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映画通信シネマッシモ


2008.03.29

★映画通信シネマッシモ Vol.055「悲しみが乾くまで」


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 映画通信シネマッシモ http://cinemassimo.livedoor.biz/

 プロの映画ライター渡まち子が仕事抜きの本音で贈る新作映画レビュー。
 ほどよい長さと鋭い批評は、映画を見る前と見た後と2度読んで楽しめます。
 ★5つが満点のシネマッシモ評価も参考にどうぞ。

       ☆〜〜〜 発行者のひとこと(^0^)/ 〜〜〜☆
  
  最近、無差別の通り魔事件が多すぎます。誰でもいいってどういうこと?!
  私はシネコンで“どれでもいいから何か見よう”と映画を選ぶお客さんの気
  持さえ分かりません。見たい映画くらいハッキリさせましょうよ!

       Copyright (C)cinemassimo All Rights Reserved.
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2008/03/29  Vol.055「悲しみが乾くまで」

◆プチレビュー◆
デンマークの俊英女性監督がハリウッド進出。喪失感を抱えた男女の感情を描く静か
な人間ドラマだ。 【70点】

 美しい主婦オードリーは平凡だが幸せに暮らしていた。だが突如、夫のブライアン
が事件に巻き込まれ死亡する。どうしても彼の死を受け入れることができない彼女は、
夫の親友で麻薬中毒に陥っているジェリーを思い出し連絡を取るのだが…。

 デンマークのスサンネ・ビア監督は、秀作「アフター・ウェディング」などで、そ
の実力は証明済み。ハリウッド・デビューとなる本作でも、小手先の技術や派手なア
クションに頼らず、商業路線の映画とは異なる質感を感じさせた。喪失感にからめと
られた男女が懸命にもがく姿は「ある愛の風景」のテイストに極めて近い。

 その力強さと揺るぎない演出はどこから来るのか。何気ない日常からハードな展開
になるのがビア監督の持ち味だが、この人は私たちの平凡な人生がとても脆い土壌の
上に立っていることを知っているのだ。突然、愛する家族を失うことや、ふとした誘
惑からドラッグに溺れ堕落していくことは、誰にでも起こり得る。そしてそれが、私
たちの幸せを暴力的に奪うことを改めて突きつける。

 オードリーは、ずっとジェリーのことが好きになれなかったが、幸せをもぎ取られ
て初めて、人間の弱さや脆さを理解し始める。ジェリーもまた、必要とされる自分を
見出し再生を決意した。心理描写はオードリーの側を重視していて、幼い息子に泳ぎ
を教えたり、行方不明になった娘が映画館にいたことを知るジェリーに嫉妬する形で
描く。助けが必要なのは、麻薬中毒の彼ではなく、物質的に恵まれた暮らしをおくる
オードリーの方なのだ。心の充足を渇望する平凡な人間。これが二人の共通項である。

 このように、繊細でごまかしの効かない演技を要求する監督の熱意に、ベリーとデ
ル・トロというオスカー俳優が気合の名演で答える。特に、稀代の怪優デル・トロの
リアルな麻薬中毒演技に圧倒されるが、鬼気迫るデル・トロに、ベリーは「あなたが
死ぬべきだった」と、ナイフのような言葉を静かに吐いたりするのだ。相討ちになり
かねない二人の奇妙な共同生活は、悲しみが沸点に達した時に新たな局面を迎える。

 物語をセリフより雄弁に語るのは、独特のインパクトのある映像だ。突如アップに
なる、顔、瞳、指先。ポッカリ空いた心の穴を、主人公たちがベッドに横たわる危う
い演出で見せながら、耳をひっぱるという個性的な官能描写で描いたのには驚いた。
完璧な美女ハル・ベリーをありきたりにカメラに収めず、耳たぶを大写しにしてみせ
るとは。セックスではなく、ただ体をからめて横たわる男女の姿は、彼らの心がいか
に冷え切っていて安らぎを欲しているかを表して、非凡な演出である。

 この映画の個性は、繊細な人間性の中にふと混じる荒々しい感情だ。物語は安易な
恋愛の方向へは向かわず、登場人物たちにある種の平安をプレゼントして静かに終わ
る。過去の作品に比べて、少々甘さを感じるラストなのだが、ビア監督がハリウッド
との妥協点を探ろうとしている姿が見えた。この才人の今後を見守りたい。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)喪失感度:★★★★

□2008年 アメリカ映画 原題「THINGS WE LOST IN THE FIRE」
□監督:スサンネ・ビア
□出演:ハル・ベリー、ベニチオ・デル・トロ、デヴィッド・ドゥカヴニー、他

しあわせな孤独
価格:¥ 3,500(定価:¥ 3,990)
http://www.amazon.co.jp/dp/B00023GTA0/ref=nosim/?tag=watari205-22

 *〜* 最後までお読み頂き、有難うございます m(_ _)m 良い一日を! *〜*

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     編集・発行:映画ライター・渡まち子 machiko watari
・ご意見をお待ちしています(^0^)/  cinemassimo555@jcom.home.ne.jp
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