2008.07.31
白保メール No.98 八重山のいま(その1)
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//転載歓迎//
<八重山のいま>(その1) 鷲尾雅久
筆者が八重山に移住してほぼ10年が経ちました。特にこの5、6年の移り変わり
は激しく、今また新たな時代に入りつつあるように見えます。やや私的な感想に傾く
かもしれませんが、しばらくお付き合いください。最初は、主に島の社会をめぐる話
題です。
[困難な時代へ]
▽ブームは去ったか△
ここしばらく、八重山はブームに沸いていたようです。観光客は増え、移住者によ
ると考えられる人口の社会増(転入−転出)が続いていました。それを当て込み、リ
ゾートホテルや都市型ホテルの計画が相次ぎ、アパート・マンションの建設ラッシュ
が起きました。西表島はもちろん、小さな離島にまで観光客が押し寄せ、いわば、自
然を消費する観光が行われていました。島の社会も脅かされるに及び、鳩間島では島
を守るための憲章が作られました。
状況が変わったのは2、3年前からのようです。観光関連産業に携わる方々から、
売上げが伸びないという声が聞かれるようになりました。先ごろ発表された「八重山
観光の動態・波及効果調査」(2007年度)の結果では、前回調査(02年度)から入域
客数は1.3倍になったが、消費単価の下落で総消費額は1.28倍にとどまり、所得への
波及効果も伸びが小さくなっています。八重山を初めて訪れた人が5年前の54%か
ら63%に増えていますが、これは団体客の増加を示すものでしょう。こうしたこと
は関係者の実感を裏付けるものです。
そして、昨年10月からは、実際に前年同月比の観光客数が減少に転じました。減
少は、クルーズ船の入港が多かった月を除き、6月まで続いています。数をたのむ観
光の時代は、終りを迎えたように見えます。リゾート計画が依然実現の時期をうかが
う一方で、ホテルが廃業したり、外資系企業に買収されるケースも増えています。
アパート・マンションは空室が目立ち、供給過剰がはっきりしてきました。関係機
関によると、移住についての相談受付件数も明らかに少なくなっているそうです。移
住ブームは沈静化しつつあるようです。
▽先行き不安△
一方、島の農業の中核をなすサトウキビ栽培で、買い入れ価格を国際価格に近付け
ることと経営の大規模化を図る国の新制度が導入され、多くの農家が先の見えない状
態に置かれています。飼料価格高騰のあおりを受けた肉用牛(子牛の販売)の価格低
迷などの影響も出てきており、島の産業をめぐる情勢も、ますます厳しくなっていま
す。
原油価格の高騰は、離島航路や路線バス・タクシーなどの運賃値上げをもたらし、
航空運賃の値上げは観光客の足を遠のかせることにつながっているようです。沖縄全
体の観光客数が増加を続ける中で八重山や宮古では減少していることは、これを裏付
けるものです。輸送コストの増大は、資材や生活物資の価格高騰をもたらし、長期的
に島の生活や産業に影響を与えることになるでしょう。
八重山は困難な時代に入りつつあるように見えます。
[波乱を含みつつ進む新空港計画]
▽スケジュールの遅れ△
八重山の将来にとって必要不可欠だとして開始された新石垣空港事業をめぐる状況
をご説明しましょう。
先日開かれた建設工法モニタリング委員会などでの沖縄県の説明によれば、新石垣
空港の昨年度(今年3月まで)の工事の工期は、一部を除きいずれも8月まで延長さ
れたとのことです。約半年の遅れです。
用地については、6月末の時点で契約済用地と取得確実な公的機関所有地の合計が
170ヘクタール弱、全体面積の87.1 %に当たるとのことです。土地収用について沖
縄県は、8月に事業認定(収用の対象事業として認められること)が行われる見込み
だと県議会で答弁していますが、当初のスケジュールより遅れていることは確かです。
▽予測のつかない自然△
こうした中、6月7日未明の大雨で濁水が周辺海域や牧草地に流出し、問題となり
ました。前者は、現場内のA1、E洞窟からの湧水は現場外の雨水が地下を通って出
て来るものであるので、直径1.1メートル延長200メートルの管により現場外の排水
路へ導くことになっていましたが、管の呑(のみ)口が破損して雨水を吸い込めず、海
域に流出したものです。後者は、現場内に降った雨水を浸透池から地下に浸透させる
ことになっていましたが、浸透しきれなかった雨水が現場外の牧草地にあふれ出たも
のです。
牧草地への流出の原因は当初、滑走路などの滞水を防ぐため速やかに地下への浸透
を図るドレーン層から浸透池に流れ込む雨水が予想を超えたためとされていましたが、
6月30日に開かれた第3回新石垣空港建設工法モニタリング委員会では、3時間降水
量が146ミリと想定の10年確率降雨(10年に1回ある大雨)123ミリを超えていた
ことが報告されました。同委員会では、これへの対策が話し合われましたが、これは
環境影響評価の問題でもあるはずです。当初の想定が覆されたわけですから、見直し
が必要です。
なお、同モニタリング委員会で、滑走路下などの空洞対策が工法と経費の点で現実
的な問題点となっているらしいことが分かりました。
7月3日に開かれた第4回新空港小型コウモリ類検討委員会では、各洞窟で確認さ
れる数の増減は洞窟間移動をする習性によるもので工事の影響とは言えないという見
解が示されました。建設用地と周辺の洞窟から島内のほかの洞窟へ移動したとみられ
る時期が、3種でそれぞれ異なっているのが理由だそうですが、コウモリの種類によ
って行動が違うのかもしれません。コウモリに聞いてみなければ分からないことです
が、問題は学問的厳密さではなく、工事の影響が考えられるかどうかです。その可能
性があるのなら、慎重な対応が必要でしょう。人工洞についても、少量の糞の発見を
根拠に、いずれは利用されるはずだと、楽観的な見通しでした。
▽持ちこされた問題△
ターミナルビルは第3セクターによる運営が決まっていますが、出された計画では、
概算事業費68億円という大きな規模となっています。2021年度の需要予測(旅客数
259万7000人、貨物1万3736トン)をもとに設定されたもののようですが、今後も
利用者減が続いた場合は過大な施設となり、他の多くの第3セクター同様、赤字化と
税金投入のおそれが出てくるでしょう。
新空港と市街地を結ぶアクセス道路は、経由地の集落間で意見が食い違い棚上げさ
れていましたが、ようやく方針が決まりました。今の道路では街の中心部と港から新
空港への距離が14キロメートルとなるところを10キロメートルに短縮できるとの
ことです(現空港は4キロメートル程度)。しかし、順調にいっても供用開始は2016
年度となり、13年3月とされている新空港供用開始に間に合わないことになります。
観光客や特に離島住民の負担がさらに増えることになります。
このように多くの問題を抱えながら、若干の遅れをはあるものの造成工事は進んで
います。これで、「もの」としての新空港はできるのかもしれません。しかし、日本
の人口が減少に向かっている今、さらに、燃料高騰のあおりを受けて地方航空路線の
休止廃止が相次ぐ中で、新空港が新たな需要を呼ぶものとなりうるのか、楽観的な見
通しを持てる人がどのくらいいるでしょうか。
筆者は、新空港建設により八重山は大きな負債を負うことになるのではないかと危
惧しています。そして、ここに住む者のひとりとして、それをどう返済していくかが
現在の課題となると考えています。 (次号につづく)
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# 半年間ご無沙汰し、大変失礼しました。100号を目前に足踏みしてしまいまし
たが、98号をお届けします。
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発行者 鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
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