映画保存協会メールマガジン「メルマガFPS」 |
2008.03.31
映画保存協会『メルマガFPS』Vol.34
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│映│画│保│存│協│会│Film Preservation Society (FPS)│
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映画保存協会メールマガジン『メルマガFPS』 Vol.34
(2008.3.31)
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□■─────────────【I N D E X】───────────■□
§1.谷根千アーカイヴ(仮称)の設立に向けて始動します
§2.【けんこう蔵部通信その5】
今年も開催!映写機講習会&上映会@一箱古本市のお知らせ
§3.【ホームムービーの日に向けて・その3】
2007年今年の1本[日本篇]が完成しました
§4.【小型映画部通信:1】サイトをリニューアル&出張上映を報告
§5.【レポート】「帝キネ映画・故郷に帰る」
§6.【レポート】映画の里親作品『学生三代記』をみて
§7.【コラム】UCLAで映画保存を学ぶ!第15回
§8.【ショートショート書評】第3回 『市川崑の映画たち』
§9.FPSからのお知らせ
§10.編集後記
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§1.谷根千アーカイヴ(仮称)の設立に向けて始動します
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FPSは今春、地域映像アーカイヴ設立に向けて「谷根千アーカイヴ(仮称)
設立準備室」を立ち上げることになりました。
準備室では2008年度、(1)正式名称の決定とミッション・ステートメ
ントの作成、(2)運営資金の確保(3)収蔵場所/寄託先探し(4)文京
アカデミー視聴覚ライブラリー所蔵16ミリフィルム上映会の開催(5)資
料・情報収集を進めていきます。
谷根千アーカイヴ(仮称)設立後は、谷根千地区(東京都の台東区から文京
区にかけた谷中・根津・千駄木の一帯)ゆかりの視聴覚資料(その具体的な
定義はまだこれからです)を発掘・収集・保存・研究・活用していきます。
ごく小規模のコレクションと最小限のスタッフ、最低限の設備からのスター
トになりますが、たとえ世界最小のアーカイヴであっても、高い志をもって
スタートを切りたく、2008年度はそのための準備期間と考えています。
谷根千地区では、谷根千工房さんが過去にお宝映像をたくさん発掘されてい
ます。
『わたくしたちの町−1955年の池之端七軒町』(パチリ会映画部/1955年/
16ミリ/15分)、鉄道省技術者が撮影した『欧州旅行』(1931年/16
ミリ/15分)、千駄木在住のアマチュア作家、故・熊沢半蔵さんの手作り
8ミリ・アニメ、そして三堀コレクションをはじめとするホームムービーの
数々……。
知られざる映像遺産はまだほかにも眠っているに違いありません。
保存活動は100年先を見据えた地道な仕事です。守るべきルールは煩雑で、
その時々の自由にならないことも多々ありますが、小回りのきく草の根団体
の利点を生かして、できる限りお一人お一人、あるいはフィルム一本ごとに
臨機応変な対応を心がけます。海外の地域映像アーカイヴの視察も念頭に
、AMIA、SEAPAVAAへの参加も継続します。
ゆくゆくは《映画の里親》プロジェクトや小型映画部、≪ホームムービーの
日≫、映画保存資料室など、FPSがこれまで積み上げてきた活動ともつな
がっていくことでしょう。
なお、準備室の進ちょくは出来る範囲で「メルマガFPS」やFPSのウェ
ブサイトで報告し、ゆくゆくはリーフレットなどの作成も目指します。興味
をお持ちの方、ご意見ご要望のある方はお気軽にお問い合わせください。
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§2.今年も開催!映写機講習会&上映会@一箱古本市のお知らせ
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今年もいよいよ谷根千地区恒例の不忍ブックストリート《一箱古本市》が近
づいてきました。けんこう蔵部では下記の日程で参加協力の予定です。
この機会にぜひ谷根千散歩にいらしてください。
■4月27日(日)■
第3回映写機操作講習会
http://www.filmpres.org/archives/241
■4月29日(火)■
D坂シネマ アンコール上映会―12時間映画だらけ―
と き/4月29日(祝・火)
午前10時半開映(開場10時)終映21:30(予定)
ところ/映画保存協会(FPS)「協和会の蔵」
東京都文京区千駄木5-17-3
※児童公園の奥に入口があります。
定 員/35名くらい(申し込みは不要です。直接おいでください)
入場料/FPS会員は無料(受付で会員証をご提示下さい)
一般の方は500円のカンパをお願いします(一日出入り自由)
売 店/愛情たっぷり「パリットフワット」パン 150円〜
自家焙煎挽きたて「やなか珈琲」150円〜
高知直送「ごっくん馬路村ゆずジュース」150円〜
ほか、13時以降はビール、ワイン、おつまみの販売もあります。
問い合せ/谷根千工房(ヤマサキ)
03-3822-7623 http://www.yanesen.net
FPS(けんこう蔵部)
03-3823-7633 http://www.filmpres.org
主 催/谷根千工房D坂シネマ+FPSけんこう蔵部
【プログラム】
10:30〜 一箱古本市記念・招待作品
『高橋宗太郎と地獄の古本屋』※この作品のみDVD上映です。
(2003年/人形アニメーション/35分/監督・制作:一ノ瀬輝)
11:15〜『スノーマン』※レイモンド・ブリッグスの原作をダイアン・
ジャクソンが映像化
(1987年/イギリス/アニメーション/28分)
『おこんじょるり』
(1982年/人形アニメーション/25分/演出:岡本忠成)
『南無一病息災』(1973年/アニメ/18分/演出:岡本忠成)
13:00〜『20年後の東京』
(1947年/モノクロ/30分/1946年制作、企画:東京都都市計画
課)
『東京タワーはわが息子―設計者内藤博士にインタビュー』
(1960年代/モノクロ/25分前後?)
『ムカシが来た〜横浜市長屋門公園古民家復元の記録』
(1987年/46分/脚本・演出 :松川八洲雄)
15:00〜『ファーブル昆虫記の世界〜カリバチの狩りと巣作り』
(1977年/29分)
『オイシサをつくる〜醗酵の魅力』
(1996年/33分/演出:松川八洲雄 企画:雪印乳業)
『絵図に偲ぶ江戸のくらし』
(1977年/33分/岩波映画製作所/演出:時枝俊江)
17:00〜 一箱古本市記念・招待作品
『高橋宗太郎と地獄の古本屋』※この作品のみDVD上映です。
(2003年/人形アニメーション/35分/監督・制作:一ノ瀬輝)
17:45〜『注文の多い料理店』
(1993年/アニメーション/19分/監督:岡本忠成(完成前に没)
/監修:川本喜八郎)
『木を植えた男』
(1987年/カナダ/アニメーション/30分/監督:フレデリック・
パック)
19:00〜『文京ゆかりの文人たち』
(1988年/38分/岩波映画製作所/演出:時枝俊江)
『建造物との対話』
(1979年/34分/岩波映画製作所/演出:時枝俊江)
20:30〜『くっさく〜千代田線工事の記録』
(1970年/30分)
『20年後の東京』
(1947年/モノクロ/30分/1946年制作/企画:東京都都市計
画課)
終映 21:30(予定)
■5月3日(土)■
一箱古本市(蔵が販売所のひとつです)
同時開催:道草喫茶「郷商店(さとしょうてん)」
郷商店とは手作り陶器の旅するお店です。(FPSの最古参会員でもある)
作家自身が食いしん坊なので、お茶やお菓子やご飯が美味しく食べられます。
会員の中にも愛用者が何名か……。
例えば「やねせんマグ」は、谷根千工房さんの事務所で活躍中。フィルム柄
マグはふだんの蔵でも販売中(1つ1600円)です。この日は実際に郷商
店の器を使って、お飲み物や手作りお菓子、いなり寿司などを販売いたしま
す(売切御免!)
《不忍ブックストリート公式サイト》http://sbs.yanesen.org/
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§3.【ホームムービーの日に向けて・その3】
2007年今年の1本[日本篇]が完成しました
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たいへん長らくお待たせしました。
DVD《HMD2007 今年の1本[日本篇]》が完成しました!
子どもの成長記録から1950年代のお正月風景に、1970年代の懐かし
の神戸市電まで、国内13会場で開催された第5回HMDより全9作品を収
録しています。興味をお持ちの方はメールアドレスまでぜひご一報下さい。
hmd@filmpres.org
学研から今年発売される《「大人の科学」製品版:8ミリ映写機》が、HM
D本部のあるアメリカや国内の世話人の中で話題になっています。
昨春の紙フィルム映写機も一部マニアのあいだで盛り上がったようですが、
小型映画愛好者だけでなく、様々な層にフィルムの楽しさが広まるきっかけ
になると良いですね。
■開催地の声■
◎大阪阿倍野区、港区&京都会場より◎
なんと、関西では「アートポリス大阪協議会」がHMD「かんたん開催マニ
ュアル」なるものを制作し、世話人をさらに増やそうという動きがあります。
FPSと違うのは、ビデオやDVDも上映対象とする点でしょうか。初めて
開催する方にも、フィルム・インスペクション(検査)や保存のノウハウ、
映写機の確保から当日の段取りまでアドバイス/サポートが得られそうです。
関西圏の方でHMD開催をご検討中の方はぜひお問合わせください。
《アートポリス大阪協議会》http://www.artpolis-osaka.org/
《ホームムービーの日専用サイト》http://www.homemovieday.jp
◎名古屋会場より◎
HMD名古屋が下記のイベントで上映されるフィルムのインスペクションを
担当しました。
日 時:2008年4月20日(日)3時開場
第一部 16時〜 第二部 18時〜(予定)
会 場:passe avance
名古屋市中区伊勢山2−1119
金山総合駅下車 徒歩5分
料 金:2,000円(1ドリンク付)
出 演:ピアノ 近藤利夫(フィルム提供者)
ウッド・ベース 一瀬大悟
舞踏 杉山和こ
笛(藤田流) 竹市学
※第一部、第二部共に8ミリ・フィルムの上映あり(予定)
詳しくはpasse avanceオーナーのブログ、
「space LAC-S, for your expressions & our pleasures」をご覧下さい。
http://spacelacs.mediacat-blog.jp/e20008.html
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§4.【小型映画部通信:1】サイトをリニューアル&出張上映を報告
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2006年秋から活動しているFPS小型映画部のホームページが新しくな
りました。
http://www.filmpres.org/smallgauge
小型映画部はこれまで、フィルムの調査、DVDへの簡易テレシネ、8ミリ
機材の貸出、映写機操作講習会などのイベントの運営を行ってきました。
昨年度は93本のフィルムの調査、21本の簡易テレシネを行いました。人
員や資材、技術など、まだまだ課題は残りますが、少しずつ実績を重ねてい
きたいと思います。
また今年4月から、新たに16ミリの出張映写事業を始めることになりまし
た。その報告記事はこちらです。
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4月よりFPS小型映画部で出張映写事業を始めるに当たり、ご報告を兼ね
てこれまでの経緯を記したいと思います。
始まりは昨年の夏、谷根千工房の編集者、山崎範子さんより「野外の上映会
で16ミリの映写をやらないか」とお誘いを受けたのがきっかけでした。
出張映写の第1回目は2007年9月、東京の日暮里にある諏方神社にて。
主催はNPO法人子ども劇場。
夏の夜、神社の境内に小さな夜店が出てお祭り気分を味わいながらの上映で
した。
作品は『アルプスの少女ハイジ』。瓦屋根の建物を背景に、2時間近くもあ
る映画に見入っていた子どもたちの姿が印象的でした。
2回目は同年10月、東京の新宿・戸山公園内広場にて。主催は戸山あそび
場。こちらも野外で、昼間子どもたちの駆け回る遊び場が暗くなるのを待っ
て上映会場に。この広場を管理している主催者の方たちが、スクリーンを貼
付けるための枠と土台を木材で建てており、そのパワフルさに感動。上映作
品は短編アニメーション3作品。
3回目は今年2月、新宿・ゆったりーの/牛込箪笥地域センターにて。主催
は新宿区地域家庭活動推進協議会。
上映作品は『こどもの時間』。上映後、お客さん同士のディスカッションや
講師を招いての質疑応答が活発に行なわれ、映画のテーマでもあった「子ど
もの教育」について深く考えさせられたイベントでした。
そして4回目が3月、東京・町屋にあるムーブ町屋にて。主催は荒川国際平
和展事務局。
これは各国の平和に関する展示、演奏、上映などを毎年行っているイベント
で、上映作品は『第五福竜丸』。
上映後に講師の方が「この映画にある事件での教訓がまったくいかされてい
ない」と、いまだに核兵器が開発されている現状について涙ながらに解説し
ておられ、胸が熱くなりました。
出張映写では、フィルムと映写機の手配は依頼主にお任せします。ただし、
トラブルなく上映を遂行し皆様に喜んでいただくために、上映前日までに必
ず事前チェックを行わせていただきます。
実際にこれまで、事前チェックの際に映写機の調子が悪く、交換した事例も
あります。
また『第五福竜丸』では、チェック時にシネマスコープサイズだということ
がわかり、アナモフィックレンズ付きの映写機を借りなおすというハプニン
グもありました。
谷根千工房の山崎さんをきっかけに、各主催者さま同士のつながりにより、
話が伝わってご依頼を受けているうち、気づいてみたら出張映写も半年で4
回。
ルールや料金設定を明確にして、皆様が気軽に依頼できる環境を作るために、
出張映写をFPS小型映画部の事業として正式にたちあげることになりまし
た。
これにより、自治体を利用した16ミリフィルム上映会をこれまで以上に身
近なものにしていけたらと考えています。
また小型映画部では4月27日(日)に16ミリ映写機講習会を開催します。
出張映写に行くたびに、皆様がおっしゃるのは「実は昔、自治体で16ミリ
の講習会を受けたが、今はフィルムをさわる自信がない」ということ。
そんな方たちにもぜひ小型映画部の講習会に参加していただき、さらにフィ
ルムと身近な存在になって再び自らの手で上映会を開催してほしいと願って
います。(報告:神田)
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§5.【レポート】「帝キネ映画・故郷に帰る」
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去る2月16日に、東大阪市の学校法人樟蔭学園において、「帝キネ映画・
故郷に帰る」というイベントが開催され、鈴木重吉監督作品『何が彼女をそ
うさせたか』(1930)が上映されました。
東大阪、特に近鉄奈良線河内小阪駅周辺は、かつて帝国キネマの小阪・長瀬
というふたつの撮影所があった場所です。
長く失われたとされてきた帝キネ作品『何が彼女をそうさせたか』は、19
91年にロシアで発見され、帝キネ創業者のご遺族によって日本に持ち帰ら
れ、紆余曲折の末に復元され、今回、晴れて生誕の地、東大阪で凱旋上映の
日を迎えたのです。
講演ではフィルム発見までの経緯が山川暉雄氏(帝キネ創業者・山川吉太郎
氏のお孫さんにあたります)によって明かされ、冒頭と結末が欠損している
とはいえ、それでも作品は魅力的で(高津慶子のカメラ目線にドキリとした
ものです)、場内は大いに盛り上がりました。
さらに上映室の外では、帝キネについてのたくさんの資料が展示され、その
混雑振りは予想をはるかにしのぐものでした。
それもそのはず、500の鑑賞席に対して、その3倍の1500人からの抽
選応募があったそうで、その一方で、これほどの観客を集めながら、公開当
時にこの作品を見た人がまったくいなかったことには、ある種の感慨をおぼ
えました。あの会場にあっては、他ならぬフィルム(作品)が一番の「長生
き」だったのです。
昨年の山形ドキュメンタリー映画祭の特集「やまがたと映画」の成功を引き
合いに出すまでもなく、今回の東大阪の企画は、映画と地域の関係について
考える良い機会になりました。
映画の記憶、すなわち映画の保存は、地域の記憶と広い共通領域を持つとい
う点で、両者の強い結びつきの発展から得られる相乗効果に期待を寄せてい
ます。(報告:柴田幹太)
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§6.【レポート】映画の里親作品『学生三代記』をみて
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<はじめに>
もう8年ほど前の話。古本をみていて、気になった写真があった。昔の映画
の宣伝で、学生帽をかぶった当時の男子学生たちがこちらをみつめていた。
その楽しげな作品はマキノ・プロダクションによるものとあった。できれば
動画も見てみたい、とおもいながらまだ見ぬままであった。
3月9日、マキノの映画を上映すると聞いて見に行った。処は東京・京橋に
ある国立近代美術館フィルムセンターで、「生誕百年 映画監督マキノ雅広」
特集上映会である。
マキノ映画といえば、『鴛鴦歌合戦』、マキノの時代劇はスピーディーで面
白いぐらいに思っていた、にわかマキノ・ファンであり、会員をしているF
PSが発掘・復元プロジェクトを上映すると聞いて、日頃プロジェクトに参
加していないが、時間の都合がついた私は、プロジェクトの行く末を見届け
にいった。
といえば聞こえはいいが、本当のところは、『学生三代記』というタイトル
から、もしや面白いかもという8年前の写真が頭をよぎっただけだったりす
る。
<上映作品について>
『学生三代記 昭和時代[マキノ・グラフ版]』は1930年、マキノ・プ
ロダクションによって製作された『学生三代記』シリーズものであり、昭和
時代の8つのオムニバスのうちの二つ「野球の巻」「下宿の巻」が今回の復
元上映だった。
「野球の巻」は野球の試合場面での、アナウンサーのカットのつなぎが格好
よく、試合の行く末にやきもきする女の子の動作がおおげさで笑いが起きて
いた。
上半身と下半身(手の部分のクローズアップ)のショットがきっかり分かれ
ていた。試合も恋もゲームセットといって、女性が去るラストが陳腐だった。
「下宿の巻」は素行の悪い親不孝な男子学生の下宿に父親が訪ねてくる場面
で、慌てて部屋を片付ける様が面白く、となりの部屋の住人まで巻き込んで
(その飛び起きる驚き方が早くて可笑しい)、学生帽をかぶった顔は目張り、
白塗りと、バスター・キートン風だった。
スピーディーな展開で、女性の影の暗示のように?スクリーンの下の中央に
ヘアー(画面に写りこむ劣化のひとつ)がちらついていたのも、映像にエッ
センスを与えていたし、オーバーラップの手法も斬新だった。
<発掘・復元プロジェクトの経緯>
今回の『学生三代記』は「映画の里親」プロジェクトの第3回作品で「里親」
は国立近代美術館フィルムセンターと京都・立命館大のマキノ・プロジェク
ト、FPSがつとめた。
プロジェクトによる上映は、海外の映画祭(韓国のソウル・チュンムロ国際
映画祭での第4回作品『霧隠才蔵』[パテベビー版])、国際組織(ユネス
コのWorld Day for Audiovisual Heritage)へのPR映像と広がりつつある。
これらの詳細についてはhttp://www.filmpres.org/archives/182 にある。
<16ミリ、9.5ミリを復元することについて>
今回の復元はデジタルで、微妙な調整も行われた。なぜ復元するのかといえ
ば、見やすくするために他ならない。
見やすいといっても、家庭で手軽に見ることのできるDVDや、ざらついた
デジタル映像ではなく、大きいスクリーンでの圧倒的な質感を具現化するの
が、復元だとおもう。
それは映写機とフィルム、技師と観客、スクリーンと椅子があってこそ実現
する。
厳密にはオリジナルの映像ほど良くなるとは限らない。しかし、放っておけ
ば、映像は朽ち果てるだけである。
復元したい、という意思がある限り、映画は、できるだけ自然にできた劣化
をくい止め、これ以上悪くならないように、手を加え続けられる。これまで
に作られた映画を守る意味でも、これらの作業をきっかけに、復元の意識が
国内に広まることを願うし、また、復元への関心の程度は映画のみならず、
この国の様々な文化レベルにかかわる問題であることを忘れてはならないと
思う。
<おわりに>
映画を見終わって、ほんの16分程度のものではあったが、マキノ・グラフ
を見て、8年前の学生の楽しげな映画にも、たちかえった。
少なくとも、学生帽を被り、メイクした当時の年取ったような学生をみて、
下宿で働くぽっちゃりした女中さんたちも見て、楽しい気分となった。ファ
イルを引っ張りだして、写真をさがして確認したら、8年前と同じ面白さだ
った。それについては、そのうちひょっこり見ることができるかもしれない。
(報告:A.T)
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§7.【コラム】UCLAで映画保存を学ぶ!第15回
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UCLAでの学生生活もついに来週から始まる春学期で最後です。今回は冬
学期に受講したコースに関して報告いたします。
MIASの専門コースはアクセスとカタロギングの二つでした。アクセスと
はアーカイブのコレクションをどう利用してもらうかについて、カタロギン
グは文字通り映像コレクションのカタログ化についての講座です。
アクセスに関してUCLAの映画テレビアーカイブは世界的に見て、かなり
オープンな方針を取っています。以下のリンクから検索していただくと、コ
レクションに含まれる殆どのアイテムに関する情報が入手できます。
アイテムという言葉を使うのはコレクションの内容を表示する場合に、作品
名や内容だけでなく、35mmや1インチテープといった具体的なアイテム
別に情報を掲載する必要があるからです。
http://cinema.library.ucla.edu/cgi-bin/Pwebrecon.cgi?DB=local&PAGE=First
アクセスとカタロギングは対になっていますが、時間のかかるカタログ作業
はコレクションが増加するペースに追いつけないのが現状です。映像資料の
保存に関してまだ世界的に標準化されたカタログ様式はありません。
現在一般的に使用されているシステムは図書館の蔵書管理を応用したもので、
カタロガーも図書館学を専攻した人が殆どで、MIASの母体であるDepar-
tment of Information Studiesも元々は図書館学部でした。
しかし本と映像では根本的に異なるので問題が生じます。同じ作品が収録さ
れた複数のメディア、ネガポジの区別、部分だけの素材、バージョン違いな
ど、映像固有の問題に対処できる分類方法が必要です。
現実は各フィルムアーカイブが独自の方法を実践し、ようやく考え方だけが
まとまりつつあるという感じです。コースではUCLAで修復された映画作
品を例に、修復工程とその結果から生じた素材をカタログ化する課題が出さ
れました。
単に素材を列挙するのではなく、カタロガーが修復過程を理解しなければ利
用者に分かりやすいカタログは提供できませんが、課題ではこの難しさを肌
で学べた貴重な体験でした。
アクセスには著作権の問題が付きまといます。UCLAは著作権料を払わな
くても教育目的でコレクションを合法的に利用できるはずですが、著作権法
ではコピーガードを外すことが違法となります。
その結果、大学には映像作品をデジタル化してネット配信できる設備がある
にも関わらず、例えば授業で使うDVDをコースのサイトから見せるのは犯
罪になってしまいます。
他にも寄贈者との取り決め、教育目的での使用限度などに明確にできない要
素があり、誰にでも見てもらえるのはコレクションの一部に限られてしまい
ます。
ホームムービーとなると更に厄介ですし、カタログ化の際はタイトルの付け
ようすらない場合も珍しくありません。
また、著作権者からの没収を恐れて所有タイトルを公開しない映像アーカイ
ブも少なくありません。フィルムコレクターとフィルムアーカイブの関係を
考えると理解できることですが、アーカイブの目的はコレクションへのアク
セスがあってはじめて達成されるものです。
著作権以外にも様々なアクセス方法、例えばUCLAのアーキビスト、ボブ
ギットの研究をまとめたDVD、地域の映画館と共同で開催するスクリーニ
ングなどについて、ゲストスピーカーの講演を交えながら学ぶ充実したコー
スでした。
次回はインターンシップの体験についてまとめたいと考えています。
◇宮野 起(ミヤノ オキ)
日本大学芸術学部映画科卒業、2000年渡米。LAでアメリカンシネマテー
クなどの日本映画上映会にスタッフとして参加する傍ら日本特撮映画の海外
での再評価に尽力する。現在、UCLAのMoving Image Archive Studies Pro-
gram(MIAS)に在籍。
◇宮野さんにいただいたハンドアウトなどは映画保存資料室にファイルして
いく予定です。興味をお持ちの方はぜひお問合せください。
◇MOVING IMAGE ARCHIVE STUDIES, UCLA
http://www.mias.ucla.edu/
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§8.【ショートショート書評】第3回 『市川崑の映画たち』
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今回紹介するのは2月13日に惜しまれつつ、92歳で亡くなった市川崑監
督のインタビュー本、『市川崑の映画たち』です。
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市川崑監督はアニメーターから出発し、ヒューマンドラマ、時代劇、ドキュ
メンタリー、文芸作品、果てはテレビドラマからCMまで、「次の市川作品
は何がテーマか予想もつかない」と言わしめるほど幅広い活躍を見せた。
だから、本書は1994年の発行だが既に600ページを超す大著である。
手に取ると「うっ」と感じるほど分厚い。そして値段も4900円と決して
安いとは言えない。
しかし、インタビュアーの森遊机氏と市川監督は始終ざっくばらんだ。どこ
かの喫茶店で、お二人のおしゃべりを聞いているような気軽さを感じる。そ
して市川監督の語り口はすでに映像的で、映画を観ているようかのようにま
ったく飽きない。
また、デビュー作からの作品を一つずつ時系列順に並べてインタビューして
いるので、本を頭から最後まで全部を読まなくても気になる作品の部分だけ
読めば良い気軽さもある。
例えば『悪魔の手鞠唄』(1977)。一部を抜粋する。
(森)遊びと言えば、ラストで汽車に乗った金田一が警部に、「あなたはリ
カさんを愛しておられたんですね」と言うでしょう。警部は答えないのに、
「そうじゃ(総杜)」という駅名のプレートが大写しになる。公開当時、こ
れは監督のシャレである、と思ったものですが……。
(市川)いや、偶然だったんです。以前あんたに言われて、ああそうか、ち
ゃんと答になっているわいと気付いたんですから、本人は(笑)
こんな感じで作品の裏話を楽しみつつ、市川監督が映画について何を考え、
何を主張したいかが、本を読み進めるにつれてスンナリと頭の中に入ってく
る。
映画のスチール写真も多く、巻末にはテレビ作品やCMも含めた詳しいフィ
ルモグラフィーもあり、市川監督を語るには決して外せない本であろう。
ただ、大変残念なのはこの本、すでに絶版。今回、ここで絶版本を紹介する
のは気が引けたが、図書館や古本屋、ネット書店で見つけたらぜひお買い求
めいただきたい。市川作品を観るうえで最良のガイド本になるはずだ。
今回の訃報を機に、出版社には再版を強く望む。(A)
『市川崑の映画たち』単行本: 603ページ/出版社: ワイズ出版 (1994/10)
※絶版です。FPS資料室に所蔵はありません。
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§9.FPSからのお知らせ
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□■カール・ドライヤー監督特集 日本最終上映のお知らせ■□
FPS会員の柳下美恵さんが「カール・ドライヤー監督特集 日本最終上映」
の『裁かるるジャンヌ』(1927)でピアノ伴奏を務めます。
『裁かるるジャンヌ』を含め『吸血鬼』『奇跡』など5作品は4月末で日本
での上映権が切れるため、しばらくスクリーンでは見られなくなる可能性が
あります。
ぜひ足をお運びください!
★柳下美恵さんの伴奏付き上映は4月19(土)午後2時10分〜★
その他スケジュールの詳細はアテネ・フランセ文化センター(東京)のサイ
トをご覧ください。
http://www.athenee.net/culturalcenter/schedule/program/dreyer/dreyer.html
※前売り券発売中です!
□■寄付・寄贈のお願い□■
FPSでは引き続き16ミリ映写機を探しています。
動作状態などがわからなくても担当者が判断させていただきます。
寄付・寄贈という方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください。
メール:info@filmpres.org
TEL/FAX:03−3823−7633
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§10.編集後記
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桜がちょうど満開になったある一日、FPS会員数名と共に往年の大スター、
長谷川一夫(林長二郎)さんの命日(4月6日)を前にお墓参りに行きまし
た。
長谷川さんの遺骨は京都のお寺と東京の谷中墓地に分骨されています。私た
ちはお花見客で賑わう谷中墓地にお参りしました。
今年は長谷川一夫さんの生誕100周年とあって、「ファン一同」と書かれ
た札と共にお花が供えられていました。
次回、第5回の里親作品は長谷川さんが林長二郎を名乗っていた時の無声映
画『黒手組助六[マーヴェル・グラフ版]』(1929)です。
里親はまだ現れていませんが、復元上映にこぎ着けるまで、どうか暖かく見
守ってください、と手を合わせました。
お墓に眠る長谷川さんをスクリーンでもう一度よみがえらせるために、ご関
心のある方はぜひFPSまでご連絡ください。(天野)
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