2008.11.24
澪温泉物語 貝原潤
9時になった。山田がやってきた。
“あのな。高校の担任の山形とか、中学2年A組の峰とか言う先生は文通しているやつを
見ると手紙を読ませるとたい。それで真面目に交際しとるかどうか判断するて言うんだ
が、ただのいじめとしか思われん。さらに悪かことには他の担任の先生にも強要すると
たい。気の弱か担任は山形たちに見習って手紙を読ませたり検閲したりすっとぞ。”
ギターを弾かずに洋一を覗き込んでいる、梶原を見て藤家も寄ってきてその話を聞い
た。
“そぎゃんか先公はぶっとばさんと分からんたい。“
“馬鹿。そぎゃんかこつばすっとすぐ退学たい。せっかくバンドば組んだつだけん、そ
ぎゃんかことで退学になるなよ。お前んとこの安成先生は健全な交際なら認める先生だ
けん心配はいらんよ。そん代わり峰とか山形には知られんようにせんなんたい。”
“フランシスコ先生の言われた意味がやっとわかりました。今度からうちの母の名前で
書いてもらうようにします。”
”お前は中1で彼女のおっとや?“
梶原がうらやましそうに言った。そうすると磐田や山隅も集まってきて、
”粕谷は彼女のおっとか?よかねえ。“
とうらやましがる。
”いや、ただの幼馴染ですけん。“
”名前はなんて言うとや?“
“山崎恵て言います。”
”恵ちゃんか?よか名前やなあ。“
山田もうらやましがる。
”わしは大村さんがいはるからいいもん。“
磐田が言う。
”何や磐田も大村さんのファンか?俺のライバルやな。もっとも30人ぐらいファンはい
るんやけど。“
洋一が、
”山隅さんはいつも図書館にいるのは大村さん目当てですか?“
“うん。それもある。ほとんどはやっぱり新聞の論説文を読んで国語力をあげるためで
もあるからな。1石2鳥たい。まあ、読まん本ばかりる磐田のごたることはせんばってん
がな。”
”山隅さん。俺は本を読んでますよ。大村さんが感想ば聞くもんで読まんといかんみた
いで読みよりますよ。“
“それにしては、読み方が早かねえ。“
”ところでその恵ちゃんはかわいかね?“
“まあかわいかほうと思いますけど、何せ喧嘩っ早くて、小学校の時は女子のリーダー
的な奴でしたから。”
がぜん藤家が興味を持って、
“そぎゃんか女は珍しかね。亨栄小では女子はみんなおとなしかったぞ。“
“藤家の前ではみんなおとなしかろうよ。俺も怖くてたまらんかった。”
すっかり仲良くなった梶原がからかう。藤家は頭を掻いた。
“まあ、あんまり目立たんように付き合えよ。サッカーの試合なんか連れてくるなよ。
一発で問題になるからな。”
山隅が言うと、
“ええっ。連れてきたらいかんとですか?レギュラーになったら見に来てもらおうかと
思ってましたが。”
“馬鹿やなあ。そぎゃんことしたらすぐ学校中の噂になって山形や峰が出てくるぞ。い
くら安成先生でもかばいきらんようになるぞ。”
山田が言う。
“以前、上通りを、お姉さんと一緒に歩いていた奴が翌日峰に呼ばれ”
“お前は女と歩いていたろうが?”“
聞かれ、
”“あれは姉です。“”
と言ったら、
““誤解されるような女とは歩くな。本当に姉さんかどうか姉さんに俺のところに電話
させろ。”“
と言われて姉さんに電話を入れさせたことがあったほどで、女性と付き合ったりしてい
たら即、謹慎だそうだよ。“
“ええー。そんなに厳しいんですか?僕は昨日彼女の家に遊びに行ったっですけど、そ
れもいかんとですかね?”
急に山隅が怖い顔をして、
”みんな今のことは聞かんだったことにしてくれ。絶対誰にも内緒だぞ。“
と言ったので、
“かなり皆に知れたらやばいことだ。”
と分かった。山田がこそっと、
“それで、誰にも言わんけど部屋に二人っきりになったつや?”
“はい。”
“なんもせんかったろうな?”
”勿論です。“
山隅はさらに心配になって、
”みんな本当にだまっとってくれよな。粕谷は貴重なレフティだけん謹慎とか退学にな
ると困るけんな。“
このことで1年生の3人は女性問題はかなり厳しいことが分かった。恐る恐る磐田が聞い
た。
”大村さんと話すのはええだろか?“
”大村さんは教師と一緒だけんが何にも問題はなかよ。事務所の女の人とか寮のおばち
ゃんたちとも全然かまわんけん。俺はいつもよく話しているのはそうやって女性になれ
とるとたい。“
”山隅さんて女好きなんですね。全然知らんかった。“
山田がからかうと、
”大村さんとも仲がいいんでっせ。ちょっとやけるわ。“
磐田が口をはさむ。その時隣の部屋の久保田が、
“おい。梶原。少年キングこうたや?こうたなら見せちくれ?”
と言って入ってきたので、
“おう。分かった。ちょっと待っとけ。”
と言ってロッカーの中から発売されてすぐの少年キングを渡した。そして少年マガジン
と少年サンデーを受け取った。磐田がうらやましそうに、
“梶原さん。少年キングば取ってはるんですか?”
“うん。後で返ってきてから見せてやるけん待っとけよ。”
“はい。最初に僕に読ませて下さい。”
”よかよ。粕谷は漫画とか読まんとや?“
”僕は日曜とかにまとめて読むとです。2週遅れでもかまわんですけん。“
旅館には漫画があふれていていつでも読めるので時間がもったいないので日曜の暇な時
にいつも読む習慣がついている。
“ふーん。変わっとるなあ。皆速く読みたがってたまらんのに。”
そう言ってギターの練習を始めた。藤家はもう途中からベースギターの練習をしながら
話に加わっていた。腹が減ってきたがもうすぐ9時半だったので、みんなが見てしまっ
ていた少年マガジンを見て休み時間を過ごした。
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澪温泉物語
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