2008.06.29
澪温泉物語 貝原 潤
翌朝5時に目覚ましが鳴った。藤家が止めて、洋一を起こす。山隅も起きだして勉強を
始めた。残りの3人は熟睡している。2人とも昨日買ったばかりの2着目のパンツとシ
ャツを着て、グランドへと出て行った。藤家が言った。
“昨日は汚れたので洗濯に出したが、今日のは、洗濯が返ってくるまであんまり汚さん
ようにせんなんな。“
眠い目をこすりながら洋一もうなずく。
グランドに着くと、カルロスが待っていた。
“マズ、準備運動ヲシマショウ。私ノマネシテクダサイ。“
と言って、リズムに合わせたブラジル体操をした。朝起きたばかりには、結構こたえ
る。
“次ニ、サイドパスシマス。“
と3角になってサイドパスを始めたが、部活の時とは違って、
“デキルダケハヤクスルネ。”
と速いパス回しをするので、汗じゅっくりになった。洋一は言った、
“こりゃあ、シャツは又、買わなんばい。”
藤家も答える。
“パンツは昨日はスライディングば習ったけん洗濯に出したばってんが、3つくらいあ
ればよかばってん、シャツは7枚くらいいるなあ。特に朝練習するから、今日の午後買
いに行こうか?“
と言うと、洋一も、
“じゃあ蜂楽饅頭も買ってこようか?”
と言ったが、
“でも、シャツ5枚、サッカーパンツ1枚買うと、もうあんまり金がなかかな。”
と言いなおした。
藤家は、
”靴ももう一個くらい欲しかね。ストッキングもできればもう一個。“
とやる気満々である。
カルロスは
“体ガアッタマッタネ、デハ、リフティングヲオシエルネ。コレハ、一人デデキルカ
ラ、足、膝、頭オノオノ100回クライハ、練習シテデキルヨウニナルネ。”
と言って、足、膝、頭で100回ずつやって見ている。
藤家も、洋一も3回から多くても7回くらいしかできない。頭なんて2回がやっとだ。
藤家は言った。
”カルロス、しばらく俺と、洋一でこのリフティングの練習するから、100回できる
まで、お前と湯来は勉強していていいよ。俺たちが100回ずつできるようになった
ら、また教えてくれ。また10時に会おうぜ“
カルロスはにこっと笑って、
”ソレジャア、ボクハ、週間テストノ勉強デモシマス。“
と言って島田寮に帰って行った。
7時近くまでリフティングの練習をしたが、2人とも足は最高10回を超えなかった。
頭など5回は行かなかった、膝だけが、ボールを小さくバウンドさせると15回を数え
ることができた。洋一は、
”前途多難だね、しかしカルロスはうまいなあ。サイドパスなんて俺たちは、強いのは
大きくはじいてしまうのに、カルロスは、とんでもない方向に行っても回り込んで、ピ
タッと止めていたな。“
藤家は、
“だから帰したのさ。2人でリフティングとサイドパスだけでもしっかりやろうぜ。ブ
ラジル勢に習うのはそれからだ。”
と言って、飯を食いに行こうとするときに、藤田が現れた。
”ごめん寝過ごした。あれ?カルロスか湯来は?“
と言ったので、
”しばらくは、俺と粕谷だけで練習します。うまくなってから一緒にやりましょう。カ
ルロスにもそう言って帰ってもらったんです。“
“そうかじゃあ俺は一人で30分位練習していくわ。“
と言って柔軟体操を始めていた。
“じゃあ10時にまた会いましょう。“
“おう10時な。”
と言って2人は食事に行った。
朝はパン食だった。パン2枚とサラダとマーガリンにジャム、牛乳に茹で卵が一個付い
ていた。
7時ちょっとすぎだったので2人は1番乗りだった。いつものおばちゃんが、
“二人とも早かね。まだだれもおらんけん茹で卵ば2個やろかね。ほかんもんには内緒
ばい。“
と言ってサラダも大盛りで、茹で卵も2個ずつくれた。2人とも何か嬉しかった。
朝食をとりながら、洋一はふとカルロスの言葉を思い出した。
“週間テストってなんやろ?“
藤家も、
“カルロスがそげんこと言いよったな。俺もわからん。“
そこに、山隅がパン4個牛乳2本、バター、ジャム2個ずつ、茹で卵2個、サラダも洋
一たちより大盛りに盛った朝食を持ってやってきた。
“お前らも茹で卵2個もらえたつや。日曜日ははよ来るとこがんよか目にあうとぞ。お
前らは1年でこれを知るとはついとるぞ。”
と言われた。
“山隅さん、週間テストって、カルロスが言いよったけどなんですか?“
“ああ。毎週火曜日に、英、数、国のテストがあっとたい。1年はもう始まるとか?最
近火の国学園は、マリア学院に大分追い上げられてきよるけん鍛えなおされるとだろ
う。ここは週間テストで1週間に習ったことを復習し、月例テストで1カ月に習ったこ
とを復習するテストがあるとばい。おお、そういえば磐田が言いよったばってんが、粕
谷はB組で1番だってな。今度も1番じゃなかと安成先生がうるさかぞ。”
“ええ!そんな無理ですよ。まぐれで1番だっただけですけん。安成先生の英語の宿題
は大変で、英語を日本語に5回訳しノートに書いて、その日本語を5回英語に直さんと
いかんとですよ。まだ英文が易かけんよかばってんが、これから先、英語だけでも大変
ですよ。”
“その宿題は有名ばい。してこんと、愛の鞭とか言って、プラスチックの30 cmの定規
で、びんたをパチンとはじかれるとばい。まだ、誰もされとらんとや?粕谷が成績が下
がってから愛の鞭を受ける一番乗りかもしれんな。“
“ええー”
とびっくりすると。
“冗談たい。成績が下がっても愛の鞭は出らんよ。でも安成先生は不機嫌にはなるだろ
うな。A組の森本先生、C組の小池先生の3人は同期のライバルだからね。ちなみに森本
先生は体育、小池先生は国語の先生たい。“
そういう話をして、食事が終わり、部屋に帰ると3人ともまだ寝ていた。洋一は磐田を
起こし、
“健。お前知っとるや?火曜日に週間テストがあるとげな。“
眠そうにベッドから起き上がり、
“ああ、俺はA組の吉田から聞いて知っとるわ。お前は飯ばもう食ったん?”
“うん。食べた。”
“じゃあ俺も早く食べとこう。10時から試合だから。“
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澪温泉物語
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