2008.01.31
白保メール No.97 カンムリワシのこと
。 \│/
。 ─ ○ ─
V..v 白 保 メ ー ル│\ Jan.31.2008
>>∈∋<< v..V 。 No.97
"" >>⊂⊃<< . . 。
.。,:'"*.,:'"*.,:'"*.,:'"*.,:,:'"*.,:'"*.・。。・ ・。。,; " * ,.
//転載歓迎//
<カンムリワシのこと>
カンムリワシ・リサーチ 小林 孝
新年に因んで、カンムリワシのお話をしましょう。カンムリワシがなぜ新年と関連
するのかは、おいおいご説明いたします。
[カンムリワシとは]
学術的に書けば、以下の通り。
・中央アジアから東南アジアに生息する中型の猛禽類で、日本では我が八重山諸島
(主に石垣島と西表島)だけに生息している。
・国(日本)指定特別天然記念物であり、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保
存に関する法律」つまり種の保存法で国内希少野生動植物種とされている。
・環境省が作成したレッドデータブック2002や見直し版2006(日本の絶滅のおそれの
ある野生動植物)では、絶滅危惧1A類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険
性が極めて高いもの)に、また沖縄県が作成した、沖縄県の絶滅のおそれのある野生
動植物:レッドデータおきなわでは、絶滅危惧種だとされている。
・また石垣市の市鳥に指定されている上、八重山では、食物連鎖の頂点に立つ生物で
もあり、さらに、宴席などのめでたい場で、座開き(ざびらき)の唄と舞(これから
宴が始まりますよという出し物)の定番でもある「鷲の鳥節」に歌われているのが、
このカンムリワシなのです。八重山の象徴とされるものの中でも、存在感が高い生物
だというわけです。
[鷲の鳥節]
いまや全国的にも知れ渡った八重山民謡の、なかでもとりわけ「めでたい歌」であ
る鷲の鳥節の詩の意味は、「大きな山に大きなアコウの木がある。その木にかんむり
わしが巣を作り、卵を産み、雛が孵(かえ)り、正月の朝早く、東に太陽が昇ると、
それを目指して綾羽(あやぱに・カンムリワシのこと)が飛び立っていった(三木健
氏の資料から引用)」ということで、子孫繁栄の意味と、その子たちが新しい年に新
しい世界に飛び立つという、明るくめでたい意味が表現された歌・踊りです。
石垣生まれの三木氏はこの解説の中で、「異郷に暮らして四十年もたつ私なども、
正月にはやはりこの歌を聞かぬと、正月を迎えた気分にはなれない。なんだか落ちつ
かないのである」と表白していらっしゃいます。それほど八重山の人々にとって、欠
くべからざる存在が、カンムリワシといえるでしょう
[カンムリワシをめぐる状況]
それほどこの島々では象徴的な扱いをされているカンムリワシですが、レッドデー
タブックに絶滅危惧種として掲載されるほど、生息数は僅かです。
1998年に財団法人日本野鳥の会八重山支部が実施した生息数調査で、石垣島と西表
島での一斉調査で目視確認できた個体数は、それぞれの島で100羽弱でした。合計200
羽弱。
生態学の専門家たちによれば、ある種の生息個体数が400を割ったら、もう絶滅に向
かってまっしぐら、いやいや2,000個体いてももう駄目、などといわれていますが、八
重山のカンムリワシの個体数は調査では200を割っているのです。ただし、この調査で
は目視できた個体だけをカウントしていますから、実際はもう少し多いでしょう。そ
れぞれの島で200羽ずつ、合計400羽がいるとみても良いのではないか、というのが、
識者の見方です。いずれにしても、希少です。でははるか以前はもっとたくさんのカ
ンムリワシがいたのでしょうか。彼らが必要とするテリトリーの面積(それなりに大
きな面積を必要とする)を鑑みると、それぞれの島に200個体というのは、大体勘定が
合うのではないか、と考えることもできます。つまり、もともとこの八重山には、こ
の程度の数のカンムリワシしか生息できる環境がなかった、と考えることもできるの
です。島々は小さいのです。
そのカンムリワシの生息環境が、近年、著しく破壊されてきました。
新石垣空港がやっとできることになりました、ということが発表されてから、これ
まで沈静化していたリゾート開発計画が島中でうごめき始め、また沖縄離島ブームに
よって移住者が増え、それを狙い撃ちした業者などによって、カンムリワシにとって
居心地が良い地域での宅地開発が進められ、さらには、そうした経済的社会環境の変
化によって、カンムリワシたちが路上で餌をとっている早朝の時間帯にも、自動車が
活発に、しかもこの島では不釣合いだとも思える高い速度で走行し、ロードキル(要
するに跳ね飛ばし事故)が頻発するようになりました。
ロードキルは以前からあったのかもしれませんが、このところの頻発ぶりは異常で
す。
カンムリワシは、もともと食物連鎖の頂点に立っている種ですから、つまりピラミ
ッド構造の頂点にいる種ですから、個体数が少ないのがいわば当たり前。充分な自然
淘汰の試練を受けて生きている、そういうグループです。その彼らに対して、新たな
脅威が加わると、本当に種を維持していくことさえ危ぶまれます。「絶滅危惧種」で
あることの意味が、改めて理解できる事態になりつつあるのです。
そうした事態に危機感を覚え、この状況に何とか改善策を打ち立てたいと思った八
重山に暮らす、私たち野鳥好きが集まって、佐野 清貴 を代表にした「カンムリワシ・
リサーチ」なるグループを発足させました。現在のメンバーは二十人弱です。
[カンムリワシ・リサーチ]
「カンムリワシが今後いつまでも八重山で生き続けられるよう、科学的なデータを
とりまとめ、カンムリワシ保護についての喚起を市民へ働きかけること」(概要)を
目標に決め、カンムリワシ・リサーチが発足したのは、2006年の2月でした。
先ずは、ロードキルが多発する場所を特定し、何故そこで事故が多く起きるのかを
調べたところ、その一帯が彼らの餌場になっていること(自動車に轢かれたカエルや
ヘビなどを路上であさっている)、走行車輌の速度が高くなりやすい場所であること、
などが判りかけてきましたから、石垣島のある団体から助成金を戴き、ドライバーに
走行スピードを抑えるよう呼び掛けるチラシを配布しました。
この調査の中には、陸生のカニやカエルが路上に大量に登場する時期(産卵期、繁
殖期、雨天時、など)に、島のどのあたりでどの程度の数のカニ、カエルが確認でき
るのか、といったことも含まれています。
また、交通事故などで負傷し、リハビリを受けて、無事に野生に戻せる状態に回復
したカンムリワシに、小型の発信機を装着させてもらって、放鳥後の動きを追い掛け
る、ということもやっています。
そういった活動から得られた情報(いろいろなことが判りかけてきました)をもと
に、「カンムリワシ重要生息地マップ」を作成するということが、活動の重要な柱の
ひとつになっています。
これは、開発業者にとって都合のよい、もっともらしい環境アセスメントによって、
この島の乱開発が促進されることに歯止めを掛けたいという願いを込めた、いわば対
抗策のひとつだと考えています。
これらの活動は、環境省との協力が不可欠です。現在、環境省のグリーンワーカー
事業と位置付けされ、石垣市や沖縄県も取り込み、相互に協力しながらの作業を継続
しているところです。
このほかにも、活動内容はさまざまです。カンムリワシ・リサーチのHPアドレスは、
http://ryukyu-serpent-eagle.txt-nifty.com/blog/ です。
[カンムリワシ週間]
さて、鷲の鳥節に話が戻ります。歌の中では、正月の東の太陽に向かってカンムリ
ワシの若鳥が飛び立つ様子に、島の人々はさまざまな思いを込めているわけです。こ
の歌に因んで、カンムリワシ・リサーチでは、旧正月の一週間を「カンムリワシ週間」
と定め、人々にカンムリワシのことをもっと知って頂くための手助けをしたいと考え
ています。
今年のカンムリワシ週間は、2月7日(旧暦の一月一日)から13日。10日の日
曜日にはカンムリワシ観察会のほか、八重山高校の郷土芸能部のみなさんによる「鷲
の鳥節」の舞踊の披露、観察会参加記念品(カンムリワシペーパーモデル)の配布、
その他の内容で実施する計画です。地元の新聞紙上で告知をいたしますから、注目し
ていただければ幸いです。
人々に、カンムリワシのことだけでなく、この島の今のありようについて考えてい
ただく手がかりになれば喜ばしいかぎりです。
^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~
# [カンムリワシとは]の部分で「絶滅危惧1A類」と表記しましたが、正式には
「1」はローマ数字が使われています。読者の受信環境により正しく表示されない場
合があるので、アラビア数字で代用しました。
♪ 『白保メール』ホームページ
http://www1.ocn.ne.jp/~shiraho/
♪♪このメールマガジンは、『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発行
しています。
配信中止は、http://www.mag2.com/m/0000141189.htm でお願いします。
^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~
白保メール NO.97 08.1.31
発行者 鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
shiraho@estate.ocn.ne.jp
シ友達にメールで教える
行政・政治・地域情報ランキングトップ
まぐまぐアーカイブトップ
sお問い合わせ
(C)まぐまぐ