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澪温泉物語


2008.06.07

澪温泉物語                貝原 潤


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“粕谷君。”
と藤家が言ったので、
”粕谷か洋一でいいよ。“
と言うと、
゛じゃあ俺のこと、博と呼んでくれ。博と呼んだのは親父だけだったんだけど。“
“お父さん。大変だったんだね。”
゛ああ!だから俺は強くなろうと決めたんだ。とにかくサッカーをしてキック力をつけな
くては。“
“えーそうきたか。”
と思ったが、声に出さなかった。
藤家は言う。
゛じゃあ洋一。洋一の親父さんの仕事は何なの?“
゛うちの父は旅館業をしてるんだ。母はおかみ。だからどっちも忙しくって、入学式にも
来られなかったんだ。まあもう慣れてるからな。“
そういうと3段ベッドの2段目でレコードをつけていた梶原が、
゛あ俺の親も旅館業や。ただし魚釣り相手の民宿やけどな。“
と言ったので、
“えーどこですか?”
と洋一が聞くと、
゛天草や。天草の牛深言うとこ。“
梶原は、ベッドから降りて、藤家と、洋一の隣に座って話の中にはいいってきた。洋一は
初めて聞いたとこだったが、藤家は知っていた。
゛ああ小さいころに、親父に海水浴に連れて行ってもらったところや。“
それから3人の話が盛り上がり、水泳や釣りの話になった。
磐田、山隅が風呂からあがってきた時、
山田がハンドボールのユニフォームのままやってきて、
“おい。今日はすき焼きやぞ。俺は先に飯ば食いに行ったけん、今から風呂に入る。”
と言って、ふと3人が仲良く並んで話しているのを見て、
“ど、どがんしたとや!!”
と素っ頓狂な声を上げた。
そこに山隅が、
”粕谷も、藤家もサッカー部に入ったけん。山田のハンドボール部には入らんとよ。“
と言ったので、
みんな大いに笑った。
“山隅さんひどいなあ。そんなにからかわないでくださいよ。俺は
バスケットボール部やけんね。“
一挙に6人とも親しさが増した。

翌日例によって、フランシスコ先生の
“Good morning every body, it’s seven o’clock.”
の声に、5人は目を覚ました。山隅は相変わらず5時に起きて勉強していたようだ。
”磐田、今日は向こう側のゴールのあるとこに粕谷と藤家を連れてきてくれ。いつもはこ
っち側のゴールで練習するけど、今日は高校生に紹介するけん。いつも2日目に、高校生
に紹介するようになっとるとたい。高校も何人か新入生が入ったごたるけん。“
と言って、点呼の後、さっさと食事に行った。
山田が、
“お前たちはもうお前達だけで朝ごはん食べに行けるだろう。”
と言って、梶原と連れ立って食事に行ったので、洋一は、
゛じゃあ3人で食事をしに行こう。“
朝食の用意をし、ぎこちない藤家と磐田の関係を洋一が取り持ちながら、話しながら食事
をする。
突然磐田が思い出したようにしゃべり始めた。
゛ブラジルから来たやつらな。一人は日系で一人は黒人なんや。両方とも6年間ブラジル
のサッカークラブで鍛えられて、テクニックが抜群なんや。ただフランシスコ先生は、テ
クニックよりパスワークが大事だとヨーロッパ風の教え方をしているが、あの個人技はす
ごいぞ。藤田さんはもうブラジル仕込みのテクニックを教えてもらって熱心に練習しよっ
たで。たぶん今日の朝は早く起きて練習しよったんやないかなあ。“
その言葉に藤家が食いついた。
゛朝から練習できるんか?“
”藤田さんは島田寮やけど、朝5時に起きて勉強部屋へ行くのもいいし、グランドで運動
するのもいいようだぜ。“
“ふーん”
と藤家は何かを考えていたが、まさか藤家が毎日5時に起き、磐田と粕谷を巻き込んで練
習することを考えていようとは、洋一は夢にも思わなかった。
1年B組に行くと、席順が張り出してあった。何と藤家は同じB組で洋一の隣であった。
二人はちょうど真ん中に位置する机の配置であった。ちなみに磐田は一番後ろの席だった。
一クラス33人で、A組だけが、34人クラスである。成績順にABC,ABCという具合に
分けているのだそうだ。朝の御祈りがスピーカーから聞こえてきて、全員十字を切って御」祈りをした。
“天にまします・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
………………父と子と聖霊と皆によりて  アーメン“
皆がお祈りした後、担任の先生が現れた、
゛俺は安成 強だ。お前たちの担任と英語を受け持つ。まず級長を決める。B組で一番成績
の良かった粕谷だ。粕谷たってみろ。“
洋一はびっくりして立ち上がった。自分が全体で2番の成績だとは思ってもみなかった。
みなの視線が突き刺さる。
゛1学期はお前が級長をやれ。2学期からは選挙で級長が決まる。二学期の級長を誰にす
るか皆よく考えておくように。成績だけではなく人物評価も入れるんだぞ。“
“粕谷、挨拶をしろ。”
と言われたので、
“粕谷洋一と言います。澪小学校から来ました。小崎寮の205号室に居ます。今日から
サッカー部に入ります。みなさんよろしくお願いします。”
と挨拶した。



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