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鶴原顕央の【映画批評と物語構成論】


2008.05.19

映画批評0060(番外編)ドラマ「ホミサイド/殺人捜査課」(その4)


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■□映画批評と物語構成論0060□■


    ドラマ「ホミサイド/殺人捜査課」
              Homicide: Life on the Street (93-99) 


◇ (前回の補足説明) ◇

 アメリカのテレビドラマの起承転結に一定のパターンが存在するのは、そ
れは1時間のテレビドラマが正味45分だとして、それがたとえば1分だけ
オーバーしたとしても、その途端に「45分」というフォーマットが崩れる
ことになります。 

 アメリカ本国の放送局は自腹で了承するとしても、そのドラマを放映する
世界のすべてのテレビ局がその1分ぶんをどこかで調整する必要があり、こ
れが民放であれば1分ぶんのCM料を損することになるのですから、それは
アメリカ本国にとっても、諸外国の放送局にとっても、1分の差は非常に大
きいはずで、つまり「本編時間がマチマチなドラマシリーズ」を放送するこ
とほどリスキーなものはないといえるでしょう。

 ということは、世界配給を前提にして、国内スポンサーだけではペイでき
ないほどの莫大な予算を組むこともあるアメリカのドラマ制作プロダクショ
ンにしてみれば「きちんと45分の枠におさまるドラマシリーズ」を製作し
てみせることこそがマスプロダクツとしての最重要課題となります。

 そして脚本、演出、編集、すべてのスタッフが一丸となって「45分フォー
マット」の厳守にこだわり、そして次第にそれに慣れていくうちに、そのス
キルは様式化され、結局はどのドラマも構成そのものは似たり寄ったりとい
う結果になり、差別化をはかれる余地はキャストであったり、舞台設定であっ
たりと、結局そのへんで個性を出していくしかない──つまりはそういうこ
とになります。


 たとえば「ER/緊急救命室」(94-)の第1シーズン、その全25話のラ
ンニングタイムを書き出してみると……

  ●第1話………88分
  ●第2話………47分
  ●第3話………48分
  ●第4話………46分
  ●第5話………46分
  ●第6話………44分
  ●第7話………44分
  ●第8話………45分
  ●第9話………45分
  ●第10話……45分
  ●第11話……46分
  ●第12話……44分
  ●第13話……44分
  ●第14話……45分
  ●第15話……45分
  ●第16話……46分
  ●第17話……46分
  ●第18話……46分
  ●第19話……46分
  ●第20話……45分
  ●第21話……45分
  ●第22話……46分
  ●第23話……46分
  ●第24話……46分
  ●第25話……46分

                      (※秒数は切り捨て)

 第1話は「パイロット版」でテレビ映画状態なので例外だとして(それで
も半分で割ると44分でジャスト2話分!)、そのランニングタイムは特に
序盤においては安定していません。

 緊急医療のリアリティーと緊張感を表現すべく、かつてない怒濤の情報量
を押し込むことでドラマの革新をめざしたのがこの「ER」なわけですが、
2、3話目までは、あまりに革新的すぎてそれを手掛けるスタッフにとって
さえもどうやってもうまくまとめることができずにいた、ということが伺い
知れます(たった2分をどうしても切れない!!)。

 しかし次第にスキル慣れして、うまく45分前後に落ち着くことができる
ようになっていった、と。

 ドラマの物語を規定時間内にまとめることがいかに難しいか、あるいは逆
に言えば、スキルさえあればいかに簡単にまとめることができるか、という
ことがこれでわかります。

 映画であれば「1分程度の差」など誰も気にしない、しかしテレビドラマ
にとってはその1分の差が収益を大きく左右する──言われてみれば当たり
前のことではあるものの、こんなところにも映画とテレビの差が厳然として
存在しているわけです。


    (注:10年前は45分が標準でしたが、
       いまは不況のせいか43分がスタンダードのようです)

    (注:本編時間が短い=製作費が削れる=コストダウン
       本編時間が短い=逆にCMの本数は増える=収益増)


◇ ◇ ◇

 そんな「ER」と「ホミサイド」は、同時期に作られた同じ職業群像ドラ
マとして、多くの共通点を有しています。
 
 メインのキャラクターのなかに「ER」でいえばマイク・グリーン、「ホ
ミサイド」でいえばフランク・ペンブルトンという主人公的ベテランが配置
されているいっぽうで、ドラマの第1話は、新人が職場を初めて訪れる、そ
の新人の目線で物語が展開していきます。
     
     ●「ER」・・・・・・マイク・グリーン(ベテラン)
                ジョン・カーター(新人)
     ●「ホミサイド」・・・フランク・ペンブルトン(ベテラン)
                ティム・ベイリス(新人)
        
 劇中のその彼にとっても、そして視聴者にとっても、それが「第1話」で
あるのは同じなのですから、ドラマの導入役として彼らのキャラクター設定
は大いに機能し、またシーズンを経ることで、その新人が経験を積んでいく、
そのさまを見守って「あの子も成長したわねえ」的な感慨を得る。

 職業「群像」ドラマでありながらも、「新人」の「成長」ドラマとして一
本きちんと筋がとおっている──それが「ER」と「ホミサイド」の共通点
です。

 そしてそんな「ホミサイド」はシリーズ打ち切り後の特番「ザ・ムービー」
篇(00)にてティム・ベイリスの物語としてキチッと完結しました。

 終了がウワサされている「ER」ですが、もし本国での次シーズンをもっ
て本当に完結するのであれば、ジョン・カーターの物語として始まった以上
はそれはやっぱりジョン・カーターの成長物語として完結すべきであり、ジョ
ン・カーター役のノア・ワイリーの再登板がウワサされ、そしてそれを快諾
したというのも当然のことだといえるでしょう※。

      ※http://hollywoodinsider.ew.com/2008/03/will-clooney-an.html
    (注:ジョージ・クルーニーは再登板のウワサを否定済み)

 
◆ ◆ ◆ ◆


  次週は……
    ──柴咲コウ主演『少林少女』、その意義を検証します!!
   

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■□                              □■


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