2008.07.28
映画批評0070「インクレディブル・ハルク」
■□映画批評と物語構成論0070□■
『インクレディブル・ハルク』
The Incredible Hulk (08)
◇ ◇
随分と古めかしい雰囲気のオープニング映像からはじまるこの映画──こ
れはテレビドラマ版「ハルク」(78-82)の第1話とそれにつづくオープニン
グ映像へのオマージュであり(=だから古い)、今回の映画のタイトル自体
が“The Incredible Hulk”でドラマと同じ。
5年前のアン・リー監督版がシンプルに“The Hulk”であったことからも
分かるように、今作は往年のテレビドラマ版を手本とした、テレビドラマ版
「ハルク」の“初”映画化作品だということができます。
参考映像:http://jp.youtube.com/watch?v=YOXpKUu6pUg
※初めて変身するシーンの、象徴的な「緑目」カットもテレビと同じ
参考画像:http://i.ytimg.com/vi/_m4dAB7o2Cc/default.jpg
:http://images.rottentomatoes.com/images/movie/gallery/1185769/photo_04_hires.jpg
テレビ版「ハルク」がハリソン・フォード主演で映画化(93)もされた「逃
亡者」(63-67)の構造を借りているのは有名な話ですが(原因究明に奔走し
つつ、身をやつして見知らぬ街でヒッソリと暮らす→正体がバレる→バトル
→逃亡→またちがう街へ……の繰り返し=人気があるかぎりはいくらでも話
がつづけられる、便利な物語設定)、テレビ版「ハルク」として注目してお
くべき箇所はもう1つ。
それはこのドラマがユニバーサル・スタジオが製作したドラマシリーズで
あることであり、系譜としては「ナイトライダー」(82-86)や「特攻野郎A
チーム」(83-37)に繋がる、「銃は撃つけど人は死なない」、「人は死ぬけ
ど血は出ない」──家族団欒の場を崩すような過激なテレビドラマではない、
という点です。
(今回の映画版もドラマと同じ「人道的」配慮がなされている)
(爆発の直前にジャンプして逃げる米兵……など)
「ナイトライダー」も「ハルク」も、主人公の設定年齢と同じ世代というよ
りは、むしろ小中学生をターゲットに据えたような、そんな「過激にならな
い」配慮がなされたドラマ群であったわけですが、だからこそ当時のメイン
視聴者層が大人になって映画界に進出した現在において「そうだ、『ハルク』
を映画化しよう!」と、そう思うようになったのも当然だといえます。
とはいえ、今回の映画版が「5年前に映画化したばっかりじゃないか!」
というもっともな疑問を払拭できないのは事実です。
前作の監督アン・リーは『ハルク2』を構想していたというウワサもあり
ましたが、実際にはアン・リーとは無関係に心機一転でリニューアル。
当初はテレビドラマ「プリズン・ブレイク」で主人公の兄を演じているド
ミニク・パーセルが『インクレディブル・ハルク』の主人公に想定され、パー
セル本人もファンの質問に「『ハルク』に出るかもよ」と答えていたにも関
わらず、フタをあけてみれば意外や意外のエドワート・ノートン。
参考資料:http://www.movieweb.com/news/16/16816.php
素早いリスタートも、エドワート・ノートンが主役に起用されたのも、す
べてはマーベル・ワールドこと「マーベル・ユニバース」を映画内で実現す
るためなのでしょう(=キャラクターが作品の枠を越えての夢の共演)。
2大アメコミ出版社として知られる「マーベル」と「DC」コミック。
DCのほうは『スーパーマンvs.バットマン』の映画化企画がうまく進ま
ず、ならば我こそはと『ハルク』を擁するマーベル社のほうが自社で映画プ
ロダクションを立ち上げ、その第1弾が『アイアン・マン』(08)であり、第
2弾がこの『インクレディブル・ハルク』。
その証拠に本作のエンディングには『アイアン・マン』の主人公が意味あ
りげにゲスト出演して、ファンに目配せした意味ありげな台詞を吐きます。
(※日本での公開順は逆になってしまいましたが、
アイアン・マンになったあとの主人公が登場するので、
ストーリー順としては『アイアン・マン』→この『ハルク』
ということになっているので、注意が必要です)
作品の枠を越えての夢の共演をめざすべく、権利関係を刷新して、まずは
土壌づくりの『ハルク』リニューアル──それが本作の製作意図であり、だ
からといって「それがなんなの?」という人には確かにそのとおりで、「エ
ドワート・ノートンがこんな映画に出ちゃったよ!」というショックのほう
が大きいのかもしれません。
しかしプライドが高くて扱いにくいとされているエドワート・ノートンが、
こうして超大作映画に出演し、ノンクレジットで脚色も担当している。
スター俳優としてどうやって大作映画と折り合いをつけていくのか?
その方向性を(ようやく)見つけ出した──という点において、エドワー
ト・ノートン自身にとってもこれは記念碑的作品となるはずです。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
次回は8月2日公開『スカイ・クロラ』!!!
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