞魚に類する魚はほ
とんどリストに残っています。ウミンチュの中には、「漁業資源の保全のためには、
もっと厳しくしたって良いぐらいのもの」という意見もありました。
[私自身の思い]
白保住民の多くは、海中公園地区指定を好ましく思い、ウミンチュにしても、大い
に支持するという姿勢を見せています。海中公園地区指定による環境保全への期待が
強いからだと思います。
「海中公園になどなったら、規制だらけで何もできなくなるよ」と訳知り顔で反対
を表明する方も中にはいらっしゃいますが、本当にそうでしょうか。
白保の自然・社会環境が、地元住民が望むように保全されるためには、謳われてい
る規制などはまだ緩いぐらいのものだと、私自身は思っています。陸域の、国立公園
には含まれない個人有地の改変などには規制が掛からない訳ですし、現在石垣市で制
定しようと作業が進められている「景観条例」にしても、法的な拘束力は弱いといわ
ざるを得ません。条例は一地方自治体の自主規制に過ぎませんから。
また環境省の担当官からは、海中公園に指定されたことにどういうメリットを付加
するのかは地域の創意工夫にあるという趣旨の言葉も聞いています。となれば、白保
公民館や「白保魚湧く海保全協議会」などが、白保海域の海中公園地区指定をうまく
利用する戦略を持たなければならないでしょう。「海中公園頼み」の姿勢では望むよ
うな状況を確保することは難しいわけで、白保は新たな課題を背負うことになったの
かもしれません。幸いにして、白保の人々は、これを機に安易な地域振興を図ること
など望んではいません。環境省にお願いしたいことは、その住民の意を汲んで、「海
中公園になった白保海域への入域人数が激増して、結局は海域の環境負荷が高まって
しまった」などという事態にならぬよう、国の機関としての力を発揮していただきた
いということです。世界遺産に登録された途端に観光客の入域が増加し、自然環境に
異常なほどの負荷がかかったという他の例があるので、その点が心配なのです。
もうひとつ、海中公園地区指定による明確なメリットを挙げておきましょう。映画
「ファインディング・ニモ」のメッセージをきちんと受け取ることができない人々が
大勢いらっしゃるようで、カクレクマノミをはじめとする鑑賞魚たちが、この海域で
乱獲され、結構良い値段で取り引きされているのが現実です。白保の海域では、彼ら
観賞魚たちがたくさん生息していますから、捕獲はたやすいのです。白保の住民では
ない人々が白保の海に入って、白保の一員であるいわゆる熱帯魚が、業者の手によっ
て捕獲されるという光景が展開されています。これは白保住民にとっては相当不愉快
な事態です。
熱帯魚の捕獲については、沖縄県知事の許可証が必要なのですが、この許可証は、
申請さえすればたやすく発行されるということですから、許可制の意味がほとんどあ
りません。
ところが海中公園になれば、県知事の許可証があっても、熱帯魚、サンゴ、海そう
等を捕獲することができなくなりますから、漁業対象種には該当しない「ニモ」たち
は拉致されることなく、白保の海で生活していけるというわけです。これは大きなメ
リットだと思います。
いずれにせよ、住民が望む環境保全の筋道が一応は構築されることになりました。
これまで何も保全の網が掛かっていなかった白保海域にとって、朗報だと捉えるべき
なのでしょう。
一方で、この原稿を作文している2月12日にも、白保の海をシュノーケルで体験
しようという観光客が多数お出でになっています。中にはシュノーケル体験が乏しい
にも関わらず、この類が無いほどの見事なサンゴ礁の海に入り込んで、海中環境に負
荷を与える人々もいらっしゃることでしょう。そういった人々に、白保海中公園の存
在価値、あるいは意味を知っていただくための活動が、新たに白保集落には課せられ
たと思います。白保住民の多くが、今の自然環境、集落での生活環境の変化を望まな
いのですから、そのための対応が更に求められることになります。それこそが、先述
したような「白保が背負う新たな課題」だと考えます。
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♪ 『白保メール』ホームページ
http://www1.ocn.ne.jp/~shiraho/
♪♪このメールマガジンは、『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発行
しています。
配信中止は、http://www.mag2.com/m/0000141189.htm でお願いします。
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白保メール NO.88 07.2.16
発行者 鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
shiraho@estate.ocn.ne.jp
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