2008.05.07
映画批評0058(番外編)ドラマ「ホミサイド/殺人捜査課」(その2)
■□映画批評と物語構成論0058□■
前回に引き続き・・・
ドラマ「ホミサイド/殺人捜査課」
Homicide: Life on the Street (93-99)
◇ ◇
「CSI:科学捜査班」(00-)や「グレイズ・アナトミー」(05-)など、
今日のアメリカのテレビドラマにおいては「職業群像ドラマ」が1つのジャ
ンルと化して競合し、また様々な作品が量産されつづけてもいますが、職業
群像ドラマがアメリカでここまで多く製作されているのはなにも「それが主
流だから」という単純な理由からだけではなく、それはアメリカのテレビド
ラマのシビアな制作事情にも大きく拠るところがあります。
アメリカのテレビドラマは視聴率如何によっては即キャンセル=打ち切り
の憂き目に遭い、たとえ有名な俳優が出演していようとも、たとえ有名なプ
ロデューサーが製作したドラマであろうとも、2話目以降が放送されない作
品は日常茶飯事であり、だからこそ1話目を「パイロット版」と称して「と
りあえず」製作し、試写なり先行放送なりで、とりあえず「ためしてみる」
……わけですが、それでも例えば5話目で突然終了して翌週には「なかった
ことになっている」──そんなドラマも多くあります。
その点において「テレビドラマ」と「映画」は決定的に異なるのです。
映画が「1本の完成された作品」として製作されることを目指すのに対し、
テレビドラマの制作スタッフにとっての最重要課題は「1話目をどうするか?」
であり、どれだけ多くの視聴者を獲得できるのか?──もっといえば「どう
すれば視聴者の興味を翌週へと持続できるか?」──そのことを念頭におい
てストーリーを練ることになりますから、「LOST」(04-)のような「謎
を引っぱる」系のドラマ作品が生まれたのも、すべては「スポンサーと視聴
率との関係」を気にしてのことなのだ、と言い切ることができます。
そして「LOST」や「24」(01-)のような番組が【ストーリーで引っ
ぱる】ドラマであるのに対し、職業群像ドラマは【キャラクターで引っぱる】
ドラマだと定義できます。
●多種多様なキャラクターを大勢配置することで
●愛着が湧くキャラクターが1人ぐらいいるでしょう?
●愛着をもって毎週見ていきましょうよ!
つまりは「様子見しつつの安全パイ」。
多種多様な視聴者に対して、多種多様なキャラクターを配置する。
これが職業「群像」ドラマの発想の根幹であり、製作側にしてみても「ど
のキャラクターが人気が出てくるのか?」は序盤の段階では検討もつきませ
んから、とりえあず大勢を配置しておいて、世間の動向に合わせて取捨選択
──場合によっては切り捨てるし、人気によっては主役級に格上げしていく。
職業群像ドラマには「視聴者の意見に合わせて臨機応変にキャラクター配
置を替えられる」というメリットがあるわけです。
●意外なキャラクターが人気を獲得するかもしれないし、
●意外な役者がブレイクするかもしれないし、
●新しいキャラクターを途中で注入してもいい
物語世界内に「左遷、辞職、転属」がある。
だからこそ「職業」群像ドラマなのです。
●多種多様なキャラクターが同じ職場にいて
●(主人公らしき)メインのキャラクターもいるけれど
●その彼or彼女を「主人公」と断言するほどでもない
●だからこそ「群像」
これが「職業群像ドラマ」の特徴です。
職業群像ドラマは「視聴率如何によっては臨機応変に対応していこう」と
いう非常に合理的な構造を持っており、よくもわるくも「このヒロインで半
年間がんばっていくしかない」NHKの朝の連続テレビ小説とは「ドラマと
しての発想」それ自体が根本的に異なるわけです。
出発点も違うし、展望も違う。
だからといってこれはアメリカ独自のジャンルではありません。
日本でいうならば「青春ドラマ」や「学園アニメ」がこれに近い構造を持っ
ています。
例:青春ドラマ・・・「ふぞろいの林檎たち」(83-94)、
「白線流し」(96-05)など
学園アニメ’’’「うる星やつら」(81-86)など
さらにいえば「西部警察」(79-84)や「太陽にほえろ!」(72-86)もたし
かに「職業群像ドラマ」だったと定義できるのですから、実は昔からあった
ジャンルではあるのです。
◆ ◆ ◆
ならば「ホミサイド/殺人捜査課」の何がそんなに革新なのか?
長くなったので、次週に続けます。
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