2008.08.25
映画批評0074「ダークナイト」
■□映画批評と物語構成論0074□■
『ダークナイト』
The Dark Knight (08)
◇ ◇
日本国内ではそれほど振るわなかったものの、アメリカ本国では依然とし
て大ヒットばく進中の『ダークナイト』ですが、それでも歴代興行収入1位
の『タイタニック』(97)を越えることはないだろうとも言われていて、し
かしそれは「作品の質がちがうから」という理由からではないようです※。
※Hollywood Reporter.com 08.08.11当該記事参照
最終的な興業成績がどうなるかはともかくとして、この映画の出来をアメ
リカの観客が好意的に受け入れているのは明らかで、ティム・バートン監督
がクリエイトし、ジョエル・シュマッカーがあとを引き継いだ前回の『バッ
トマン』シリーズ(89-97)が、尻すぼみ的に客を失い、4作目の『バットマ
ン&ロビン』をもって終止符を打ったのとは好対照。
『バットマン』(89) $251,185,407 (USA)
『バットマン・リターンズ』(92) $162,744,850 (USA)
『バットマン・フォーエバー』(95) $183,997,904 (USA)
『バットマン&ロビン』(97) $107,285,004 (USA)
※imdb参照
では、前4作とクリストファー・ノーラン監督が手掛ける今回のシリーズ
2作とでは「なにがそんなにちがうのか?」といえば、それはやはり「話の
リアル度」がちがうということになるはずです。
「映画の世界観」と言う場合の、この「世界観」を、辞書的な意味合いでは
なく、「その映画を物語る上での不可欠な要素」と定義するならば、今回の
この『ダークナイト』の世界観は「徹底したリアル」によって貫かれており、
前回のシリーズ1作目『バットマン ビギンズ』(05)では色濃く残っていた
ティム・バートン的要素──ゴシック調の街並みやコウモリの群れ……すら
本作ではことごとく慎重に取り除かれ、逆に「ゴッサムシティ」の名に相応
しくない、サンフランシスコかシカゴか、あるいはロンドンのような、いず
れにせよ「ただの街」が「ゴッサムシテイ」として登場し、また、前作では
「反バートン的要素」として描かれていたモノレールなどの「近未来的街並
み」すらも姿を見せず、逆に遂にはリアルに「香港」が登場する始末。
現実のアメリカと地続きであることは了解しつつも、ゴッサムシティとい
う「架空」の「閉ざされた街」のなかでのみ展開していたはずのバットマン
映画が、「外の世界」を描いてしまって、しかもそれが現実世界の都市「香
港」であった。
そこに違和感をおぼえた人もいたはずで、『スパイダーマン』だって現実
の都市ニューヨークを舞台にしてはいるものの、あれは最初からニューヨー
クを舞台にしていたわけであって、架空の都市を舞台にしていた『バットマ
ン』とは初期設定がちがうわけです。
ゴッサムシティという架空の街から生まれた「闇の騎士」という、出自の
ほうを切り捨ててまで、本作は「リアル」を追求したのだともいえ、しかし
そんなゴッサムシティの要素を切り捨ててしまうと、「リアルな世界観」の
なかでの「最大の違和感」はだれがどう見ても「バットマン」ということに
なってしまいます。
リアルを追求すればするほどにバットマンという絵空事が浮いてしまう。
ここにこの映画のジレンマがあり、「バットマン映画である」という大前
提がなければ主人公のバットマンを了解することが出来ず、もはやキャット
ウーマンやペンギンを登場させる余地がない──「3作目は無理なのでは?」
という予感すら漂うほどに、本作では徹底したリアルが貫かれ、「バットマ
ン映画らしからぬ」重たいストーリーが展開していきます。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ということで、次週も引き続き『ダーク・ナイト』──
そのストーリー部分を検証します。
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