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鶴原顕央の【映画批評と物語構成論】


2008.09.01

映画批評0075「ダークナイト」(その2)


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■□映画批評と物語構成論0075□■


 前回に引きつづき……


     『ダークナイト』
       The Dark Knight (08)


◇ ◇

 全米での大ヒットに反して『ダークナイト』が日本国内で振るわなかった
理由が、海外のネットメディアで検証され、記事にもなっていますが(※)、
日本でヒットしなかった理由は「この映画のストーリーが暗すぎだから」と
いうのは、たしかに一因ではあるものの、それだけが原因はないはずです。

  ※www.filmjunk.com/2008/08/28/the-dark-knight-bombs-in-japan/
   www.tokyoreporter.com/2008/08/28/box-office-bust-the-dark-knight-dives-in-japan/


 同時期のサマームービーとして『崖の上のポニョ』などの、それも強力な
ライバルがいたのが原因かもしれませんし、『ハムナプトラ3』や『セック
ス・アンド・ザ・シティ』などとはちがって吹替版が上映されていないのが
客が入っていない最たる理由なのかもしれません。

 しかしストーリーが暗いのはたしかです。
 記事にもあるように、ペシミスティックで、ダークで陰鬱。
 サマームービーらしくないかどうかは別問題としても、ファミリー映画に
相応しくないのは事実です(アメリカでのレーティングはPG-13)。

 映画監督でアメコミオタクでもあるケビン・スミスがレビュー(※)して
いるように、本作は「いままで作られたなかで最もアダルトなアメコミ映画」
であり、そしてEnterJamのポッドキャスティングで町山智浩氏が指摘してい
るように、ストーリー展開そのものは1作目の『ダーティハリー』を想起さ
せます。

  ※http://www.firstshowing.net/2008/06/29/kevin-smiths-early-thoughts-on-the-dark-knight/
   http://www.enterjam.com/tokuden.html

 天然パーマ風の乱れた髪の若い男が、街を脅し、権力者の殺人予告をし、
女を誘拐をして、主人公を挑発しつづける。
 これに対して主人公は法の一線を越えてまで相手を追いつめ、最後の最後
で優位な立場についた際に「いっそコイツをこのまま殺してやろうかッ」と
グググッと力を強める……。

 そのストーリー展開は確かに『ダーティハリー』に良く似ています。
(だとすれば序盤におもむろに登場するスクールバスは本家『ダーティハリー』
の、それも1作目への遠回しなオマージュなのか!?)

 しかし結末がちがいます。
 ダーティハリーはトドメをさすけど、バットマンはトドメをささない。

 銃を持たない、トドメをささない、のがヒーローの鉄則であり、その鉄則
を守りつつも、むしろその鉄則を守っているにもかかわらず「ヒーローらし
からぬ展開だったから」という理由で日本の不入りの原因を分析されてしま
う。
 海外でのこれらの分析はつまり本作が「勧善懲悪ではなかったから日本で
はヒットしなかったのだ」と言っているようなものであり、逆にアメリカに
は「勧善懲悪ではないダークなストーリーを受け入れるだけの土壌が出来た
のだ」と(自慢気に)その興業成績を証拠にかかげているわけです。
 本当にそうなのでしょうか?
 
 
◆ ◆ ◆                        ◆ ◆ ◆


 ということで次回はウィル・スミス主演『ハンコック』を分析!!


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