東京地裁つまみぐい ── 裁判をネットで観てみよう! |
2008.04.20
▲▼ 東京地裁つまみぐい ▼▲ 第71皿目【家族のキズナを強めた万引き?】
書を捨て 法廷に行こう …… 東京地裁つまみぐい ・━━━━━━━━
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もう2週間ぐらい前に放送された番組ですが、NHKスペシャル
「名ばかり管理職」を、今ごろ観ました。
コンビニや飲食チェーン店などの店長さんは、かなりの若人が就いている
のに驚いたことはありませんか。
あれには裏があって、本部が直営する店舗で、彼らを「腹いっぱい働かせ
る」目的があるといいます。そのために、名目だけ「店長」という、まるで
管理職であるかのような役職を与えているというのです。
なぜなら、平社員やアルバイトと違い、雇われ店長という「管理職」には
残業代を支払わなくて済むからです。
◆ 労働基準法 第41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する
規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者
又は機密の事務を取り扱う者
「名ばかり管理職」がいる店舗には、アルバイトなど、残業代が必要な
人員を極力おかないようにして、それで困ることが起これば、すべて
店長に尻ぬぐいしてもらおうという魂胆なんですね。
過労が原因で重い脳障害にかかった元ファミレスの店長や、一時期に
ほぼ24時間労働を強いられてしまったコンビニ店長など、番組では悲惨な
事例が紹介されていました。
今年1月、東京地裁は「マクドナルドの店長は、労働基準法にいう『監督
若しくは管理の地位にある者』に当たらない」との判断を出し、累積した
残業代などの支払いを本部に命じています。
この『監督管理者』にあたる要件としては、
1)経営と一体的な立場にある
2)職務と職責
3)勤務態様
4)その地位にふさわしい待遇(賃金など)
などが挙げられ、これらの要素を総合的に検討して決めるそうです。
さらに、この要件を定める厚生労働省通達は、「(役職の)名称に
とらわれず」と言及しているところなんかもポイントでしょう。
私は昨年まで、おもに100円ショップへ派遣されるレジ打ちでした。
日雇いの派遣バイトに関しては、いろいろと悲惨な状況が報道されている
昨今です。
たしかに、現場までの交通費をなかなか出してもらえなかったり、
「搾取されとるなぁ」と感じる場面も多々ありましたよ。
でも、私個人の話をすれば、その日の希望の時間帯や作業時間を言ったら、
ふさわしい現場をちゃんと探してくれますし、なんとなくキャラが合わない
店長さんがいたら、その現場は候補から外してもらえますし、ああいう形態は
かなり体質に合ってました。
派遣バイトは、作業時間が短くなればなるほど、時給換算で割高になる
(1400円ほどになることも)ので、自転車で通えるような、自宅と同区内で
4時間の現場を2件こなせば、非常に効率よく働けました。もちろん、
こういうケースは、かなり運がいい場合ですが。
初めての現場では、少し早めに入って、売り場のどこに何があるかチェック
しておいたり、とにかく与えられた接客・精算業務をキッチリやっていれば、
自然と信用がついてきます。
私の場合は、なんだか信用されすぎて、北は栃木県の氏家、南は川崎駅前まで
人手の足りないところばかり、50現場ぐらい行きました。
宇都宮より遠い氏家にもなると、派遣というより、もはや出張ですけどね。
現場で余計なことをやりすぎて、店長さんから小言を言われるパターンは
何回かありましたが、その程度のものです。
しまいには、新入りさんの指導係まで任され、朝早くからスーツ着て
千葉まで行ったりも。 たしか、手当てが500円付いたのかな。
私の登録していたところは、終了予定時間の10分オーバーで、なぜか
残業代が30分ついてしまうシステムでした。40分オーバーで1時間の残業。
ある店長さん(7歳年下)から「そんなのアリですかぁ?」と、少しうらやま
しがられたのは、彼が「名ばかり管理職」の立場だったからなのか……。
ちょっと気の毒ですね。 100円ショップという業態も、離職率がハンパなく
高いことで知られます。 行くたびに店長がコロコロ代わってる現場すらあります。
あの街の、あの店長さんは、今ごろ、どうしているのかなぁ……。
(↑ 余計なお世話 )
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\ ┌──┴────────────────────┴──┐ /
\ │ 日本国憲法 第82条 (裁判の公開) │ /
/ │ │ \
/ │ 1 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。 │ \
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▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲ ネットで擬似体験する裁判傍聴!
▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲ 本日の つまみぐい法廷
(※印は、発行人注です)
□
■□ 窃盗 被告事件
【被告人】 主婦の女性(62歳)
【法 廷】 徳島地方裁判所
スーパーマーケットで万引きをしたとのこと。被害は、冷凍紅ジャケなど
約3,500円相当。
罪状を認めた後、背中を丸めてうつむき加減で検察官の冒頭陳述を聞いている。
万引きを審理するほかの法廷とは、少し空気感が違うような気がした。
冒頭陳述によると、被告人にはうつ症状のほか、腎不全などの持病があり、
週3回の人工透析を行っているという。
同じような窃盗の前科があり、本件は執行猶予中の犯行だという。
犯行の動機については、「家族に見放されているような気がして、寂しかった。
カラダがしんどくて、つらかった」と供述している模様。
人工透析で時間を取られ、自由が削がれているような気がしたのだろうか。
それでも身近な人たちの支えがあれば、なんとか持ちこたえられたのであろう。
周囲の支えを感じられないとき、人というのは意外と簡単にもろく崩れてしまう
のかもしれない。
傍聴席には、父親と娘、息子が在廷している。そのうち、父親と娘が情状証人と
して、法廷で語ることになった。
被告人の受けた前回の裁判でも、父親は情状証人として証言したのだそう。
そのときは、奥さんである被告人のサポートを誓ったり、「刑務所に行ったら
死んでしまう」と、執行猶予つきの寛大な判決をもらえるよう訴えていたようだ。
なのに、なぜ万引きが再び繰り返されたのか。法律家による質問は、当然その点
に及ぶことになる。父親は、「今まで何もしてこなかったのは確か。これから
サポートをしていく」と答えた。
「それは、以前にもできたはずのことでしょう。なぜ次からはできると言える
んですか」と、裁判官は叱責。口先だけの言葉を繰り返すのみの夫だとして、
監督能力を疑われてしまったのかもしれない。
次に、娘が証言。20歳すぎぐらいだろうか。
なんと、娘は今まで何度か繰り返された母親の万引きのことを、まるで
知らされていなかったという。そのことについて「ショックです」と、
震える涙声で答えていた。
母親からは、「一緒に買い物に付いてきて」と言われることもあったが、
断っていたとのこと。
「会社が忙しく、母親の面倒をみたりとか、家のことなどができないまま
でした。これからは自分のことは自分でやって、母親の手助けをして……。
当たり前のことなんですけど」
娘さんは、被害を受けたスーパーマーケットの店長さんに、減刑の嘆願書を
書いてもらえないかとお願いしに行ったようである。店長さんは、今回の
犯行は許しているものの、嘆願書の作成は渋られたそうだ。
逆に「あなた何歳?」「病気だからっていって、みんな万引きするのかい」
と怒られてしまった。その場で土下座をし、泣いて謝罪したという娘。
これからは、ちゃんと母親の買い物に付き添って、売り場でカバンを持たせ
ないようにすると、母親の話も聞くと法廷で誓っていた。
「今回のことがあって、初めて家族で真剣に話し合いました。ご近所さん
からは『お母さんには、いつもよくしてもらっていたんですよ』といわれる
ような、評判の母親で、誇りに思っています」
そして、被告人質問が始まった。証言台の手前に腰をかけた被告人は、
前かがみのまま、声を絞り出すようにして話し始めた。
< つづく >
※以上が前編です。後編を来週おとどけいたします。
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もっと、本格的な裁判傍聴録を読みたければ……
絶坊主さんの 『 名古屋地方裁判所 やじうま傍聴記 』
http://chisai.seesaa.net/
「もう二度としません」
「申し訳ありませんでした」
「反省しています」
じつは、刑事裁判に持ち込まれる事件の背景や、登場する被告人のセリフって、
だいたいパターンが決まってるんですよね。
にもかかわらず、これだけバラエティに富んだ傍聴記録をアップしつづけられる
ということは……
あっしには、わかりますぜ。 絶坊主さんは、少なくとも、エントリされている
記事の数倍、数十倍、相当な回数の裁判傍聴をこなしておられるということを。
頭の下がる思いがします。
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□□■ PLAN 0004
□■
■ 『裁判所が訴えられて、しかも裁判に負けた話』 その1
私の手元に、とある判例全文データがあります。
【 昭和35年10月21日 最高裁判所判決 】
いわゆる「東京地裁厚生部事件」と呼ばれるものの上告審判決ですね。
これは何をかくそう、東京地方裁判所が、最高裁判所で逆転敗訴した
判決なのです。
……どうにもややこしいですが。
この東京地裁の厚生部というのは、裁判所職員の福利厚生をはかる目的で置かれて
いたところで、戦時中から東京地裁のなかにあるとのこと。ただ、代表者などが
ハッキリしていないような組織で、自然発生的なものだったと認定されています。
原審である東京高裁判決の表現を引用しますと、
「戦時中から東京刑事地方裁判所職員の間では、相互の福利厚生をはかるため、
同志の者が生活必需物資を他から入手して職員に配分した上、代金を集めて仕入先
に支払うことをしており、これらの事務は裁判所の各職員がその都度本来の職務の
かたわらこれに当つていたのであるが、はんざつのため職員の希望により裁判所では
比較的ひまな職員をして庶務係分室という名称のもとに勤務せしめつつ、同裁判所
職員のため一元的に右のような物資の購入配給活動に従事させることとし、その結果
だんだんこの購入配給活動は、とくだんの規約が定められたようなことはなかつたが、
右職員によつていちおう組織化されて恒常的に運営されるにいたり、これをたれ
言うとなくいわば自然発生的に、一般に『厚生部』と呼びならわすようになつた」
といういきさつがある、ということを、まず押さえていただきましょう。
「比較的ひまな職員をして」といった書き方が、なかなか余計なお世話です。
昭和23年に、東京地裁の事務局の総務課に、正式に「厚生係」という部署が
できたため、従来の厚生部にいたメンバーがスライドして入り、職務を行って
いたようなんですね。
そして、職員の健康管理やレクリエーションなどを行う準備などのために、
いろいろ買い物しようと、たびたび民間企業と取引があったわけですが、
そのときに厚生係は、従来からの慣行を引きずってか、「厚生部」の名義で
契約を行っていたと。
やがて、取引先企業が「東京地方裁判所厚生部」に対して持つ売掛代金が、
当時の額面で約374万円にもなっていたといいます。
企業としては、この374万円あまりを、東京地裁に請求するわけですよね。
それが自然な感じです。
しかし、東京地裁はこれを拒みました。
だって、「東京地方裁判所」と「東京地方裁判所厚生部」は、別個の存在
だもん、というのです。
正式な部署である総務部の厚生係がやった取引なら、東京地裁が関知する
けども、「厚生部」なる部署は、うちには無いもん、と。
たしかに最高裁も、「厚生部」は東京地裁の一部署とはいえない、と認定
しています。
では、なぜ企業側の訴えを認めたのか。
ポイントは、次のような条文にあります。
◆ 民法 第109条(代理権授与の表示による表見代理)
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の
範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を
負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを
知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
◆ 商法 第14条 [※この事件当時は23条。最近ひっこしました]
(自己の商号の使用を他人に許諾した商人の責任)
自己の商号を使用して営業又は事業を行うことを他人に許諾した商人は、
当該商人が当該営業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、
当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。
これは、名板貸(ないたがし)とか表見代理とか呼ばれる問題です。
ある人のため、本人の代わりに取引をしている人がいるとします。
そのとき、その「他人」が、まるで本人を気どって、本人と紛らわしい
形態で取引をした場合は、本人も責任を負えよ、という意味です。
なぜなら、取引相手は、契約に名前の出ている人と取引したものと
信じているからです。その信頼を保護しましょうというのが、商法の
名板貸理論とか、民法の表見代理なわけです。
「人は見た目が9割」と申します。ここでは、取引の見た目を全部
認めて、10割にしてしまおうという試みです。
ただ、民法と商法、どっちを使うかは微妙なところ。はたして東京地裁が
「商人」(自己の名をもって商行為をすることを業とする者)なのか
どうかも、よくわかりません。
実際、最高裁も微妙だと思ったみたいで、「民法一〇九条、商法
二三条等の法理に照らし」といった表現で、あいまいにボカして
います。ま、根拠条文には、そこまでこだわらなくていいんだろう
と思います。
要は、東京地裁が代金を支払ってくれるものと信じて、
「東京地裁厚生部」に物を売るなどした民間企業を保護するための
規範を打ち出すことです。
条文だけでは、ちょっと見えにくいので、より実践的・デジタル的に
規範を整理してみましょう。
以下の3つの条件を満たすとき、取引の見た目が尊重され、相手方が
保護されます。
【 1 : 見た目の問題 】
>>> まるで本人そのものであるかのような「外観」が
現にできあがっていること
【 2 : 『本人』の問題 】
>>> 外観ができあがっていることにつき、「落ち度がある」
こと
【 3 : 『相手方』の問題 】
>>> 本人でないことに「気づいておらず」かつ、気づけなかっ
たことにつき「落ち度がない」こと
では、あてはめてみます。
ここにいう本人は「東京地裁」です。
相手方は「取引先の民間企業」です。
まるで本人そのものであるかのような外観とは「東京地裁厚生部」です。
この時点で、【1】の条件はクリアでしょう。
いくら厚生係という正式な部署が別にあるとしても、そんな事情は、
東京地裁の外の人間にとっては知ったことではありません。「東京地裁
厚生部」という名前は、まるで東京地裁の部署のひとつであるかの
ような外観といえます。
しかも「厚生部」が行っていた物品の購入契約では、発注書や支払証明書
という、いかにも官庁っぽい形式の書面が取り交わされ、しかもその書面は
庁用の裁判用紙を使用しており、さらに、発注書の頭書には「東地裁総厚第○号」
と記載し、支払証明書には東京地方裁判所の庁印を使うなどしていたそうです。
【2】の条件ですが、最高裁は、
「東京地方裁判所は、『厚生部』が『東京地方裁判所厚生部』という名称を
用い、その名称のもとに他と取引することを認め、その職員らをして
『厚生部』の事務を総務課厚生係にあてた部室を使用して処理することを
認めていた」と認定しています。
さらに、原審・東京高裁での本人尋問で、厚生係の長である職員は、契約に
裁判所の用紙を使っていたことについて、
「当時厚生部がこの用紙を使うことは裁判所のためにやつていると思つて
おりましたので別におかしいとは思いませんでした。又この用紙を使うに
ついて上司から使つてはいけないと云われたことはありません、なおこれに
裁判所の庁印が押してありますが、庁印を使うことについて上司から注意を
受けた事は記憶がありません」と述べており、最高裁はこの供述に特に
疑問を呈していません。
つまり、「厚生部」が東京地裁の存在を使って取引をしたことについて、
本人である東京地裁も「落ち度がある」というべきです。
【3】の条件について、最高裁は
「本件取引の目的物件、数量および代金支払の方法等から見るときは、東京
地方裁判所自体の取引でないことは、注意を用いれば判明しえたと思われる
ふしがあるけれども、一面、原判決の認定にかかる前示事実関係および厚生部の
内部にいた職員らですら「厚生部」が東京地方裁判所の一部局であると信じて
いた事実は、むしろ上告人の善意を窺わしめるものといわなければならない
であろう」と言及しています。
ここでいう「善意」とは、「知らなかった」「気づかなかった」という意味の
法律用語です。
ただ、気づかなかったことにつき「落ち度がなかった」かどうかについては、
法律審である最高裁では判断がつかないので、もう一度、事実関係の審理を
やりなおすよう、高裁に差し戻したのでした。
「注意を用いれば判明しえたと思われるふしがあるけれども」という最高裁の
言い回しから、そのへんの悩みが感じられます。
いちおう、こんな感じでまとめてみましたけど…… おもしろいですか?
じつは、最近にも、裁判所が訴えられて負けた裁判があるようなんです。
今回の企画が皆さまに好評かどうかにかかわらず、来週は「その2」をお送り
いたしますので、ガマンしてくださいね。
ここまで読んでくださいまして、どうもありがとうございました。(^^)/
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2008年4月20日付 通巻第77号 発行人:長嶺まさき
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