2008.07.23
パラオ物語 Vol.080 「大物復帰 ! −その3−」
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パラオ物語 vol.080
「 大物復帰 ! −その3−」
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☆この物語の舞台はスキューバダイバー憧れの南の楽園、パラオ諸島。
☆グアム島への観光客もまだまだ珍しかった昭和40年代後半、
☆更に800kmも南のパラオでリゾートホテル建設の命を受けた
☆新人企業戦士の新鮮な驚きに満ちた日々を綴る奮闘記です。
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[[[前回のあらすじ]]]
新設の海外事業部長となった長崎を案内して、山田はパラオに出張した。
コロール空港には嶋田の他にパートナーのイナゴとPD社の秘書マリアが
出迎えに来ていた。
イナゴ達とその夜のディナーの確認を済ませると、長崎と山田は彼らと別れ、
嶋田の運転する車で建設現場のアラカベサン島に向かった。
「パラオ物語」のブログ
http://blog.livedoor.jp/palaustory/
主な登場人物
三 島:東京の西南部に線路網を持つ西南急行電鉄グループの社長。
山田の勤務する西南不動産の社長も兼務してたが、現在は会長。
財界の若手リーダーの一人で太平洋各地での開発に情熱を注ぎ
ニックネームは「ミスター・パシフィック」。
山 田:物語の主人公、西南不動産の若手の海外事業要員。
パラオでのホテル開発を担当している。
嶋 田:本社で関の部下としてパラオを担当し、
山田の復帰後には山田の部下となった。
杉 尾:三島の信任が厚く三島の後任として西南不動産の社長となる。
ライオンのあだ名で部下に恐れられている。
宮 島:取締役開発本部長で海外事業も所管している。
杉尾の忠実な参謀役。
長 崎:グアム時代の山田の上司で、その後ジャカルタに駐在し、
12年ぶりで海外事業部長として国内に復帰した。
矢 部:西南建設の海外事業部次長。
吉 山:設計コンから派遣された工事監理チームのチーフの建築士
岡 田:吉山のアシスタントの建築士
吉 岡:工事監理チームの設備技士
権 藤:西南建設の2代目のパラオ工事事務所所長
安 西:英語の話せない権藤のための通訳。
富 田:西南建設パラオ工事事務所の事務係長。
温 井:西南不動産の子会社、青山造園の社長。
青山造園はホテルの造園用の花の栽培をオイスカに外注している。
オイスカ:
九州に本部を置く団体で、発展途上国の農業支援事業を展開中。
パラオのバベルダオブ島の奥で農園を開き、
パラオ青年に農業を指導している。
クロ・エジソン:
パラオ財界のドン。
最初西南グループのホテル開発計画の反対派だったが、
山田達が交渉してパートナーとなった。
ホテル用地を買収する会社、パラオ・ディベロップメント社(PD社)
の社長。
イナゴ・カツミ:
クロ氏の幼友達。本業はウィスキー製造とポルノ映画館主。
フェミニストでしかも右翼的。来日の際には必ず靖国神社に参拝。
クロ氏の紹介でパートナーとなりPD社の副社長となる。
イチロー・ウォン:
パラオ政府の公共事業大臣。
昔サイパンの太平洋信託統治領政府に勤務していた時代に
調査に訪れた山田に会ったことがある
キシダ・ノボル:
コロールのヒロシマ・レストランのオーナーでダイブショップも経営。
ヒロミ:ノボルの妻でヒロシマ・レストランを切り盛りする日本女性。
PRD社:パラオ・リゾート・ディヴェロップメント社の略称で、
パラオでホテルを建設・所有する会社
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[[[ 大物復帰 ! −その3− ]]]
嶋田の運転する車がコロール市内を抜け、アラカベサン島へのコーズウェイに
差し掛かった時、長崎が海面を探すような素振りをしながら言った。
「確かこのコーズウェイだったかなー。
日本軍の銃撃で打ち落とされた米軍機の残骸があるのは?」
「ええ、そうです。よく覚えていらっしゃいましたね。
確かもう少し行ったところの右側です。
そうだよね、嶋田君。」
山田の問いに嶋田は前方を指差しながら答えた。
「あそこに見える小さな岩のようなのが、そうです。
潮が引いているので、少し水面から出てますね。」
「おー、あれだ、あれだ!
何でだか判らないが、急に思い出したよ。
あんなものでも懐かしいねー。」
嶋田が、その場所で車を停めたので、
長崎は窓を開け首を出して米軍機の残骸を見つめた。
戦後40年もの間、波に洗われ続けた残骸には貝や海草が付着し、
一見したところでは珊瑚の岩にしか見えない。
「あ、部長。この米軍機を打ち落とした機関銃士は
西南グループ社員だったんです。
グループの海外事業担当者連絡会に出てきた西南商事の方なんです。
会議の後でパラオのことを詳しく教えて欲しいということで、
いろいろ話していましたら、
その方が、あの米軍機を打ち落とした機関銃士だった、と言われ、
ビックリしました。
後日、写真を差し上げたら喜んでいましたよ。」
山田の説明に長崎は不審そうな顔して言った。
「本当かね。だったらもう年だから定年じゃないの。」
「志願兵だったらしく、ここにいたのは20歳前だったそうです。
連絡会でお会いしたときには、もう直ぐ定年だと言っていましたから、
計算は合いますね。それにアラカベサンの基地の様子も詳しくご存知
でした。間違いありません。」
「そうか。じゃあ、間違いないんだね。
それにしても世の中狭いもんだな。」
長崎と山田が米軍機のことを話しているうちに、
車は建設現場に到着し西南建設の事務所前に停まった。
嶋田に案内され、2階の西南建設の応接室に入った。
待つ間も無く「新」所長が入ってきて、長崎と山田に名刺を出し挨拶をした。
西南建設の所長は1ケ月程前に権藤から原口に替わったばかりで、
山田もパラオで会うのは初めてだった。
2代目の所長の権藤は所員との反りが合わず一人浮いたような状態だったが、
その内、ノイローゼ気味になり無断欠勤するようになってしまった。
工事監理をしている西南設計の吉山からの正式の報告書を受け、
西南不動産が要求した結果、西南建設が3代目として原口を派遣したのだ。
「原口さんは海外は始めてですか?」
長崎が名刺を見ながら聞いた。
「初めてです。出張でも海外には行ったことが有りません。
最初パラオと聞かされて、どこだか検討が付きませんでした。」
原口は若干緊張気味の表情で答えた。
「そうでしょうね。グアムとかサイパンでしたら直ぐわかるでしょうが、
パラオは全然名前が知られていませんからね。
着任されて1カ月でしたね。もう慣れましたか?」
「現場だけには慣れましたが、それ以外はこれからです。」
「そうですか。でもパラオは狭い島で人間も少ないし、直ぐ慣れますよ。
私はグアムとインドネシアに連続で12年間駐在しましたが、
現地の人と仲良くする一番のコツは食べ物ですね。
食事はどうしてますか。」
「3食とも現場の賄い料理で済ましています。」
「それはいけませんねー。
現地のレストランで地元料理をどんどん食べなくちゃ。
地元料理を食べると、その国の人の好みが判り、
会話も弾みますし、貴方を見る目が変わってきますよ。
ぜひ試して見てください。」
「そうですか。時々は外で食べるようにします。」
「ところで工事の進捗状況は如何ですか。
少し遅れ気味だとの報告を受けていますが。」
「はい。一部の資材の確保に問題があり、
全体としては半月ほど遅れています。」
二人の会話を聞いていた西南設計の吉山が原口を促すように言った。
「所長、長崎部長に現場を見ていただきましょう。
現場で説明していただいた方が良いですよ。」
「はい。それではご案内させていただきます。
こちらのヘルメットをお使い下さい。」
全員がヘルメットを被ったのを確認すると、原口所長は先に立って事務所を
出た。西南建設側は所長以下4人、西南設計が3人、それに長崎、山田、嶋田
の3人、合計10人だ。
一行は飛行艇の揚陸ランプ跡から海岸に降り、北に向かって歩きだした。
引き潮の時間帯なので海底の岩がごろごろ露出している。
30mほど海岸を歩いてから、護岸ブロックを上って建設区域に入った。
ここはプールデッキになるところで、目の前にロビー棟の大きな三角屋根の
骨格が見える。
原口の案内でその中へ入ると三角形の梁の大きさに圧倒された。
山田は奇妙なことに気づき、所長に聞いた。
「この大梁は、2ケ月前に来たときも確か3組あったような気がします。
記憶違いですかね。」
「仰るとおりです。あのときからここの工事は進んでいません。
大梁に使う資材の到着が遅れているんです。
梁の組立て工事を始めたときには、全部の梁を組み立てるための数が
有ったんですが、ある日半分が消えてしまったんです。
どこを探しても見つかりませんでしたので、慌ててフィリピンに発注
しました。」
「まさか盗まれてたんじゃないですよね。
こんな長い梁材なんて盗むには重過ぎますよね。」
「我々も、最初は盗まれる筈はないと思いました。
間違ってどこか別の資材の下になっているのだろうと、
資材置き場を全部調べさせたのですが、痕跡すら見つかりませんでした。
マラカル港からタグ・ボートでこちらに陸揚げしたのですが、
30m近い巨大な梁材ですから、盗難の危険は全然考えず、
堤防の直ぐ傍に積み上げて置いたんです。
何時か判りませんが、満潮時の真夜中に梁材を海に落として、
それをそのまま漕いで行ったようです。
それ以外には考えられません。
私が来る前にも、チェインソーとかコンクリートを捏ねるミキサーとかが
盗まれていたので、夜はガードマンにパトロールさせました。
しかし梁材を置いたところは、見回りの対象から外していたのです。」
原口の説明に長崎も山田も変に納得してしまった。
アルキメデスの原理の通り、どんなに重くても物体は水中では軽くなる。
まして木材なのだから幾ら大きくても水に浮いて当たり前なのだ。
普段からカヌーを使っているパラオ人にとっては、巨大な梁材は立派なカヌー
に見えていたのだろう。この勝負は海洋の民の一方的な勝利だったようだ。
山田は笑いを押さえながら、原口に尋ねた。
「そんなに資材の盗難が多いと、原価が膨らんで大変ですね。
盗難では契約の工事金額を増やすことは出来ませんから、
その分は建設さんの負担になりますよね。」
「いえ、全部保険でカバーされます。
材料費も運送費も全部保険会社に請求できます。
但し、工期の遅れは私共のリスクです。」
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[[[編集後記]]]
関東地域も梅雨が明けました。
本格的な酷暑の季節到来です。
温暖化により、最高気温の記録がどんどん塗り替えられていきますね。
北極、南極の氷だけではなく、世界各地の氷河もどんどん溶けているのに、
洞爺湖サミットでの主要国の合意は、
絵に描いた餅をピントの合わない望遠鏡で覗いているようなものでした。
我が愛するパラオ諸島も沈没の運命から逃れられないようです。
自分だけでもエコに心がけ、
小まめに家電のスイッチを切ったり、
水道栓を絞ったりしている今日この頃です。
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