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白保メール


2007.12.29

白保メール No.96 新石垣空港この1年


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   <新石垣空港 この1年>
                                             鷲尾 雅久

 新石垣空港の設置許可がされてから12月19日でちょうど2年、起工式が行われ
てからでも1年以上になります。新石垣空港のこの1年を振りかえってみました。

[土地収用手続きの開始]

 3月28日、土地収用法に基づく事業説明会が石垣市民会館大ホールで行われまし
た。1000人以上入る会場に傍聴者を含め参加者は90人ほど、空港整備事業の説明に
目新しいものはなく、法律で開くことが決められているから開いたというだけのもの
のようでした。用地交渉を始めて1年足らずの時点で土地収用手続きに入るのは、異
例です。沖縄県は、任意交渉も続けるとしましたが、そうだとすれば、収用するぞと
脅しをかけて交渉を有利に進めようとしていることを自ら認めたようなものです。
 その後、県は7月31日、国(沖縄総合事務局)に事業認定を申請し、9月29、
30日には那覇と石垣で公聴会が開かれました。
 静岡空港の例では、用地買収交渉を始めてから8年後に事業認定を申請しています
が、新石垣空港では1年半に満たない時点です。静岡空港の場合、収用の対象は全面
積の2%でしたが、新石垣空港は21%です。地権者数は、静岡空港が4人に対し、
新石垣空港は共有地を除いて62人です。今回はあまりに早い時期の認定申請だと言
えます。
 この時点での地権者は、共有地を除いて、相続等により増えて200人余り、その
うち140人ほど70%弱が契約済みであるに過ぎません。国土交通省の「適期申請
ルール」では、概ね権利者の数で80%契約済みとなった時点から準備をし、大体1
年かかって事業認定申請をすることとされているので、これからも外れています。
 買収価格、代替地提供の点で地権者の納得が得られず、交渉が進まないという実態
が一方にあり、他方で事業の終期は決められていることから、早目に土地収用をしよ
うということのようですが、常軌を逸したやり方と言わざるを得ません。

[4委員会の開催と新洞窟の発見]

 6月から7月にかけて、小型コウモリ類検討委員会、建設工法モニタリング委員会、
建設工法検討委員会、事後調査委員会と、4つの委員会が続けざまに開かれました。

 その中で「施工計画の変更」の説明がありましたが、浸透ゾーンに関するものは、
かなり大きな変更です。「詳細設計による形状の決定、現地での大型透水試験(直径
600mm)による透水係数の変更により、必要容量、有効水深の変更を行った。浸透ゾ
ーン3は、トムル層の水係数が低かったため、有効水深の増加のほか、透水性の高い
砂層に置き換えることにより対応した」とされています。特に、浸透ゾーン1では、
必要容量7,524立方メートルが13,197立方メートルへと75%増、有効水深0.4mが
0.6mへ5割増となっています。
 県は、環境影響評価で、濁水が発生しても「全量地下浸透」させるため、海域への
影響を考慮する必要はないとする「裏技」を使ったのですから、「全量地下浸透」に
ついての的確な予測評価がされなければ、この論理が崩壊することになるはずです。
実験をやり直す度に数字が変わるのでは、どれを信用すればいいのか分りません。

 また、空港南端部の外側に仮設調整池を設置する計画を、用地造成勾配の関係で分
割して設置することとし、「計画より広域となるので、浸透方式による濁水処理とし
た(濁水処理に要する費用を軽減した)」という説明もされました。
 評価書では機械処理したうえ轟川に放流することとなっていましたから、地下浸透
がどの程度可能かいうことと、その影響についての予測・評価が必要でしょう。さら
に、この部分の地下浸透については、前処理の有無が明確でありません。その他の地
域では、200mg/L以下にしてから地下浸透させることになっています。

 建設工法検討委員会は那覇で開かれたため傍聴できませんでしたが、新聞報道によ
ると「は滑走路の中心から75メートル以内の地下にある空洞保全に向けて対策を講じ
る必要性を県側が説明。空洞上部にアーチ型コンクリートなどを設置し、空洞を保全
する方針を示した」とのことです。以前は、空洞対策の必要はないとされていたはず
です。

 調査報告では、小型コウモリ類検討委員会で、2007年1月(冬眠期)にヤエヤマコ
キクガシラコウモリがC、D洞窟で大幅に減少したことが報告されました。同じ時期
カグラコウモリはC洞窟で大幅に増加、D洞窟洞で大幅に減少しています。この時期
両洞窟の近くでは掘削工事が行われていたとのことですが、事後調査委員会では、音
の影響を調べたがほとんど届いていないと説明されました。しかし、現に大きな変化
があったということは、何らかの影響があったとみて、原因を探る方が科学的態度で
はないでしょうか。人間の測定器とは別の感じ方をする動物がいても、不思議ではあ
りません。コウモリが感じることを理解しようとしない限り、せっかく作った人工洞
窟を彼らに使ってもらうことも難しいように思います。

 10月24日突然、県八重山支庁は、空港計画地内で新たな洞窟が見つかり、その
内部にヤエヤマコキクガシラコウモリ約70頭とカグラコウモリの糞を確認したと発
表しました。場所は計画地の北西側、浸透ゾーンの部分です。全長は約300メート
ルで、そのうち約95メートルが計画地に含まれます。高さ6〜7メートルのホール
も確認され、C洞窟とつながっている可能性もあるとのことです。県は周辺の作業を
一時中断し、小型コウモリの利用状況や洞窟の構造について調査を続けて、来年3月
までに、洞窟の保全策をまとめたいとしています。
 なぜ、次々と新たな洞窟が見つかるのでしょうか。当初はA〜Cの3洞窟だったの
が、DとEが増え、さらにE1などが増えました。上記滑走路付近の空洞も含め、調
査が不十分だったか、そもそも十分な調査自体が困難だということでしょう。今後も
洞窟や空洞が見つかる可能性はあると考えた方がよさそうです。

 環境影響評価での宿題や工事内容の具体的内容について検討するため、こうした委
員会が設置されたはずですが、事業をスケジュールどおりに進めるという大前提のも
と計画が大きく見直されることはなく、小手先の対応に終始しているように見えます。
実際の工事で「思いもよらぬ」事態が発生する危険性は残されているでしょう。

[新空港問題の今後]

 沖縄県土木建築部は8月1日、25日に実施予定だった新空港用地造成工事の入札
を、参加する共同企業体(JV)の数が少なかったという理由で延期しました。予定
されていたのは、今年度の用地造成工事9工区のうち6工区で、それぞれ切土約20
万立方メートルと盛土約20万立方メートル、赤土流出防止対策工事1式で構成され、
発注額は6工区合わせて20億円程度だそうです。経営規模により決まる県の格付け
で、特Aクラス1社とAクラス1社のJVによる一般競争入札とされていました。入
札希望は、工区ごとに8〜15JVで、これが「少ない」のかどうか分りませんが、
県のコメントで「より多くの地元業者が参加できるようにする必要がある」とされた
のが実質的な理由のようです。
 今年度の工事は規模が大きいため、細分化は県の事務上の都合からできず、また一
般競争入札という契約の原則が厳密に適用されるようになったため、JVによる一般
競争入札という形が取られたようです。それでも、八重山には特Aは5業者しかない
(Aは47業者)ため、JVに入るAの業者は八重山に限定されているとのことです。
しかし、地元業界は以前から地元優先発注を求めており、前年度の試験盛土工事は指
名競争入札とされたことから期待がふくらんでいたのに、あてが外れ不満も出されま
した。
 沖縄県は当初の入札参加資格が厳しかったため地元業者の参加が少なかったと見て、
要件を緩和したうえで後日入札を行ったそうです。JVに入るA業者を地元に限るこ
とも含めそれなりに地元への配慮はしているということでしょう。地元でも、不満は
ありながら、出されたものに甘んじるしかないというところに落ち着いたようです。
 こうした事態は、最初から予想されたことです。これだけ大きな工事でしかも事業
者が沖縄県であれば、地元以外の業者を排除するわけにはいきません。工事による地
元への「経済効果」は限定的のようです。

 その後工事は、多少の遅れはあるかもしれませんが、進行しているようです。しか
し、後回しにされてきた大きな問題があります。

 一つはアクセス道路ですが、通過地である白保集落と宮良集落の意見が合わないた
めルートの決定が先送りされています。沖縄県は、意見の相違がない市街地から宮良
までの区間を先行して整備する方法も検討する必要があるとしています。もし、開港
までにルートが決まらなければ、住民や観光客は、宮良、白保集落の中を通り、遠回
りとなるルートで新空港と市街地を往復するということになり、集落内の交通が輻輳
するという問題も起こるでしょう。

 空港ターミナルビルについても、先送りされています。建設の主体が決まらないか
らです。最近は、PFI即ち公共施設等の建設・維持管理・運営等を民間に委ねるや
り方が採用されることもありますが、沖縄県はこれには否定的なようです。PFIは、
ある程度の条件は付けられるにせよ、地元とは関係のない企業に下駄を預けてしまう
ものであり、運営も地元とは関わりなく行われるおそれのあるものでしょうから、こ
の判断自体は妥当でしょう。
 しかし、県の考えている、公的分門と民間の双方が出資する第3セクター方式にも
問題があります。その設立自体が資金集めなどをめぐって難航しているようですが、
本当の問題は、ターミナルビルが建ってからでしょう。借入金の金利や維持管理費の
負担に耐えられるかどうかを予め予測しなければ、施設の規模が決められません。今
までの需要予測を白紙に戻して考え直すのでなければ、全国で相次ぐ第3セクター破
綻の例に一つを付け加え、県や市からの追加出資という羽目に陥ることになるでしょ
う。
 ターミナル地区のほとんどは、石垣市風景計画では自然風景域の内の八重の山並み
地区に含まれ、建物の高度は7メートルまでに制限されます。土地利用の変更に伴い
風景計画の変更もありうるでしょうが、周囲の自然景観と調和した、この島のサイズ
に見合った控え目な規模の建築とすることが、採算上も成り立つ施設とすることにつ
ながると思います。

 新空港さえできれば観光客が増え農産物の出荷も増やせるということは、多分起こ
らないでしょう。それは、別の経済的社会的要因により決まる部分が大きいと思うか
らです。そろそろ夢からさめ、新空港のもたらすものを考えなければならない時期に
来ています。ターミナルビルの経営問題は、そのきっかけとなりうるものです。もっ
とも、よく考えたら、新空港はいらなかったということになるのかもしれませんが。


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# 前号発行からふた月以上経ってしまいました。遅くなりましたが、今年最後の白
保メールをお届けします。
  みなさま、よいお年をお迎えください。

♪ 『白保メール』ホームページ
      http://www1.ocn.ne.jp/~shiraho/  

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白保メール NO.96  07.12.29
発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
      shiraho@estate.ocn.ne.jp


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